第13話
「秋はお父さんのこと大好きなの?」
「うん。大好き」すぐに秋は言う。
「変わってるね。お父さんのことが大好きなんてさ」
「そうなの? みんなお父さんのこと大好きじゃないの?」秋は首をかしげる。(なんだか小動物のようですごく可愛いい)
実際はどうなんだろう? と私は少しだけ考えた。
「嫌いってわけじゃないけど、好きって人はあんまり多くないような気がする。私もお父さんのこと、あんまり好きじゃないし」
「育ててもらっているのに?」
「それはまた別だよ。もちろん感謝はしてるし、ありがとうと思ってる。でも好きか嫌いかはまた別の問題だよ」私は言う。
「そんなんだ。なんか不思議な感じがする。私ならお父さんがいたらずっとお父さんと一緒にいるのにな」雨降りの窓の外を見て秋は言う。
秋のお父さんは画家の仕事でいろんな国々を旅している途中らしい。(旅先の国の絵本が定期的に秋のところに送られてくるらしい。さっき私が読んだ絵本のことだ)
「お父さんがいたらずっとくっついてるの?」
「うん。ずっとくっついてる。背中とか、あとよく抱っこしてもらったりする」普通のことでしょ? とでも言うような顔で秋は言う。