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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第十章 誤射の成果と交渉成功
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6

「どうぞー」


「失礼する」


 聞こえたのは太い、落ち着いた抑揚。

 千里眼で察知した通り、入ってくるのは二名の男性だ。かたや二メートルはありそうな長身と、肩幅の広い筋肉質な男。もう一つは平均的な身長の、目付きが悪い男。


 学園の制服を着ているし、もちろんどちらも少年だ。が、長身の彼については、学生らしい雰囲気など皆無である。頬に切り傷があってヤクザの親玉じゃないかと思うほど。


「君が新会長のユキテルか? 俺はギルド・レオニダスの支部長をやっている、マルスだ。こっちはオレステス」


「……」


 背が低い方――オレステスと言うらしい少年は、無言の挨拶を送ってきた。

 そんな彼の態度を、巨体のアイネアスは苛立たしそうに眺めている。もしかすると見た目通り、豪快な人物なのかもしれない。陰鬱な雰囲気を隠さないオレステスとは正反対だ。


 シビュラが向かい側の椅子を退くと、うちの一人は大人しく座ってくれる。が、片方は疑いの目で、こちらと椅子を交互に見ていた。


「さっさと座らんかオレステス。今回、俺達は話し合いをしに来たのだぞ。最初から相手を信用せずしてどうする」


「ですが支部長……シード権の譲渡ですよ? まともな交渉になるとは……」


「ええい、相手を信用しろと言ったろう! 座れ!」


 立ったままのオレステスを、マルスは強引に引き込んだ。

 支部長の方はすぐに謝意を示してくるが、その部下はなかなか動かない。物言いたげな目を向けるだけだ。


 それに気付いたマルスは、諦観する意味も込めて姿勢を正す。


「――そちらの副会長から聞いたが、シード権を譲ってほしいそうだな? あれは昨年、優秀な成績を収めた学生ギルドの与えられるもの。……知った上での要求だな?」


「ええ。俺の方としては、きちんと等価交換にしようと考えてます」


「それは有り難い。ついでに理由を聞いてもいいか?」


「面倒なんですよ」


「――は?」


 厳めしい顔付きだったマルスは、こちらの返答を聞いた途端に形を崩す。素直に答えたつもりが、逆に意表を突いてしまったらしい。


 ……ギルド同士の戦闘を否定するのは、無礼だったりするんだろうか? もちろん誤魔化す気はないので、そのまま本音を語っていく。


「神級の神子だと、相手に想像以上のダメージを負わせてしまうそうなんで。加減するのも嫌ですし、序盤戦を飛ばせればなー、と」


「ほ、ほう。蹂躙することに娯楽は見いだせぬと?」


「憎んでもいない相手ですからね、一方的に叩きのめすのは気が引けます。恨みを買ったりするのも嫌ですし」


「……確かに、序盤戦は無銘級の神子が多い。会長のような立場なら、避けた方が利益はあるだろうな」


「あ、そうなんですか」


 単純に面倒事を避けたかったんだが、なるほど、そういうのがいた。

 ふとオレステスに視線を向けると、細い目付きが余計に鋭くなっている。自分は無銘級です、と告白しているようなものだ。


 追加で怒りも感じていたんだろう。大人しかったこれまでとは正反対に、テーブルを叩きつけて立ち上がる。


「まるで僕ら無銘級が、はた迷惑な存在みたいですね。訂正してください」


「へ? なんで?」


「――」


 刹那でオレステスは口を閉ざした。

 でも仕方ないじゃないか。俺には無銘級の知り合いなんていない。否定するべきか肯定するべきか、判断材料は何一つ持っていない。


 第一、迷惑なのは無駄な因縁をつけてくる人物であって。無銘級と特定する予定は今のところない。

 まあこのままだと、一人は特定することになりそうだが。

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