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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第三章 大迷宮・ラビリントス
29/99

8

「大物だね、ヘルミオネは」


「父親がそうだもの。あの人を超えるぐらいはしたいもんだわ」


 不敵な笑みを作って、彼女は道案内を再開する。


 直後だった。

 ヘルミオネの足元が、大きくひび割れたのは。


「ちょ――」


「?」


 彼女は気付かない。

 何か巨大な存在に、攻撃されようとしていることも。


「っ……!」


 言葉では間に合わない。百腕巨神ヘカトンケイルを出現させ、その場からヘルミオネをすくい上げる。


 追うように岩の拳が突き上げてきたのは、それから一秒も経たない頃だった。

 攻撃の射程から逃れた百腕巨神は、こちらの意図に従って優しく彼女を地面に下ろす。完全に油断しきっていたらしく、まだ顔付きは呆けたままだ。


「怪我は?」


「あ、ああ、問題ないわ。その、助けてくれてありがとう……」


「気にしなくていいよ。たくさん話を聞けたお礼だと思って」


「――」


 いまだ反応が鈍いヘルミオネを後ろに置いて、襲撃者と相対する。

 路地を貫いた拳は、下の方に引っ込んでいた。が、徐々に大きくなる振動が、本体の出現を間近に知らせている。


 爆散する地下の地面。

 現れたのは、目測五メートルはある岩の巨人だった。


「ご、ゴーレム!?」


 見た通りの名称を、ヘルミオネは口にする。

 しかし敵は動こうとしない。上半身のみを出現させており、こちらを追撃しようにも動けないのだ。


「ど、どういうこと!? ここまで大型のゴーレムなんて、下の層にしか――」


「そういえば、アキレウスさんが言ってたよ。地下を調査しなくちゃいけないとか」


「!? あ、アンタね、そういうのはもっと早く――」


 ヘルミオネの言葉を遮る形で、ゴーレムの拳が振り下ろされる。


 それでも、百腕巨神の一撃が先行した。

 ゴーレムの胸が穿たれ、振り上げた腕は力なく落ちるだけ。頭部と思わしき位置にある無機質な瞳も、一瞬で光を失っていく。


 だが、


「さ、再生してる……」


 欠けた先から、フィルムを逆再生するように。敵は何事もなかったと、双眸の光を繋ぎ止めていた。


 ならもっと破壊する。幸い、傷を与えることは出来るのだ。面倒だと判断するのは、それでも再生された場合にしよう。


「ヘルミオネは下がってて。やれるところまでやってみる」


「ひ、一人で!? 相手はベテランの神子でも手を焼くようなヤツよ!? それを……」


「宣伝してこい、って言われてるからさ。どうせならデカい獲物を狩りたいんだ。いいでしょ?」


「……分かった。アタシは助けを呼んでくるから、せめてそれまでは耐えて」


「その前に終わらせたいけどね」


 自信に満ちた言葉を手形に、俺達は別々の方向へ動いていく。


 不思議と恐怖はなかった。むしろ全身が熱くなって、これから始まる遊戯を待ちかねている。敵を蹂躙する喜びを、身をもって味わえと言っている……!


 だったら始めよう。力だけは有り余るほどある。人狼は簡単に倒せてしまったが、今回の敵は簡単に果てることもなさそうだし。


 背後から、百を超える腕が出現した。

 奇怪とさえ思えるその光景。神々しいというよりも禍々しく、巨神の力が展開していく。


「木っ端みじんだね、百腕巨神」


「――」


 呼びかけた友人には、声などなく。

 ゴーレムの拳を砕くことが、代わりの意思表示だった。

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