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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第九章 生徒会ギルド
76/99

3

「ほらー、ユキテルひゃま、どうぞ?」


「そ、それはまだ早いような――」


「……あのですね」


 咥えたまま話すのは大変なんだろう。シビュラは艶やかな唇を震わせつつ、イチゴを手の方に移していった。


「今さら過ぎますよ? 添い寝したり私のオッパイ鷲掴みにしたり、一緒にお風呂入ったりして、どこが早いっていうんですか? これでもなお拒むのは、責任逃れですからあります!」


「うっ」


「私はすべてに合意した上で行っているんですから、罪は重いと言えるでしょう! もう舌突っ込んでキスしててもおかしくないぐらいでは!?」


「いやでも、段階というものを――」


「ユキテル様っ!」


 勢い付いたシビュラは、再びイチゴを咥えて前へ。朱色の上った頬で、目を瞑って待機している。


 何を催促されているのか、もはや問うまでもない。……まあ確かに、こっちもこの一週間は我慢の連続だった。彼女、何の考慮もせず風呂入ってくるし。


「んっ」


 暴れる心臓を抑えつけながら、シビュラの肩に手を乗せる。

 あとは着実に近付いていくだけだ。自分の意志で、彼女の強引な攻めも関係なく、本格的にシビュラという少女を手に入れる。


 目と鼻の先に甘そうなイチゴと、彼女の可愛らしい唇が見えた。


「はははっ、じれったいぞ!」


「!?」


 ロマンチックな雰囲気をぶち壊して、アテナが俺の背中を突き飛ばした。

 案外と力が強かったせいか、シビュラを巻き込んで転倒する。座っていた椅子もまとめて倒れ、自然と彼女を押し倒す形になった。


 もちろん、イチゴはしっかり入手している。

 唇の感触と人肌の温もりも、きちんと身体に残っていた。


「……シビュラ、怪我してない?」


「ふふ、大丈夫ですよ。――半分は事故なのが納得できませんけど」


「まあ酔っぱらってるわけだからね。気にしない方が――」


 いい、と断じる直前、シビュラの方から口を塞ぎにきた。


 触れ合うだけの幼稚なものではなく、互いを貪る貪欲な接吻。抵抗しようにも首の後ろへ手を回されているため、身動きが出来ていない。いや、出来るだけの余裕がない。


 溶けていく。シビュラにされるがまま、与えられる温もりと快感に溶けていく。


「っ、はぁ……」


 解放された頃、どれぐらいの時間が経ったかも分からなかった。


 理解できるのは大人の階段を一つ上ったことと、正面に極上の美少女がいることだけ。濡れそぼった瞳は挑発的で、神子という立場を抜きにした全能感を与えてくれる。


 一人の女性をものにした達成感、征服感。燃え滾るような自信が、身体の奥から湧いてくる。


「歯がぶつかったりしましたけど……どうでした? 私のキス、気持ち良かったですか?」


「なんか、色々考えられなくなったよ」


「あら、答えになってませんよ、ユキテル様。――私ともっと繋がりたいのかどうか、それだけ教えてくださいな?」


 首を横に振るなんて有り得なかった。

 一度だけ、しかし明確に頷いた俺を見て、シビュラはとても満足気。少女とは思えない艶然とした笑みが向けられる。


「でもユキテル様、焦りは禁物ですよ……? デザート、まだ全部食べ終わってないんですから」


「……シビュラ用意してくれたんだから、残すのは厳禁だね」


「はい。――でも二人で一緒に食べれば、直ぐにお皿を空っぽに出来ます。だから、一緒に食べましょう?」


「い、一緒?」


 言葉の意味が分からず首を傾げると、シビュラはテーブルの上に手を伸ばした。さっきのイチゴを使って、また何かやるつもりらしい。


「ん……」


 また咥えて、こっちを見ている。

 なるほど、確かに一緒に食べる、だ。


「じゃ、じゃあシビュラ」


「ふぁい」


「――いただきます」


 何を、かまではよく分からなかったけど。

 その日は、これまでで一番濃密な夜になった。

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