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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第七章 愚者の始末
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3

「すべてユキテルに任せるぞ。無理だと思えば討伐して構わんし、出来ると確信が持てるなら捕獲してもいい。なんだったらオンファロス神殿で飼うか?」


「成程、目立ちますねそりゃ」


 光景を想像したのか、女性陣の二名が揃って微笑する。


 ともあれ主導権を渡してもらえるのは有り難い。ケルベロスとも相談して、円満な解決を計ることも可能になってくる。いくら人間嫌いの彼でも、弟が絡むとなれば様々な角度から協力してくれる筈。


「では準備が整い次第、もう一度ここに来てくれ。私はそれまで、オルトロスが町の外に出ないかどうか見張ってるから」


「了解しました」


 純白の特等席に乗ったまま、アテナの姿は聖域へと溶けて消える。

 肩から力を抜いて、俺はシビュラの方へと踵を返した。


「顔色悪いけど、大丈夫?」


「はい、今のところは。……アテナ様が誇り高いお方だとは聞いていましたが、いざ目の前にすると衝撃が大きいですね。相手も父親だったわけですし……」


「部屋まで一緒に行こうか? 少し休んだ方がいいんじゃない?」


「ああいえ、そこまで気を遣って頂かなくても結構ですよ。……オルトロスのことが気掛かりで、今は休む気分になれませんから」


「――そっか」


 なら準備は完了だ。移動した直後なんだろうけど、さっそくアテナを呼び戻そう。


「あー、ちょっと!」


 聖域に賑わいを取り戻すのは、赤い髪を揺らしながらやってくる一人の少女。


 その後ろからは、頭が三つもある犬が追走していた。――もっとも、サイズは普通の大型犬ぐらいにまで落とされている。ペットにすればご近所さんの注目を集めること間違いなし。


 問題なく聖域に踏み込んだ一人と一匹は、揃って決意の目を向けている。


「これからピュリッサでしょ? アタシとケルベロスも一緒に行くわ」


「……ヘルミオネって戦えるの?」


「な、何よその意外そうな目は! アタシは英雄アキレウスの娘よ? ……昨日のゴーレムについて言ってるんなら、あれは例外だから。神級の神子と一緒にされても困るわ」


「そんなに問題だったんだ……じゃあヘルミオネ、ケルベロスも宜しくね」


 ええ、という頷きの後、普通に吠える三頭犬。どうやら縮小している状態だと、会話することは不可能らしい。


「――ところで、シビュラも連れて行く気?」


「え、駄目?」


「駄目に決まってるでしょ。ピュリッサの町、オルトロスに呼応して出現した魔獣ばっかりって話よ? まだ戦えないんだから、同行を許すわけにはいかないでしょう」


「……だそうだけど、どうする? シビュラ」


「ちょ、ちょっと、ユキテル君はアタシの意見に反対なの?」


 疑問に肯定も否定も示さず、俺は隣にいる少女に視線を送る。危ないとか安全とか、それはこっちが確保するだけのことだ。大切なのはやっぱり、彼女個人の意志であって。


 進む先が剣呑だと分かっているのか、シビュラは俯いて答えない。ただ、誰一人急かすようなことは口にしかなかった。下される決断を無言で見守る。


「……ご迷惑かもしれませんが、私は行きたいです」


「じゃあ行こうか。責任は俺が持つから、ヘルミオネ達は気にしなくていいよ」


「き、気にするわよ! アンタだって、この子がいたら足手まといじゃ――」


「なら信用してくれると嬉しい。俺なら絶対大丈夫だって、信用してくれればそれでいい」


「んな――」


 無茶を言うなと、ヘルミオネは開いた口を塞げずにいた。

 でもこっちとしては、それぐらいしか妥協できない。彼女が力尽くででもシビュラの同行を認めないなら、俺も諦めるしかないだろうけど。


 今のところ、暴挙に出るほどに追い詰められてはいない。

 驚愕の一色だった顔からは、徐々に力が抜けていく。


「……分かったわよ。っていうか、神級の神子にそこまで言われたんじゃ、反論できないじゃない」


「じゃあそういうわけで。――アテナ様!」


 根拠があるわけじゃないけど、試しに呼んでみる。

 すると間を置かず、玉座に人影が戻ってきた。手にはまだ巨大な槍を握っており、ドレスと合わせて周囲に威厳を振り撒いている。

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