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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第十章 誤射の成果と交渉成功
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7

「俺は別に、君達が邪魔だと一言も口にしないでしょ? にも関わらず被害者妄想するなんて、これから迷惑をかけるって暴露としてるのと同じじゃないかな?」


「……」


「その通りだぞオレステス。彼は害を与えると宣言しているわけでもない。事実をでっち上げ、名誉に傷を与えるなど戦士のすることではない」


「ですが……! この会長は僕を侮辱したではありませんか!」


「貴様の妄想だろうに。――もういい、黙っていろ。連れてきた俺が馬鹿だった」


「な――」


 余計に口を挟みたさそうなオレステスだが、マルスの視線一つで沈黙した。悔しそうに歯ぎしりまでして、あとひと押しで喚き散らしそうな気配。


 なので無視する方針で、ギルドの話が進んでいく。


「俺も生徒会とは親しくしておきたい。オンファロスや学園の中立性を守り続ける上で、学生ギルドの役割は非常に重要だからな。本国を黙らせる上でも――」


「な、何を仰っているんですか、支部長!」


 少し堪えたと思ったけど。

 感情の防壁は、いとも容易く決壊した。


「僕らレオニダスは、学園の中立性を揺さぶるために設立された! 本国の意向に従い、生徒会との協同は認められるべきではない!」


「うるさいぞ」


「くそっ、やっぱりアンタが支部長になったのは間違いなんだ! 僕みたいな無銘級じゃなきゃ、暴走するに決まって――」


「うるさいぞ!!」


 怒号。

 そう称して構わない轟音で、マルスはオレステスを非難した。彼にとっては思わぬカウンターだったそうで、腰を抜かして倒れ込んでいる。


 ……なんだか、哀れなぐらいの小物っぷりだ。同情なんて退屈なのでしないけど。


「くそっ!」


 彼は立ち上がると、振り返りもせずに生徒会室から逃げていく。


 緊迫した空気感が尾を引いていたが、短い時間のうちに消え去った。マルスが姿勢を正し、すまん、とテーブルに頭をつけているのもある。


「正式に排除する理由もなく、今日まで野放しにしてしまった。俺の責任だ」


「い、いいですよ、そんな。マルスさんだって大変なんでしょうし」


「……心が広いな、君は。ヤツに爪の垢でも煎じて飲ませたいぐらいだぞ」


「飲む前に吐き出すんじゃないですか? オレステス君」


 その瞬間を連想したんだろう。見ているこっちも気分がよくなるぐらい、マルスははっきりと破顔した。


「さて、交渉を再会しようか。といっても、俺は君と協力関係を構築できれば、シード権の一つや二つは喜んで差し出そうと考えている」


「え、いいんですか? さっきの話からすると国に――」


「構わん。俺はもともと、連中が嫌いでね。ある程度は距離を置いておきたいのさ。――まあオレステスのやつは、出来るだけ恩を売りたいようだが」


「無銘級、ってことも関係してるんですか?」


「恐らくな。ヤツが何かしらの権益を得るには、他に方法がない。……次に迷惑をかけたのなら直ぐに言ってくれ。問答無用で席を外させる」


「あはは、次がない方がベストですけどね」


「まったくだ」


 俺達は互いに笑みを投げた後、改めて権利の譲渡を約束した。レオニダスの後ろ盾――都市国家ラダイモンが介入してきた場合は、何かしらの便宜を図るという方向で。


 さて、これで一つ問題を突破した。オレステスが少々気になるが、マルスは厳しい対処を誓ってくれている。こちらから起こすべき行動は今のところない。


 もしあるとすれば、一つだけ。

 授業の開始が近付いてきたら、大人しく教室に戻ることだ。

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