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「ところでさ、性格変わってない?」
「は?」
「いや、シビュラと話してた時に比べてさ。凄く落ち着いてるっていうか」
「そりゃあ、あの子とは幼馴染だもの。君と話すときと比べて差は出るわよ。本来の私は比較的クールです」
「へえ、格好いいね」
「ほ、褒めたって何も出ないわよっ、――まあでも、その、嬉しいわ。あ、ありがとっ」
シビュラから聞いた通りの反応。うん、根本的には変わってないようだ。
「そ、そういえばユキテル君、シビュラは迷惑じゃない? あの子、神子様のお嫁さんになる、って昔から言ってたから」
「それは俺の、ってことだよね?」
「オンファロス神殿直属の神子は君だけだしね。……で、どうなの? 昼間も仲良さそうにしてたけど、嫌じゃなかった?」
「む、焼きもち?」
「ん、んなわけないでしょっ! どうして私が二人の関係に口を挟むのよ!?」
「いや、現に挟んでるよね?」
指摘を受け、ハッ、とヘルミオネは目を開けた。白い肌のお陰か、赤面しているのがよく分かる。
「……確かに私は、シビュラの将来を気遣ってるわ。ユキテル君がまともな人間じゃなかったら、この場で無謀な戦いに挑んだかもね」
「でも正常だって立証できるほど、俺とヘルミオネは時間を共有していないんじゃない?」
「君、ほんっっっとに遠慮しないわね。空気読めてない、って言われたことない?」
「無いよ」
あー、でも、故郷にいた頃はどうだったんだろう?
自慢できるほど人間関係は活発じゃなかった気がする、特に異性とは。こっちに来てからは完全に逆転してるけど。
その一人であるヘルミオネは、嘆息混じりにこちらのことを見つめている。
「貴方の方がよっぽど冷静そうだわ。見習いたいぐらい」
「褒めてる? 批判してる?」
「私としては褒めてるつもり。――で、貴方がまともだっていう根拠だけど、単純よ。シビュラと楽しそうに過ごしてたじゃない」
「……それだけ?」
「それだけ。十分でしょ? 心の中まで勘定に含めたら、際限がなくなるもの。誰よりもお人好しなシビュラと仲良くやれてるんだから、私は納得してる」
信念で話すヘルミオネには、濁りというものが一切ない。幼馴染が信じる少年を、自分も信じると決意している。
何だか、逆に羨ましくなるぐらいだ。きっと彼女の、彼女達の生き方には、後悔なんて無いんだろう。




