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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第六章 二度目の通学
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2

 西にある校舎へ渡って、アキレウスが鍵を差し込んだのは生徒会室だった。昨日の建物と同様、あまり使われていない気配がヒシヒシと伝わってくる。


 もっとも、中は案外と整理されていた。物が一つも残っていない、とも言うが。


「適当に座ってくれ。とにかく、今後の対処を決めにゃならん」


「じゃあユキテル君には、一番奥に座ってもらいましょうか。生徒会長の特等席だし。アタシはその横に座るわ」


「何言ってるんですか、私が座るんです。ユキテル様のお手伝いをしないと」


「か、会長になったらそれはアタシの役目よ! シビュラは引っ込んでなさいよ!」


「あれあれー? やっぱりヘルミオネさん、ユキテル様に気があるんじゃないですか?」


「――ふ、ふん! 何よ、悪い?」


 あれ?

 思わぬカウンターを喰らったのは、仕掛けた側のシビュラだった。まったく想定していなかった展開に、右往左往して助けを求めている。


 もちろん、アキレウスは知らぬ存ぜぬ。


「ど、どどどどうしましょう!? ヘルミオネさんが開発されちゃいましたよ!?」

「その言い方はあんまりじゃないかしらねえ!? だ、第一、アタシの場合は仕事上のパートナーとして、ってだけよ! 深い意味はないから!」


「ほほーう」


 羞恥心が勢いに勝ったのか、再び形勢は逆転。シビュラはこれ以上なく、悪辣な面貌に切り替わっている。


「お前さんら、じゃれつくのもその辺りにしとけ。急がねえと授業に遅れるぞ」


「大丈夫です! 私はサボったとしても、後で持ち返せる程度に成績優秀です!」


「一番厄介な生徒ね……」


 授業中、居眠りをしてても好成績を叩き出す生徒、ってわけか。確かに先生方としては、扱いにくい対象かもしれない。


 アキレウスの指示に従って、それぞれが席に座る。――俺は会長席を選ばなかったので、ヘルミオネから物言いたげな目を向けられることとなった。


「んじゃ早速だが、預言に反発してる町について。名はピュリッサ、オンファロスと隣接してる小さな町だ。ここに向かおうとしてる連中から通行料を取って、前々から問題になってる」


「で、お次は預言を受け入れない、と。……身勝手すぎやしませんか?」


「まあそういう土地柄なのかもな。んで、リュステウス氏の姿が今朝から確認できてねえ。ピュリッサに逃げ込んだ可能性がある」


「その理由は?」


「分からん。単純に考えりゃあ、身を守るためかも知れねえが……」


 あるいは、ピュリッサの人々に預言を受け入れないよう指示を出すためか。

 どちらにせよ、面倒なのは変わりないだろう。しかも通行税を取っているわけで。影響力を広めたい神殿側にすれば痛手でしかあるまい。


「どうするボウズ。潜入してリュステウス氏を叩くか、町ごと潰すか。アテナ様はお前に選ばせろ、との伝言だぜ」


「お、俺が決めていいんですか?」


「まあ神殿代表の一人だからなあ。文句挟む馬鹿はいねえだろうし、仮に従うかどうか迷ってるやつらがいれば、牽制にも繋がるだろ。まだ神子として、目立った成果は出してねえだろ?」


「昨日来たばっかりですからね」


 腕を組み、思案で喉を振るわせる。突き刺さる視線は、三分の二が期待一色だった。

 正直、放置したって良い気分にはなれそうにない。オンファロスへ来ようとしている人達から、金を巻き上げるのもどうかと思う。


「……じゃあ、潜入する方向で。無関係な人も巻き込むのは御免ですから」


「分かった。神殿の方にはそう伝えとく。――ああ、それと」


「はい?」


「生徒会長の話だが、受けて貰えねえかな? いや、どうしても嫌なら名前だけでいい。仕事はウチの娘がやるから、お前さんに迷惑はかけねえよ」


「――」


 親子揃って、堀を埋めに来た。文句まで一緒である。

 今度はヘルミオネが呆れる番だった。アキレウスが真剣な顔をしているのも、前回との正反対な状況を印象付ける。


 ともあれ、八方塞らしい。

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