おおきなかぶ
大きなかぶ
『はじまりはじまり〜』
むかしむかしあるところに、働き者のおじいさんがいました。
おじいさんは畑にかぶのタネを植えました。
やがてタネは成長し、とても大きなかぶになりました。
「なんて大きなかぶだ。畑いっぱいになっている。それにずっしりとしていて、みずみずしい。からみも甘みもありそうだ」
瞳を輝かせたおじいさんは、かぶをひっぱります。
「うんとこしょっ、どっこいしょっ」
大きなかぶは、びくともしません。
そこでおじいさんは、おばあさんを呼んできました。
「まあまあ、なんて大きなかぶでしょう。料理のしがいがありますねえ」
そして、おじいさんがかぶをひっぱって、おじいさんをおばあさんがひっぱって。
「うんとこしょっ、どっこいしょっ」
それでもかぶは抜けません。
おばあさんはまごを呼んできました。
「わー、なんて大きなかぶだ。僕の背よりずっと大きいぞ。おじいさんはいったいどんな肥料を与えたんだろう?」
それではと、おじいさんがかぶをひっぱって、おじいさんをおばあさんがひっぱって、おばあさんをまごがひっぱって。
「うんとこしょっ、どっこいしょっ」
まだまだかぶは抜けません。
そこで、まごは犬を呼んできました。
「さあ、てつだってくれたら、こんやはたっぷりのかぶを食べられるぞ」
「わん、わん」
遊んでー、とばかりに犬は尻尾を振っています。
それでは力を合わせて、おじいさんがかぶをひっぱって、おじいさんをおばあさんがひっぱって、おばあさんをまごがひっぱって、まごを犬がひっぱって。
「うんとこしょっ、どっこいしょっ」
やっぱりかぶは抜けません。
犬は猫を呼びました。
「わん、わん」
「にゃーぁ?」
てつだえと言わんばかりの犬に、猫は「私、肉が好きなんだけどお」と大きなかぶを見上げながらためいきをつきます。
それでも猫はスタンバイ。
おじいさんがかぶをひっぱって、おじいさんをおばあさんがひっぱって、おばあさんをまごがひっぱって、まごを犬がひっぱって、犬を猫がひっぱって。
「うんとこしょっ、どっこいしょっ」
これでもかぶは抜けません。
猫がネズミを呼びました。
「私の夕食になりたくなかったらてつだいなさい」
「ああっ、おいらには12ひきのこどもがいるんだ」
震えながらネズミは猫にしたがいます。
おじいさんがかぶをひっぱって、おじいさんをおばあさんがひっぱって、おばあさんをまごがひっぱって、まごを犬がひっぱって、犬を猫がひっぱって、猫をネズミがひっぱって。
みんなの力を合わせたら。
「うんとこしょっ、どっこいしょっ」
とうとうかぶは抜けました。
その日の夜、みんなでかぶの料理をお腹いっぱい食べました。
「私は肉が欲しいんだってば、にゃーん」
『おしまい〜』