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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第六章 二度目の通学
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4

 ヘルミオネの弁当を見つめていた理由は他でもない。この異世界に来て、始めて米を見たからだ。これまでの食事はほぼ例外なくパンだったし。


 たった一日しか離れていないのに、何だか懐かしくなってくる。


「お米だなんて珍しいですね、ヘルミオネさん」


「ん? ああ、父さんが偶然手に入れたのよ。オンファロスに住んでると食べる機会が少ないし、いいかなー、ってね」


「……」


 声は左右から。隣に並んで話せばいいのに、彼女達は俺を挟んで話している。


 お米の存在もだが、こうして二人の美少女に挟まれるなんて大問題だ。食事にまったく集中できない。自分で取っているサンドイッチの味も、口の中で曖昧なまま溶けていく。


「シビュラ、どうせだったら食べる?」


「わあ、いいですか? じゃあ、あーん」


「はあ? そんなの子供の頃に卒業しときなさいよ……ほら」


 文句を言いつつ、スプーンを使ってお米を運ぶヘルミオネ。


 当然、こちらと接触しないわけにはいかなかった。余計に食事への意識が薄れてきて、彼女もチラリと横目を使ってくる。


「……冷え切ってますね」


「仕方ないでしょ朝作ったんだから! 弁当なんてそんなもんよ!」


 まったくの正論だが、それでもシビュラはご不満なよう。

 少女達は一旦離れて、自分の食事を再会する。こっちも昨日と同じく、シビュラに世話を焼かれる時間が戻ってきた。


「――食べたいの? ユキテル君」


 が、どうも今日は違ったらしい。

 魅力的な提案に頷きたくなるが、寸のところで取り下げる。珍しい物のようだし、さっきシビュラにも上げていたのだ。自分ぐらいは遠慮しよう。


 だが、


「は、はい、あーん」


 強行された。

 白米の乗ったスプーンが、たどたどしくもやってくる。……こんな環境の所為だろう。今まで見たどんな炊きたてよりも、そのお米は輝いて見えた。


 相手の好意を無下にするなんて忍びない。それでも本音ではガッツポーズを作りつつ、待機している食器へと口を運ぶ。


「んー、美味しいです!」


 想定外の割り込みによって、目の前から米が消えちまった。

 犯人を捜すまでもない。こちらに寄り掛っているシビュラが、俺よりも早く捕食してしまったのだ。


「あー! 何してのよ!」


「らめふぇふ。ユヒテルひゃまに食べさせていいのは――私だけです!」


「べ、別にアタシがやったっていいじゃない! 大体アンタ、彼が複数の女と関係持っても仕方ない、って言ってたでしょうがっ!」


「じゃあヘルミオネさんは例外で」


「ぐぬぬぬ……」


 完全に先日の再来である。

 少しは仲良くしろと言いたいが、地雷を踏み抜きそうなので勘弁してほしい。


 一方で、当人達は譲れないようだ。片方はこめかみを振るわせて、もう片方は余裕の表情で挑戦者を迎え撃っている。

 放っておけば争いが泥沼化するのは必定。やっぱり話題の変更が一番だ。


「あのさ、生徒会の仕事について何だけど」


「……そういえば、本来はその話をする予定だったわね。ここは一時休戦にしましょ、シビュラ」


「つまり私の勝ち逃げですね!」


「こ、この女……!」


「はいはーい、ヘルミオネさん可愛い、可愛いー」


 見事なまでの棒読みだが、それで対戦相手は黙ってしまった。しかも嬉しそうに頬を緩ませて。……変な男に捕まらないか、凄く心配になってくる。

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