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第20話
朝、目を覚ますとアトリエの中に秋の姿はなかった。
布団も片付けられている。私はまだまだ眠たい目をこすりながら、アトリエの時計を見て、今の時間を確認する。
時刻は朝の七時。(秋は毎日、五時くらいに起きると言っていた)
木のテーブルの上には朝ごはんが用意されている。
おにぎりと卵焼きとウインナーだった。そこにはメモが置いてあって、秋の文字で『森の中のいつもの道を走ってきます』と書いてあった。
私はおにぎりを食べながら、そのメモを読んだ。
一人で朝ごはんを食べながら、私は秋と友達になれて良かったと思った。でもどうしてだろう? 理由は自分でもよくわからないのだけど、私は泣いてしまった。悲しくて、悲しくて仕方がなかった。
泣いているところを秋に見られたくないと思った。でも涙は全然止まってはくれなかった。
私は泣きながらなるべく早く口をもぐもぐと動かして、朝ごはんを食べた。
秋が戻ってくる前に、いつもの私に戻らなくてはいけない。