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その夜の感想 <C107>

この回は短めとなります。

 ご隠居の伊賀七さんと話しを続けているうちに陽が傾き、部屋の中が暗くなってきた。

 俺の意識が飛んだ先がいつなのか、ここがどこなのかを解き明かすのに、結局一日を費やしてしまったことになる。

 伊賀七さんは「明日からも、しばらく色々話しがしたい」ということで、八兵衛さんをこのまま別邸に泊まっていくように指示した。

「トメさん、明日も八兵衛と篭るから、工房の連中には当分帰らないと伝えておいておくれ。

 あと、本宅の丁卯司には、研究で佳境になっているので、しばらく八兵衛がここに泊まることになったということも言っておいておくれ」


 伊賀七さんは、神妙な面持ちで話しかけてくる。

「健一様、今日はここまでにして、ゆっくりお休みください。

 今日は、健一様のご要望をお聞きしてのお話が中心でしたが、明日からは私どもの聞きたいことをお教え頂ければと思います。

 よろしくお願いいたします」


 伊賀七さんの前に座っているのは八兵衛さんで、八兵衛さんは頭では解っているものの普段接しているご隠居様の神妙な態度にどうしてよいか解らず、モジモジとしている。

「八兵衛さん、

 解りました、こちらこそ明日からよろしくお願いします

 と伝えてください」

「ご隠居様、健一様が、

 解りました、こちらこそ明日からよろしくお願いします。

 と申しております。

 それから、ワシはこのまましばらく別邸に泊まる、ということでよいのですね」

「ああ、八兵衛。

 当分ここで寝泊りしてくれ。

 それから、今日はもう休んでよいよ。

 くれぐれも、健一様には失礼がないようにな」


 この時代は、基本的に日が暮れると寝るしかない。

 また、日常的に風呂の習慣がないので、そのままの格好で寝るようだ。

 女中のトメさんに女中部屋、ではなく納戸に案内され、そこに敷かれた煎餅布団に横たわった。

 蒸し暑い部屋だが、扉を開けると少しだが涼しい風が流れ込んでくるのを感じた。

『凄じく悪い環境だなぁ。

 この虫だらけの部屋で、おそらく蚤や虱だらけの布団で、垢じみた服のまま寝るなんて、身の毛もよだつ、とはこのことだ。

 意識が憑依しただけということは、テレビを通してこの世界を覗いているようなものなので、感覚を意識して遮断できるのが嬉しいよな。

 もし、体ごとこの世界に来ていたらと思うと、この衣食住だと、ここでの生活には到底耐えられんぞ』

 俺は、八兵衛さんからもたらされる触覚・嗅覚・味覚を遮断し、気持ち悪さを回避した。


 しばらくの間、八兵衛さんの視覚・聴覚を探っていると、やっと部屋の暗がりに目が慣れてきて回りの様子をイメージできるようになってきた。

 伊賀七さんはまだ起きていて、蝋燭に火を灯し、文机に向って何か書き出しているようだ。

『おそらく、今日の出来事を日記として付けている、のじゃないかな』


『伊賀七さんにしてみれば、今日起きたこと、俺から知ったことは驚愕の事実に違いない。

 後60年ほどで江戸時代が終わる、徳川将軍の体制が変わる、という話しはどう考えても刺激が強すぎるよな。

 きっと明日はこのあたりの聞き取りが行われるんだろうな。

 伊賀七さんの個人的趣味ということで聞いて貰えるだけなら、言ってもいいのだけれど、これが影響して未来が変わるのは凄く困る』

『でも、ひょっとして俺の流した情報がすでにあった上で、俺のいた時代ができあがっていた可能性も否定できないなぁ』


『思わず、薩・長・土・肥と言ってしまったが、本当にこれはまずいよな。

 絶対忘れてくれそうにないし、この四藩が徳川と戦うイメージしかわいてこないだろう。

 明治維新前に四藩が潰れるようなことがあると、明らかに歴史が変わってしまう』

『まさか、江戸が無血開城して、ある意味徳川は不戦負。

 実際に戦って負けたのは、会津藩主体の奥羽越列藩同盟とか、軍艦で函館に行って蝦夷独立国宣言した榎本武明といったところでしかない、なんて現実味はないよなぁ。

 最終的には、明治政府は天皇親政とも言える政治体制なので、藩幕体勢の終焉ということになるし、今のお殿様がいる世界からすると、版籍奉還なんてショッキングな出来事も起きるのだよな』


『ここは水戸に近いから、勤皇の考え方は浸透しやすい土壌はあるし、かと言って、結果だけを知っていても途中に「安政の大獄」があることを知らないなら、これまた藩が生き残るために必死になって考えたところで、判断を誤りかねないからなぁ。

 未来の歴史を、中途半端に知ることの危うさかぁ。

 どう話せば解ってもらえるだろうか……』


 いろいろ考えているうちに、体の主の八兵衛さんがすっかり寝てしまったのか、視覚からの情報が入ってこなくなった。

 聴覚は視覚と違い、意識的に遮断しなければ寝ていても情報が流れ込んでくる。

 とは言え、蚊の「ぶ~~ん」という羽音や「ガサゴソ」という虫の気配しかしない。

 俺はこの音に「気持ち悪いなぁ」と思っているうちに、疲れから眠りに落ちていった。


一般の農家の生活を調べていますが、果たしてこんなで良かったのかと、内心ビクビクしながらの執筆です。if物なので、こだわることもないかとは思いますが、どうしても気になってしまう性格なので。その挙句、クドクドと書いてしまう欠点があるのは解ってはいるのですが。

どうぞ、ご指導ください。

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