第15話
お昼ご飯を食べてから午後になって、秋は絵を描き始めた。
私はモデルになって、お人形のように木の椅子に座ってじっとしている。今、秋の描いている私の絵の構図は『森秋』の中にいる少女、秋本人とまったく同じ構図だった。私は今、あの絵の中にいる少女と同じ姿勢をして、同じように秋の手によって四角い枠の中に閉じ込められようとしている。
「裸になりたいって思うときある?」
秋が言った。
「服を脱げってこと?」座ったままの姿勢で私は言う。
「違うよ。別に裸の絵が描きたいわけじゃないよ。孤独の話したでしょ? あの話の続き」笑いながら秋は言う。
ああ。そう言うことか。
まあ別に覚悟はしてたから、裸になって、と言われたら裸になるつもりだったけど、どうもそう言う話ではないらしい。(初めに、この私の絵は秋と私の二人だけの絵にすると秋は約束してくれた)
「とくにはないかな?」
自分が裸になることをうまく想像できなかった。もちろん、お風呂に入るときは裸になる。(昨日もなった)でも、それ以外の場所で裸になったことはないし、なりたいとも思わなかった。
だから裸になる、ということがうまく想像することができなかったのだ。