第14話
お話を聞いてみるとなんと信じられないことに秋はお風呂にもお父さんと一緒に入っているらしい。(本当にびっくりした。私なら気持ち悪くて絶対にできない)
「お父さんとお風呂入らないの?」どうして? と言いたげな顔で秋は言う。
「入らないよ。私は小学生の低学年のころまでだったし、ほかの子もたぶんそれくらいだと思うよ」と私は言う。
「お父さんと髪の毛とか体の洗いっことかしないんだ。楽しいのに」今度は変なのとでも言いたそうな顔で秋は言う。
「秋はもしかしてファザコンなの?」
「ファザコンじゃないよ。お父さんのことが大好きなだけだよ」とまるで恋人のことでも思い出しているかのようなすごく嬉しそうな顔をして秋は私にそう言った。
「孤独になることで、自分を見つめ直すことができるし、本当に自分のやりたいことや、あるいは今まで自分が無意識のところで囚われていたことがわかるようになったりするんだ」
秋はソファの上にちゃんと座り直して言う。
「それはなんとなくだけどわかる気がする」
「一人で生活することの大変さを学んで、あらためて社会のことを考えて、自分がどれくらいいろんな人たちに助けてもらって生きているのかを学ぶ。学校の勉強だけじゃなくて、人生は一生が学びなんだってお父さんは言ってた。その基礎を作るために人はある時期に、とても若いときに一時的に孤独になる必要があるんだって」
私は秋の言葉を黙って聞いている。