罪人と次の目標
本日二話目です
明日は掲示板回にしようかなと思います
「罪人はこの町への立ち入りは許可できない!」
町に戻ってゆっくりEVOLVEの確認をしようと思ったら、守衛のNPCに止められた。大斧幼女はオレンジネームになった後も、町の神殿で復活した上に町中を自由に歩いていたが、私は町に入ることも禁止されるらしい。門にいる白銀の鎧と槍を持つ守衛NPCは町中にも散見されたので、ここを無理に押し通っても意味はなさそうだ。とりあえず町に入りさえしなければ襲ってこない様なので、門の横に座ってステータスとEVOLVEの確認をしてしまうことにする。
オディアス
装備
頭 - なし
体 - 初心者の服
足 - 初心者の靴
武器- EVOLVE『フォトン』
スキル
機械刀 lv5-進化可能-
- HP変換充電lv2
- 放電lv1
罪人
- HP吸収lv1
称号
『罪人』-無実のプレイヤーを三人殺害した証。EVOLVEの進化に影響を及ぼす。
三人殺したことでレベルが二つ上がりスキルが二つ生えた。何より進化できるようになったのが嬉しい。スキルの確認は後回しにして、ステータス画面の進化の項目をタップする。
初めてEVOLVEを召喚したときと同じ様に、私の右手とEVOLVEが光で包まれる。前回はこのまま光量が増していったが、今回は真白の光が徐々に赤色に染まる。これが罪人の称号による変化なのかは分からないが、数種類の赤色が混ざったかのような光は禍々しい。門を通って町の外に出てきたプレイヤーがギョッとした顔をする。赤い光はそのままゆっくりと引いていき、後には黒い板状に赤い光が走るEVOLVEだけが残る。進化前が銀色に青い光だったので随分様子が変わった。さながらアナ○ンからダース・ベ○ダー位の変化だ。刀の部分を出してみたいが、私のHPはもう二割しかないので充電のスキルを使うには少し足りない。町にも入れないし自殺するのも嫌なので、死ぬまでその辺のプレイヤーをしばき倒すことにする。
獲物を見繕っている内に、リスポンして町の外に出てきたと思しき偽美人に後ろから突き刺されて死んだらしい。自分を殺した相手とは言え、無言で後ろから首を全力で突けるあたりやっぱり只者じゃない。守衛さんも驚愕していたし、あの偽美人は明らかに私や大斧幼女と同じ倫理欠落組の一員だ。いずれ放っておいてもPK面に闇落ちしてくるだろう。現に今も光になって死にゆく私をニヤニヤと見下ろしている。頭を下げていることで長い髪が垂れて、周りからは顔が見えないために黙祷しているようにも見えるだろうが、その実は真逆だ。
いつもの神殿ではないところにリスポンしたらしい。巨大な白い大理石を削って作られたような神々しい神殿と違い、苔の生えた石室には古びた祭壇がぽつんと置かれていた。神殿は大きすぎて探索する気にはなれなかったが、小さな部屋にこんなにあからさまな祭壇があったら流石に調べる。黒色で奥行き1m、幅5m程の四角い石の祭壇は上に赤いビロードが敷かれ、中央に銀でできた大きな皿が置かれている。
更に近づいて祭壇を調べたいが、不意な戦闘があるかもしれないのでEVOLVEを召喚して充電しておくことにする。今までは銀の本体に薄い黄色の非実体ブレードが寄り添うように展開されていたが、今は黒い本体から少し離れたところに赤く肉厚な非実体ブレードが浮くように展開された。カタナと言うより巨大な肉切り包丁の様だ。よく攻撃を弾くように使っていたのでそれに合わせて進化してくれたのかもしれない。見た目も恐ろしげで威嚇効果がありそうだ。ただ、形状的に突きができなくなったことは注意しておかないといけなそうだ。
改めて祭壇を調べようと近寄る。中央の銀の皿の縁には茨のような模様が縁取られている。恐る恐る触るとウインドウがポップした。
『我らが神に異教徒の血肉を捧げよ』
と題されたそのウインドウの下にはショップと同じデザインになっている。とりあえず何か反応するアイテムを持ってないかとインベントリを開いてみると、先程の偽美人たちを倒したときに手に入れたのだろう戦利品が幾つかあった。美人さんが身につけていた鎖帷子にマント男の片手剣、根暗魔法女のローブの三点はどうやらこの祭壇に捧げられるようで、恐らく異教徒とはPK以外のプレイヤーのことで血肉とは彼らからのドロップ品のことのようだ。とりあえず全部捧げると『古き神の祝福』というアイテムが5個ほど手に入った。
このアイテムを使ってこの祭壇で買い物ができるようで、町を使えないPKへの配慮だろうか、各種武具や回復アイテムの類が買えるようだ。更にスクロールして行くと特殊なアイテムも買えるらしいが、その分必要な祝福の数も馬鹿にならない。とりあえず一番高いものを見てやろうと最下部までスクロールして私は固まった。
『追加EVOLVE』-1000個
思えば何故一人一つしか手に入らないと思っていたのか。とりあえずの目標が決まった。残念ながら明日が早いのでここでログアウトしなければならないのが惜しい。明日も仕事を終わらせてすぐに帰ろうと嘗てないほど勤労意欲を燃やしつつログアウトする。