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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第十章 誤射の成果と交渉成功
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2

「凄く調子が悪そうだね、ヘルミオネ」


「そうねえ……そうなのよ。身体がだるいってわけじゃないんだけど、集中力が散漫になってる感じ。先生は神の呪縛がどうたら、って言ってたけど、身に覚えがないし」


 何度目か分からない吐息が、彼女の口から零れていた。


 部外者はその混乱を観察するしかない。根本的に解決する方法だって知らないのだ。かの女神が放った矢に、解毒薬など存在した試しがないわけで。


 ……一つあると言えばあるんだが、実行に移すのは躊躇われる。こんな状態じゃ、同意がないのも同じだし。


「何か罰当たりなことでもしたのかしら、アタシ。ゼウス様の加護があるからって、調子に乗りすぎだー、とか」


「た、単なる事故じゃないかな? 神様だって間違えることはあるだろうし」


「そうなのかしらね……」


 ああ、正直に言ってしまいたい。とある女神の暴走が原因だと。

 しかし間接的に、女神の誇りを傷付けることにもなる。待ちうけるのは意図的な罰当たりで、例の矢をぶち込まれたりしたら目も歯も当てられない。


 あの矢は、もう一本対になる鉛の矢がある。これは命中した場合、迫ってくる相手を頑なに拒むというものだ。


 一生恋愛不可能なんて嫌すぎる。――アプロディテには考えた通り、アテナと一戦交えさせて意趣返しとしよう。


「テスト前だってのに、勉強に身が入らないなんて困ったもんだわ。ねえユキテル君、何か解決する方法、知らない?」


「えっ」


「君と一緒にいた時、何回かこの気分にはなったことあるのよ。ゼウス様の加護が影響してるのかもしれないし……何か知らない? あるいは聞いてない?」


「いっ、いやあ、知らないなあ」


「――そう」


 迫真の演技には程遠いが、何とか誤魔化せたらしい。

 ヘルミオネから出た溜め息はこれまで以上に深かった。一定の期待を込めた問いだったんだろう。


 力になってやりたい気持ちは強くなる。元はと言えば、俺がアプロディテを止められなかったのが原因なんだし。


「……ところでユキテル君、一つ聞きたいことがあるんだけど」


「な、なに?」


「まあ立ったまま話すのも変だし、ほら、隣り座って」


 真っ白なベッドを叩く赤髪の少女。どこか熱っぽい空気に押されて、逆らう気力なんて失せてしまった。

 指示通りに腰を降ろすと、ヘルミオネの方も尻一つ分近付いてくる。


「今朝、シビュラが言ったじゃない? 正式に恋人関係になった、って」


「公衆の前面で暴露されるのは恥ずかしかったけどね……」


「そこまでいなかったでしょうに。あんな可愛い子を彼女に出来るんだから、我慢しなさいよ。男子生徒が聞いたら殺されるわよ?」


「面倒なのは嫌だから我慢するよ……で、聞きたいのは?」


「ん、相手を好きになる、ってことについて」


「――」


 平静を装うのに全精神力を傾ける。ヘルミオネが身体を預けるような距離まで近付いているのも、心の鎧を固めなければならない原因だった。


 まるで、昨夜のシビュラみたいに。

 潤んだ瞳の美少女が、息のかかりそうな距離で見上げてくる。


「アタシね、恋愛感情って経験したことがないの。昔から男は言い寄ってきたんだけど、こっちは全然気持ちが乗らなくてね」


「あ、ああ、シビュラから聞いたよ。凄い少女時代だよね」


「今も少女なんですけど? ――でまあ、どうなのよ? 好きって気持ち、教えてくれる……?」


 距離はどんどん近くなる。気付かない間に手と手を絡めて、お互いの息遣い直接触れていく。

 少女の状況を忘れてしまうほど、それは官能的だった。

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