プロローグ <C101>
本格投稿初挑戦している初心者です。
よろしくお願いします。
『……酷く疲れているなあ。眠いなあ……
…何か頭もズキズキとして痛い感じがするぞ。
暗いなあ、ぼんやりとしか周りが見えないなぁ。
……ここはどこなのだろうか、
あれ、俺は、俺の名前は何だっけ。
眠いや、まあどうでもいいか、ちょっと寝よう……』
「おおい、八兵衛さん。
なにぼんやりと固まっているのかい。
ご隠居様に言われた歯車磨きは終わっているのかい」
遠くの方で誰かの声がしているのが聞こえた。
『八兵衛?これは俺の名前じゃないよな』
「こら、八兵衛。寝ぼけてないで、しゃっきりせんと」
俺の視界がうっすらと開ける。
『なんじゃ、こりゃぁ』
薄暗い掘立小屋の土間に、筵が敷かれていて、水が入った木の盥を前に座り込んでいる自分がいることを意識した。
同時に、自分の意志とは別に手足が、口が動いた。
「あっ、申し訳ない。
ちょっと金縛りにあったようで固まっていた。
声かけてもらって、金縛りが解けたようだ。
歯車磨きは、すぐに終わらせるけんのぉ」
俺の意識にはない所で、俺の体は勝手に返事をして動いた。
俺はこの状況に混乱したが、暴れようにも体は俺のものではないようで、ちっとも意志に従ってくれない。
喚いたつもりが、ちっとも声にならない。
そればかりか、強いて意識を保たないと、俺自身が消えてしまいそうな感じがする。
混乱している間も、盥に入っていたブラシで金属製の歯車を軽く擦り、汚れを落としている自分の所作や、周囲に同じような人が何人かいる様子が眼に入ってきた。
目は一点に向いていて、周りを見ることもできない。
まるで、テレビの画面を通して様子を見ているようだ。
どういう状況なのかについて、実は俺には心あたりがあった。
『これは、異世界もの・移転ものの小説で良く目にする憑依という現象だな。
よくは判らないが、俺の意識が八兵衛さんに憑依したということで辻褄があう。
問題は、俺は誰で、ここはどこかということだ。
俺の本体がどうなっているかが心配だ。
それと一番重要なのは、ここが、いつかとういうことだな』
依代となった八兵衛さんの動きをぼんやり意識しながら、必死で考える。
俺はずきずきする頭で自分の混乱する記憶を、ほんのちょっとの引っかかりを伝に辿る。
『俺の名前は……
そう、俺の名前は、林健一。
確か、今は夏休みに入ったばかりの7月24日。
そして、大学受験を控えたA高校3年生。
学校の補習授業で登校する途中、確か下平尾のバス停横を歩いていたんだ。
そこの歩道に正面からダンプカーが突っ込んできて……』
『そうか。
どうやら、俺は交通事故に遭ったようだ。
その結果として、どこかに飛ばされたに違いなさそうだ。
話している言葉は日本語のようだし、どこかの古民家園にあった建物に似ているところから、俺の意識が過去に飛んで八兵衛さんに憑依したでということに間違いない』
意外に俺は冷静だった。
頭が痛くて、とても疲れている感じはしているが、状況を分析していく。
『俺自身は、体はどうやら交通事故にあって、外見からは意識がない状態に違いない。
それは、ここに意識があるってことで判るし、だとすれば、まだ体は生きているのじゃないかな。
臨死体験なら、病室で横たわる自分の体が見えたり、お花畑の中にいたり、川岸で立っているというのが相場のはず。
今、俺の体は見えてはいないが、臨死体験と同じ状況というのなら、意志の力で自分の体に戻ることができるはず。
さあ、病室で寝ている自分の姿を想像するのだ。
そして、そこに自分を重ね合わせるのだ』
暫しの間、強く念じては見たものの、意識が八兵衛さんから遊離する気配もない。
『ふぅ~。駄目だななぁ。
ちょっとくたびれたし、一休みすればなんとかなるかも知れない。
まあ、いろいろ思い出せるのだから、脳にダメージは無いのだろう。
いずれは自分の体に戻れるに違いない。
ちょっと休もう』
そして、意識が遠くなり、俺は眠りに落ちた。
次に意識が戻ったのは、周りがうっすらと明るくなってきている時だった。
『もう朝か。今日も補習だし、起きて学校に行かなきゃ』
と、思って薄っすら開いた目から入る光景を意識した瞬間、俺は絶句した。
相変わらずの掘っ立て小屋の天井、小屋の床である板間の上に並ぶ煎餅布団、垢染みてシラミが住んでいるような着物に包まって眠りこけている男共。
昨日のことを瞬時に思い出した。
『そうか、戻ってなかったか』
ともかく情報が無くては何もできない。
体の持ち主の八兵衛さんは、まだ浅い夢の中にいるようだ。
そうだ、この八兵衛さんに聞いてみよう。
「八兵衛さん、八兵衛さん。ちょっと教えてくださいよ」
どうやら、この声は八兵衛さんの頭の中には届くようで、八兵衛さんの意識がこちらへ向くのを感じた。
『ワシの頭の中へ、夢の中で話しかけてくるのは、どなたかな?』
『おっ。反応があった。俺の言うことは聞こえるようだ。
しかし、最初が肝心だ。用心しながら話そう。
どうやら、俺が考えることは伝わらず、声に出したことだけが聞こえるようだ』
「俺の名前は健一。中国七賢人の末裔なるぞ」
そう、どうせ夢の中なのだから、ここでは神様からの啓示を装うことにした。
『それは、それは。大変失礼を致しました。
で、ご用の節は何事でございましょう』
「俺は、この地上に降り立ったばかりなのだ。
いまはいつなのか、そして、ここはどこなのかを教えてくれ」
『それは、それは、大層お困りなことで。
今日は確か文化十四年、ひのと・うしの水無月12日じゃ。
そして、ここは谷田部藩の新町じゃ』
『文化十四年?谷田部藩、この情報だけで、いつで、どこなのかを判れというのは無理だよぉ。
断言する!一万円賭けてもいい!
A高校レベルの生徒では、これから有益な情報を引き出して、何かを判別できる人は絶対いない。
日本史を担当しているT先生でも、多分無理だよぉ』
しかし、何も情報を与えないままで、八兵衛さんからこれ以上の情報は得られそうにないことは想像がついた。
とりあえず、朝も近いので、お礼を言って引き下がろう。
「うむ。ご苦労。大儀であった」
『お役に立てて、なによりで御座います』
その後、八兵衛さんは仰天して一気に目を覚まし、頭の中がパニックになってグルグルと色んな考えが溢れてきていた。
その考えている中身は俺に筒抜けになっており、その思考の中身から意味のある情報を集めようと、俺は必死で八兵衛さんの頭の中の読み取りを始めていた。
結構くどい書き方になっている点は、ご容赦ください。
アドバイスなどコメント頂けると幸いです。