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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第七章 愚者の始末
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1

 女神の要求に従い、最速で神殿へと帰宅する。

 出迎えた預言官達はどこか忙しない様子だった。しかし理由を問う暇もなく、そのまま神殿の奥へと誘導される。


 乱立する柱の奥にある謁見用の部屋。居住スペースですべての用件が済んでしまうユキテルには、始めて訪れる場所でもある。


「――」


 神の威厳を形にした、聖域と呼ぶべき純白の広間。


 天井は一面に渡って模様が描かれている。世界の創造から、親から子、孫へと引き継がれる神の王権。その最中に起こった戦争まで記されている。


 中央にはゼウスらしき神の姿が描かれており、背後からは後光が差している構成。不滅の王権を手にし、正真正銘の神王となった瞬間を書いたものだろう。


「おお、偉大なるゼウスの子、黄金の瞳を持つ神よ! 私は貴方のためにすべてを成した! あの町で起こったことは、不慮の事故に過ぎません! どうかご理解を――」


 広間の最奥。五十メートルは離れている場所には一台の玉座がある。背もたれの部分が妙に高く、神々のために用意された座席なのだろう。


 紅蓮の処女神は、そこで退屈そうに頬杖をついている。

 彼女の正面には膝を突く男が一人。……女神が飽きているのは弁明の言葉だと、誰の目にも明らかだった。


「私は、あの魔獣を排除するべきだと考えておりました。オンファロスの安全を、貴方様のお力を確たるものとして民衆に示せると!」


「あー、はいはい、好き勝手言ってろ。構うのも面倒だ」


「アテナ様……!」


 見ている方から同情を誘いそうなレベルで、リュステウスは懇願し続ける。


 深い溜め息を零すアテナだったが、こちらの存在を認めるなり目の色を変えた。立ち上がって、脇目も振らずに駆け寄ってくる。


 ――もちろん、リュステウスの面貌は大変なことになっていた。やっと女神が動いたかと思えば、自分のためじゃなかったんだから。


「やっと来てくれたか。退屈で敵わんかったぞ」


「こっちは邪魔されて困りましたけどね。……で、どうしてリュステウスさんが?」


「何でも、ケルベロスの弟を攫ったそうでね。手ひどい反撃にあったらしい」


「反撃?」


「暴走、とでも言うべきかな。巨大化した挙句、ピュリッサの町を攻撃しているらしい。現在、避難者がオンファロスにやってきている状態だ」


「ふむ」


 それで許しを請いに来た、のだろう。

 リュステウスは立ち上がると、再びアテナの元で膝を突く。もちろん、俺に鋭い視線を向けるのも忘れない。


 ……まるでそよ風だった。憎悪に満ち溢れた形相で睨んできているのに、コレっぽっちも怖くない。彼にあるのは敵意というより、感情的になっているだけなんだろう。


 これはアテナが無視したくなるのも分かる。構うだけ無駄なんだ、この男は。

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