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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第六章 二度目の通学
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 放課後、約束通り校門付近でチラシを配る。

 参戦しているのは俺、シビュラ、ヘルミオネの三人だ。用意した枚数は約百枚。新入生全員に配り尽くす、と副会長は意気込んでいる。


 もっとも、当の本人から紙が消費されることはなかった。むしろ避けられている気配さえあって、同情を禁じ得ない。


「あの、神級の神子様ですよね?」


「ああ、はい」


 新入生だろうか。揃って幼い顔立ちの少女達は、羨望の眼差しで見上げてくる。


「あの、生徒会に入るかどうかは分かりませんけど、一枚貰ってもいいですか?」


「どうぞどうぞ。詳しい話は向こうのお姉さんに聞いてください」


 敬語混じりで答えると、少女達は黄色い声を上げながらチラシを貰っていく。中には手に取った瞬間に小躍りする生徒までおり、こっちとしては唖然とする他ない。


 一方、彼女らはヘルミオネに一瞥すら向けなかった。良かったねー、と喜びを口にしながら去っていくだけ。


 ――これが、かなりの問題だった。

 神級神子としての存在はかなり広まっているらしく、生徒達は好意的に話しかけてくれる。男女の垣根も、上級生と下級生の違いもなかった。


 必然的に通行人は集中する。俺の手元からは順調に物資チラシが消え、他の二人から分けてもらうことも度々あった。


「よろしくお願いしますー」


 明るい声を飛ばしながら、シビュラも順調に戦果を上げている。

 足を引っ張っているのはヘルミオネだけだった。そのため表情は険しくなり、見事に負のスパイラルを産みだしている。


「……ねえシビュラ、ヘルミオネにはもう上がってもらった方が……」


「だ、駄目ですって! そんなことしたら余計に傷付きますよ!」


「打つ手なし、か……」


 数歩離れているヘルミオネを見遣る。いつもならピンと張っている背筋は丸く、凛々しかった面貌には苛立ちと失望が書かれてあった。

 なんか本当に憐みを誘ってくる。適当な理由を作って返した方が、精神的に健全なんじゃなかろうか?


「ゆ、ユキテル様!?」


 無謀にも接近する俺をシビュラが呼び止める。が、ここで引いたら逆効果だ。


「――ヘルミオネ、あとは俺達でやっとくよ。代りに大迷宮の様子、見て来てくれないかな?」


「ふん、どうせアタシは役立たずよ……で、どうして大迷宮?」


「昨日、ケルベロスが言ってたでしょ? 下層に通じる抜け道があるってさ。そこをリュステウスさんが使ってないかどうか、ちょっと調べて欲しい」


「……分かった。その代わり、きちんと宣伝はしといてね?」


「もちろん」


 はあ、とこれ見よがしに嘆息して、ヘルミオネは校舎に戻っていく。生徒会室に置きっぱなしのカバンを取りに行くためだ。


 余っていたチラシを引き継いで、宣伝活動を再開する。


「どうです? 上手くいきました?」


「うーん、難しい。とりあえず他の仕事を頼んだから、これ以上深手を負うことはないと思う」


「だったら一安心、ですかね? 私達もこれを配り終わったら、ヘルミオネさんのお手伝いをしましょう」


「いや、大迷宮だからシビュラは駄目だよ」


「裏から入れば問題ありませんっ」


 問題だらけだ。

 それからも順調にチラシは減って、どうにか配り終えることに成功した。ヘルミオネの方も、入れ違う形で校門を潜ろうとしている。


 手伝おうかと声を掛けたが、彼女にはやんわりと断られた。まあこっちから頼んだのだし、最後まで任せた方が本人も嬉しいだろう。

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