表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第九章 生徒会ギルド
81/99

8

 朝の思い付き通り、俺は授業を抜けて大迷宮へ行くことにした。抜けてと言っても、もちろん許可は得ているが。


 迷宮通りにまだ人は少ない。開いている露店も数える程度で、午後の賑わいとは比べるべくもなかった。日が昇っているというのに、まるで夜のように静まっている感じ。


 それだけギャップが激しいんだろう。いい機会だからじっくり見て回りたいが、学園からは最低限の時間しか許されていない。シビュラから渡されたクッキーを届けて、要件を伝えたら即帰還だ。

 もっとも、


「朝早くの迷宮通りなんて、私初めてです! ついでですからじっくり観光しませんか? ユキテル様っ!」


「……」


 何故か、シビュラまで一緒に来てしまった。

 大迷宮に入れない彼女は、今回に限って入場する許可を取り付けている。ケルベロスにお手製のクッキーを与える手前、自分が行かないのは変、と押し切ったらしい。


 無論、当人は微塵もそう思っちゃいないだろう。単に迷宮通りへ、大迷宮へ入りたかっただけに違いない。


「早く帰るんだから、はしゃぎ過ぎないようにね」


「分かってますよー。あ、ユキテル様みてください! 魔獣のお肉が売ってますよ! 今晩はこれにしましょうか?」


 駄目だ、この女絶対聞いてない。

 シビュラは目当ての店に向かうと、さっそく店主と親しげに話し始めた。調理方法でも聞いているのか、店主の方が身ぶり手ぶりで解説している。


 ……本人は楽しそうだし、あまりしつこく言うのは止めておこう。学園への言い訳は何個でも考えられる。


「あら、この前の坊やじゃない」


「げ……っ」


 悩ましい美声の持ち主は、誰なのか問うまでもなかった。

 処女神アテナのライバル、美と愛の女神アプロディテ。以前と同じ扇情的な出で立ちの彼女は、吐き気がしそうなぐらいの色気と一緒に近付いてくる。


「今度は別の女の子を連れてくるなんて……うふふ、色男じゃない。やっぱり君はあの駄女神と一緒にいるべきじゃないわ。お姉さんと一緒にいればきっと楽しいから、ね?」


「え、遠慮しておきます」


 こちらに両手を伸ばしてくるアプロディテを、寸のところで抑制する。

 彼女は不満を露見させることなく、意味あり気な目付きで腕を組む。大きさと形の良さを備えた巨乳が、お陰でグッと持ち上げられた。


 注目したら術中に嵌まるだけのに、それでも無視は選べない。男の本能が刺激される。


「ねえねえ、何か困ってることとかない?」


「い、いきなりどうしたんですか?」


「やあねえ、そんな疑いの目で見ないでくれる? 私は単に、親切心から君の手助けをして上げようと思ってるのよ? 学生が朝から大迷宮だなんて、普通の出来事じゃないし」


「……」


 一挙手一投足が妖艶な美女は、物言いたげな目でこちらを眺めている。

 手助けか。確かにアプロディテのような女神なら、問題を解決する術はあるかもしれない。が、彼女が関わると、最終的にトラブルとなるのが目に見えている。


 絶対に断るべきだ。ヘルミオネだって協力してくれるんだし、ここで女神の手を借りる必要はない。


「ふむふむ、ギルドのことで悩んでるのね」


「!?」


「隠そうとしたって無駄よー。私達は人間の考えてることなんて、お見通しなんだから」


 さっそく悪戯を思いついたらしく、アプロディテは悪辣な微笑を作っている。ああ、もう駄目だ、おしまいだ。


 組んだ腕を離し、彼女は口元に指を添えて言った。


「他のギルドからシード権を譲ってもらいたいのね? 分かったわ。お姉さんが人肌脱いであげましょう」


「い、いや、遠慮します! 脱がないでください!」


「そう言われると余計に脱ぎたくなっちゃうわ! ではでは――」


 途端、彼女の手に弓と矢が出現した。


 弓の方は何の変哲もない代物に見えるが、矢は違う。矢じりの部分が黄金、しかもハートマークで作られていた。及ぼす効果についても、何となく想像がつく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ