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第3話
秋はすらすらと鉛筆を動かして、あっという間に絵の下書きを終えてしまった。
「すごいね」
私は本当に感心した。
「すごくはないよ。絵はね。題材を見つけるまでが本当に大変なの。私は題材を見つけることができたから、こんなにはやく下書きが終わったってだけの話なんだよ」と私の顔を指差しながら秋は言った。
「それにこれはまだ下書きなんだから。これから絵が完成するまでは長いよ。覚悟してね」
「わかった」
絵のモデルなんて初めてだったから緊張する。動かないでいることがこんなに大変なんだって初めてわかった。
「お話してもいい?」
「いいよ。もちろん」今度は鉛筆ではなく筆を持ちながら秋は言う。(秋は色を考えているようだった)
「なんで私だったの?」
「なにが?」
「絵のモデルに私を選んでくれた理由」私はじっと私をみている秋を見る。