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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第七章 愚者の始末
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7

「解せませんね。貴方は俺に仕えるよう、教えられてきたんじゃないんですか?」


「建前だよそんなものは。私は支配者として、あまねく強者となるべく生きてきた。故に貴様の持つ加護は、本質的に私が持つべきなのだよ」


「その理由は? 根拠は?」


「私が許された人間だからだ。……ついでだから少し説教をしてやる。この世界にはね、許された人間がいる。傲慢であることを、欲望のままに振る舞う権利を得た者が。私はソレなのだよ」


「――もう一度聞きます。理由は何ですか?」


「君には耳がついているのかね? 私が権利を持って生まれた。それだけの話だ」


「……」


 自然と笑いが込み上げてくる。少なくとも自分には、彼が大人物に見えてこない。声高らかに、是を叫んでいない。


 だってリュステウスは、力欲しさに外へと干渉している。

 それは実行した段階で、人間の品位を落とすものだ。


「権利を持って生まれたと仰いましたね。――なら、どうして力を他人から求めるんです? 持って生まれたものなら、求める必要は最初からない筈ですが?」


「――」


 リュステウスの顔から感情が消えていく。怒りや憎悪を通り越した、純粋な殺意へと変貌していく。

 握っているナイフにも力が籠るが、俺は構わず話を続けた。


「そもそも、理由なんて貴方自身が得たものじゃない。貴方は奴隷だ。与えられた法則に心の底まで染まっている、空っぽの人形です」


「小僧……私の手に何があるのか、分かっているんだろうな?」


「当然でしょう。貴方と違って、都合のいい目はしてませんから」


 シビュラにこれ以上の害を加えるなら、容赦はしない。

 決意を自覚するだけで、頭は徐々に冷えていく。心なしかシビュラまで怖がっていた。……それなら元に戻りたいけれど、敵の存在を無視するのは難しい。


「……世間知らずのガキが。いいかね、世界には安定が必要なのだ。私のように由緒正しき者が、力を手にして世界を運営しなければならない。凡俗は我々の指示に従って生きていればいい」


「怖いんですか?」


「なに?」


「新しい価値観が出現して、自分達を駆逐するのが怖いんですか? だからせめて、自分が分かるもので周りを固めて、事なかれ主義で人生を送ると?」


「――貴様に何が分かる? 家の期待に答えるため、どれだけのものを犠牲にしてきたか……貴様に分かるのか!?」


「いいえ、ちっとも」


 あっけからんと、同情を求めた彼を拒絶する。


「それはリュステウスさんの問題ですから、俺からは何も言いません。勝手に苦しんでくれて結構ですし、勝手に救われても結構です」


「……なら何故、貴様は私に問答を挑んだ? 理解し、交渉するためではなかったのか?」


「違いますよ。俺が貴方と話したかった理由は――」


 一息。


「時間稼ぎのためです」


 リュステウスの背後。

 限界まで口を開いて、飛び掛かるケルベロスがいる。

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