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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第三章 大迷宮・ラビリントス
30/99

9

 宣言した通り、跡形もなくゴーレムの右腕が弾ける。壊れた先から治っていくが、そんなことはお構いなし。百腕巨神ヘカトンケイルは片っ端から岩を削る。


 危険だと判断したんだろう。敵は、両腕を使って防御に入った。


「――それはそれで」


 進撃は止まらない。

 やがて両腕を突破し、先ほどと同じように胸を陥没させた。再生能力の核ぐらいはあるだろう、と根拠のない期待を抱きながら


 それが確信に変わったのは、直後のこと。

 胸から上を粉々に砕いた後。加護の内訳を計った時の水晶と、同じサイズの石が見えてくる。淡い光を放っている辺り、ネクタル石だろう。


 ゴーレムの心臓と呼ぶべき部位は、それまでの本体を捨てて逃走した。


「アレを壊せばいいのかな、っと」


 追う。

 特筆する点が無かったはずの脚力は、獣顔負けの速度を叩き出した。風が鼓膜を揺さぶり、短い黒髪をさらっていく。


 逃げられないと悟ったんだろう。ゴーレムの核は動きを止めて、より強く発光する。

 途端、周囲の建造物がヤツの元に集まり始めた。急速に形成されていく仮の器。岩だけではなく、木材やガラスまで混じっていく。


 素材の在庫は問題なしだ。ここは遺跡の大通りに値しそうな場所で、多くの残骸が立っている。


「……」


 以前と変わらない巨体を睨みつつ、対策を思案する。核が露出した状態で殴れれば一番だが、追いつく前に器を作られたんじゃイタチごっこだ。


 より早く仕留めるにはどうするか。

 まあ、単純が一番だろう。


「いくよ……!」


 再び、正面から挑んでいく。

 実力の差は歴然だ。ゴーレムは防戦一方、突破する速度は前回記録を超えつつある。


 弱点とのご対面まで、わずか数秒。

 しかし到達されるより早く、核は自ら器を捨てた。再起を図るべく、全速力で戦場から離脱する。


 腕を逃走先に出現させようと試みるが、敵はあっという間に数十メートル先へ。百腕巨神を出現させる射程外へと逃げてしまった。


 曲がり角は使わない。大通りの奥へ奥へ、背後を振り向かずに駆けていく。

 それが、敗因になるとも知らずに。


「――!」


 百腕巨神の一つが、掴んだ小石を投擲する。

 風を切って走る弾丸。ゴーレムの核よりも速く、距離は一瞬でゼロになる。


 手応えを感じさせる快音が、核を貫いた証拠だった。


「ふう……」


 試しの部分も大きかったが、上手く当ててくれてホッとする。

 どうやら百腕巨神は攻撃の他、精密な動きも可能らしい。……どっかで聞いた話にも思えるが、深く考えないでおこう。


 大迷宮には一瞬で静寂が戻ってきた。聞こえてくる音といえば、不特定多数の慌ただしい声だけ。ヘルミオネが連れてくると言った助けは、順調にやってきたらしい。


 速すぎると文句の一つでも言いたくなるが、宣伝に必要なことは終わっている。いつも通りに振る舞おう。


「――うん?」


 また、視線。

 人狼を倒した時に感じたのと同じものだ。一組どころか、最低でも三つはある。こちらの様子を注意深く探り、しかし逃げようとする意志はない。


「誰か、いますよね?」


 千里眼による空間把握では、その人相や体格まで分からなかった。朝の授業とは少し勝手が違う。


 穴が開きそうなぐらい凝視してくる誰かへ、警戒しつつも呼び掛けた。

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