表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第三章 大迷宮・ラビリントス
22/99

1

 馬車に乗って向かったのは、オンファロスの郊外にある施設だった。

 辺りは武装し男女で埋め尽くされている。ヘルミオネから聞いた通り、大人から学生まで年齢層は様々。髪の毛が真っ白になっている老人までいる。


「まずは受付に行きましょ。ギルドに所属してないから下層には入れないけど、第一層なら問題ないから」


「鎧とか、着るの?」


「まさか。――大きな声じゃ言えないけど、ああいうのを使うのは無銘系だけよ。英雄級とか神級の場合、加護を発動させる上で妨害にすらなるから」


「意外だな……聖なる剣とか鎧とか、装備するんだと思ってたけど」


「そういうのは全部、神子が持ってる加護で出現させるものよ。装備ってのは、ちょっとおかしな表現になるわね」


「ふむふむ」


 ヘルミオネは真剣な面持ちで話す人々を掻き分け、奥にある平屋へと入っていく。

 中には外と同じような空間が広がっていた。暑苦しさに関してはこちらの方が上なぐらい。大勢の神子がカウンターに押し掛け、何やら紙を受け取っている。


 特攻隊長ヘルミオネは怯むことなく前へ。俺も彼女に引かれながら、どこかを目指して歩いていく。

 抜けた先にあったのは、両手でやっと収まりそうな水晶玉だった。


「これに触って。加護の詳細について、確認しておかなきゃいけないから」


「一応、さっき実践はしてるけど……」


「駄目よ、規則なんだから。悪い情報は出ないでしょうし、心配しなくて結構よ? どれぐらいぶっ飛んでる化け物か分かるんだもの」


「不名誉な気もするんですが……」


 そんな文句を述べつつ、机の上に置かれている水晶へ手を乗せる。

 途端、五指が当たっているところから波紋が広がり始めた。半透明な水晶の中を伝っていき、徐々に文字を映し出していく。


 ……今さらだが、異世界の文字を読む上で不便はない。授業に使う教科書だってバッチリ読めた。ご存知の通り、内容は頭に入ってなかったけど。

 これも加護とやらの力なんだろう。あるいはアテナの方で何か細工をしているのか。


「えっと」


「どれどれ?」


 興味津々なヘルミオネは、横から俺を押し退ける。

 後ろにいる人達もこっそりと一瞥を向けていた。こちらの詳細については、既に知れ渡っている後らしい。


 警戒する目があり、ヘルミオネと同じ純粋な興味を向けてくる者もいる。集団が苦手な身としては、どっちだって似たようなもんだけど。


「うわ、さすがねえ。ほとんど測定不可能じゃない。最高ランクぶち抜いてるんですけど」


「具体的にはどんなのが――」


 水晶の中を覗こうとした瞬間だった。

 表面にヒビが入り、文字が読めなくなったのは。あれ? まずくないですかコレ?


「……壊れた?」


「加護の情報を処理しきれなくなったのね。ま、起こられたりはしないと思うわよ? 代替品をさがすのに協力を求められるかもしれないけど」


「つまり怒られると」


 心の底から事故だと主張したい。

 しかし集まっている人々からは、またかよ、という声が聞こえ始めている。どうやら水晶が壊れるのは、珍しい出来事でもないようだ。


「木っ端微塵になったわけじゃないし、計った情報は摘出できるでしょう。受付の人に渡してくるから、貴方はここで待ってて頂戴」


「分かった」


 我ながら動物みたく頷いて、人の壁に消えていく彼女を見送る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ