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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第四章 番犬の犬探し
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1

「で? 探さなきゃなんないのはどういう人?」


 下層はしらみつぶしに探したとのこと。俺達は変わらず、大迷宮の最上階にいる。


 ときおり魔獣の姿を確認するが、ケルベロスを見るなり慌てて逃げるのが通例だった。……彼が言った通り、人狼やゴーレムは逃げた先で敵と出会ったんだろう。


 ちょっと申し訳ない。まあ倒してしまったものは倒してしまったんで、後悔もほどほどに。


「人じゃないだろ、犬だよ」


「頭が沢山ありそうな?」


「……ケルベロスの身内ってなれば、そうなるんじゃないかな?」


 実際、彼の弟は二頭の頭を持つ犬だった筈だ。

 真相を知っているケルベロスに目をやると、三つある首のうち一つが反応する。


『我が探しているのは弟のオルトロスでな。二つ頭を持っている。まだ幼い子供ゆえ、巣から出てしまうことが多くてな……』


「何日も見つかってないんですか?」


『かれこれ三日も家に戻っていない。我と同じく上位の魔獣だからな、のたれ死んだりはせぬだろうが……』


「心配になってくるわね。貴方みたいな巨体だったら、直ぐ見つかるでしょうし――」


『いや、弟は小さいぞ。お主たち人間が飼っている仔犬と変わらぬ』


 頭が二つある仔犬……可愛いのか?

 ヘルミオネも反応に困っている様子。エサ代膨らむのかなあ、と俺はどうでもいいことを考えていた。


「……でも、そうなると地上に出ちゃってる可能性もあるのね。あるいは誰かに連れ去られたとか」


「迷宮通りの露店で引き取られたかもしれない、ってこと?」


「ゼロではないでしょうね。珍しい取引が行われたら、こっちの耳にも入ってきそうな気はするけど」


 今のところはねー、とヘルミオネは腕を組みながらぼやく。

 反面、最悪の事態には達していないということ。この第一層さえ見張っていれば、それを防ぐことも出来る。


 こうなると人海戦術は試したい。もちろん、ケルベロス本人の同意は必要だろうけど。


「あの、他の人にも協力してもらうのはどうですか?」


『ならぬ。我らは基本、人間や神子に対して好感を持っておらぬ。そなたについては我が主の兄弟、ゼウスの加護を持っている例外と考えてもらいたい』


「じゃあヘルミオネは、彼女がゼウスの孫だから同行を?」


『? お主の妻ではないのか?』


 ボン、と音を立てそうな勢いでヘルミオネが赤面する。そうも印象的な反応をすると、本当のようにしか思えませんよ?


「だ、だだだだ誰がコイツの嫁なのよ!? 知り合って半日も経ってないんですけど!?」


『む、違うのか。これは失礼をした。行動を共にしているものだから、そうなのかと……』


「基準が緩すぎるでしょ……だ、だいだいユキテル君には、もっとお似合いの子がいますからっ。アタシのことなんて、その、別にどうでもいいわよね?」


「えっ」


 そこで振ってくるのか。勝手に勘違いしそうになるんだが。


 捨てられた仔犬か仔猫に近い、縋るような眼差しをヘルミオネは向けてくる。彼女とシビュラの関係を踏まえると、あの子を第一にしてね? との催促だと感じなくもない。


 でも男ってのは美少女に迫られると弱いんです。欲張りになってしまうのです。

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