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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第七章 愚者の始末
59/99

4

「お、もう行けるのか?」


「ええ。……そういえば、アテナ様は一緒に来られないんですか?」


「私は止めておく。本気で暴れちゃいそうだし、そんなことしたらピュリッサの町が灰燼と化すぞ?」


「大人しく昼寝でもしててください」


 そろそろ夕方だけど。

 アテナは欠伸をしながら、改めて玉座に腰を降ろす。シビュラが同行する件については、これといった反応を示さなかった。


 逆に、巣立つ雛鳥を見て喜んでいる風さえある。


「それじゃあ移動させるぞ。いきなりで驚くかもしれんが、我慢してくれ」


「はい? どういう――」


「こういうこと」


 聖域全体が、アテナの合図で光り始める。

 目が眩むほどの白さが、最後に見えた景色だった。



―――――――――



「……?」


 気付けば、辺りの様子は何一つ変わっていない。

 しかしアテナの姿は消えている。背後にある神殿の柱も、表面の模様が少しだけ異なっていた。


『今、お前たちをピュリッサの神殿に転移させた。本来は神しか使用が許されていないんだがな。今回は特別だぞ?』


「え、じゃあ――」


 確認する時間もない。

 身体の芯にまで轟く獣の咆哮。メンバーの中で一番大きな杞憂を抱いている三頭犬は、矢のように聖域から飛び出していく。俺達も慌てて後を追った。


 外で待ち受けていたのは、獣の群。

 何十、何百という人狼達……!


『退け――!』


 神殿から日の元へ出るなり、冥府の番犬は本性を露わにする。

 人知を超えた怪物の顕現。しかし敵は怯えることなく、無謀にも正面から挑んでいった。


 彼らは無論、歯牙を立てることすら出来ない。暴れまわるケルベロスに吹き飛ばされ、中には上半身を喰い千切られる者までいる。


 その惨状に、ヘルミオネは渋面を浮かべていた。が、シビュラの方が反応は大胆で、俺の後ろに隠れてしまっている。


 もっとも、いつまでも誰かの後ろにいることは出来ないだろう。


『む……!』


 数十メートル離れた町の中心に、巨大な双頭の犬がいる。暴走状態にあるらしいオルトロスだ。


 兄と変わらない躯、体毛の代りに生えている何千匹もの毒蛇。尻尾までその生き物と同じとなっており、怪物と表現するのがピッタリだ。


「ちょ、ちょっと!」


 人狼の大多数が身動きできなくなったところで、神殿前の広間に異変が生じる。

 ゴーレムだ。以前撃破した個体と同じように、心臓部である球体が地面を突き破って出現する。ざっと数えただけでも五十はくだらない。


 彼らは建築物を手当たり次第に吸い、新たな器を形成していく。


「どうすんのよ、これ……!」


『器の破壊は我が担当しよう。そちらのお嬢さんには核をお願いしたいが、よろしいかね?』


「で、出来るか分からないけど、やってみるわ」


「いや、俺が――」


『少年はオルトロスを頼む。我が相手をしたいところだが、あの姿となってしまっては倒すのが難しい。百腕巨神ヘカトンケイルであれば難なく相手を出来る筈だ』


 三つの頭で弟を睨んでから、ケルベロスは敵に飛び掛かっていく。ヘルミオネも迷わず続いた。


 一方でオルトロスは留まらず、悠々と神殿に近付いてくる。早く戦いたいと言わんばかりに、低い唸り声を鳴らしながら。


「分かりました。じゃあシビュ――」


「シビュラはアタシ達が守るから、ユキテル君は一人で行きなさい! 一緒にいて、戦い易いわけないんだから!」


「でも――」


「いいから気にしない! それに、信用してくれって言ったのはアンタでしょ!? だったらアタシ達のことも信用しなさい!」


「……じゃあお願いする」


 百腕巨神を展開しつつ、不安げに眉をひそめているシビュラに振り向く。

 時間に余裕もないので、残す言葉は短めだ。

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