表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第五章 気になるあの子と裸の付き合い
44/99

7

「まったくあの子は……それでは神子様、アテナ様の元へご案内します」


「え? ああ、いいですよ、一人で行きますから。お忙しいでしょう?」


「も、申し訳ありません。そうして頂けると助かります……!」


 通りかかる預言官と次々に相談しながら、彼女も駆け足で神殿のいずこかへ。


 彼女達の間を縫うように、俺は居間へと向かい始めた。全体図こそ分からないが、朝夜と往復すれば該当する道は分かる。

 目的地の扉は閉まっていたので、一応ノックを挟んでみた。


「ユキテルか? 入っていいぞ」


「失礼します」


 入ると、今朝と同じく真紅のドレスに身を包んだアテナがいた。


 相変わらず美しい。アプロディテのように色気を振り撒いているわけではないが、少女らしい可憐さがある。まるで咲いたばかりのバラのようだ。


「なんだ、畏まる必要はないぞ。ここはお前の家なんだから」


「居候してるようなもんですし、最低限の遠慮はしますよ。……ところで、何か用ですか? 単に朝食を?」


「いや、ついでだから、預言を授かる瞬間を見せてやろうと思ったんだよ。これからそれを取り扱うというのに、まったく知識がないのも問題だろう?」


「えっと、預言はシビュラが?」


「基本的にはな。個人の私生活に関する場合などは、他の者達で扱うことになっている。客が多いからね、役割分担は必須なんだよ」


「なるほど……」


 アテナは腰を上げると、こちらの右側を抜いていった。

 俺も彼女を追って廊下に戻る。向かうのはシビュラが去っていった方向、神殿の奥だ。建物自体の雰囲気も、少しずつだが変わっていく。


 歩いていくと、一組の預言官が見張っている扉に辿りついた。


 石で造られた重々しい出入り口である。その隙間からは濃厚な何かが溢れており、特別な空間なのだろうと想像を膨らませた。


「準備は?」


「送れていますが、先ほど終わったところです。どうもシビュラ様は、また寝坊したようで……」


「何をやってるんだ、アイツは」


 姿の見えない常習犯に、アテナは肩を竦ませる。

 見張りはゆっくりと、扉は床と擦れながら、閉ざされた世界を開けていった。


 奥に見えるのは法衣を着たシビュラ。集中しているようで、こちらがやってきたことには反応がない。

 背後では、重低音を響かせながら空間が密閉される。


 なおも、シビュラは腰を降ろして動かなかった。静寂の守り手として、ただ奥の壁を見つめている。……こっちからは見えないが、祈りを捧げているのかも。


「動くなよ。どうやら丁度、預言を授かろうとしているようだ」


「……」


 息が詰まりそうになる。外を歩いていた時の清涼な空気は、ここに入って完全に閉ざされている。あるのは神秘的な、表現のし難い感覚だけだ。


 シビュラが何かを呟いているのは分かるが、明確に聞き取れるほど大きな音じゃない。


「っ……」


 光が満ちる。薄暗い個室の中が、脈絡のない閃光で一杯になっていく。

 目を開けた頃には、立ち上がった彼女が筆を握っていると分かった。手元で山積みになっている紙へ、一心不乱に書き込んでいく。


 もしかすると、預言の内容を書き写しているのかもしれない。何かがやってくる気配も無かったし、変化はシビュラの脳内で起こっているのかも。


「――ユキテル様?」


 まだ途中だったろうに、シビュラはこちらの存在に気付いてしまった。


 とはいえ肝心な部分は過ぎたのか、俺よりも先にアテナが動く。彼女は仕事を称賛するように肩を叩いた後、まだ途中の紙を拾い上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ