表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第十一章 樹海デートタイム
97/99

6

 ラダイモンの兵士達は森を奥へと進んでいった。奇しくも、方向は例の湖がある場所。追跡者の存在にはまるで気付かないまま、ちょっとした案内役になってくれる。


「ね、ねえ、ちょっと!」


 追いかけてくるヘルミオネは、空気を読んで小声だった。

 俺は彼女の前に人差し指を立てて、静かにするよう指示を出す。……流れは順調なのだ。下手なミスを仕出かしたら、ここまでの幸運がパーになる。


 そうして見えてくる、枯れた湖。

 二名の敵は立ち止まって、正面の光景を仲良く嘲笑する。


「ははっ、いい気味だぜ。ウチにいつまでも頭下げねえからこうなるんだ」


「あの無銘級はムカつくが、オンファロスの顔に泥を塗れるのは最高だよなあ。これで俺達も一躍有名ってか!?」


 人並みの野心はあるらしく、ラダイモン兵はまだ声を揃えている。

 聞き手に徹しているヘルミオネは、憤懣やる方ないと敵を睨んでいた。――彼女にも千里眼があれば、もう少し笑っていられるだろうに。


「どうぞー」


 タイミングを合わせて、小声で言ってみる。

 直後だった。


「っ!? な、なんだ!?」


「湖から聖水が……!?」


 柱のように上る、大量の水。

 彼らの困惑を余所に、水はその形を変えていく。今朝撃破したばかりの、ドラゴンと同じ形へと。


「ひっ……」


「み、湖の守り神か!?」


 ラダイモンの兵士は抵抗することを選ばない。最初から敵わないと見ているようで、一目散に撤退する。


 水のドラゴンは彼らを見送って、あっさりその姿を消した。湖も当初と同じく枯れたまま。傍から見る分には、夢や幻覚でも見せられた気分である。


「……ユキテル君が言ってたの、これ?」


「そ。微かにだけど、何か分からない気配があってさ。精霊さんだったら助けてくれるんじゃないかな、と思って」


「だからさっき、精霊かもしれない、言っていったわけね。……賭けに勝った気分はどう?」


「最高だね。幽霊だと思って怖がってたヘルミオネのこと、これでまたからかえそうだ」


「最悪よ!」


「えー」


 痴話喧嘩をしながら、水のドラゴンがいた場所へと顔を出す。


 噴水はもう一度起こった。さすがにドラゴンは出てこないけど、今度は水で作られた貴婦人が登場する。恐らく、これが精霊なんだろう。


 彼女は口を動かしているが、いまいち聞き取れない。発声器官を持っていないんだろうか?

 ただ表情は必死で、何かを訴えようとしているのが分かる。


「……とりあえず、千里眼使ってみようかな」


「絶対分からない気がするんだけど」


「まあものは試しってことで」


 切実な表情の貴婦人に、俺は意識を集中させた。


「――えっと、ラダイモンの軍隊が森を伐採しているため、精霊の力が弱まっています。彼らを追い払ってください――だってさ」


「わ、分かったの!?」


「分かったみたい。あ、ラダイモン軍が駐屯しているのは、ここから西に向かった場所だって。さっきの兵士達が逃げていったのと同じ方向だね」


「……どうする? 倒す?」


「当然」


 アレぐらいの兵士なら、一方的に蹂躙できるだろう。もしかしたら神子だっているかもしれない。……無銘級では、拍子抜けもいいところだが。


 いたとしても、オレステスぐらいは欲しいところだ。彼の泣き顔が見れるなら、ちょっとは暴れる価値があるかもしれない。


「ちょ、ちょっと待って! 向こうと問題起こしたらまずいって言ったでしょ?」


「じゃあ顔を隠そう。あるいは精霊さんに頼んで、霧を起こして貰うとかさ。――できますか?」


『――』


 横目を向けると、貴婦人の彼女はコクリと頷いた。

 しかし意外な出来事だったらしく、ヘルミオネはただ驚いている。


「凄いカリスマ性ね……精霊って、人間に対して警戒心が強いって聞いたんだけど」


「きっとゼウス様の加護があるからだよ。ヘルミオネにも優しくしてくれるんじゃない?」


「……駄目、睨まれたわ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ