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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第二章 学園の日常
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11

「時々ね、あの子が言うのよ。私の名前は何なんでしょう、って。だから個人的に探してみたんだけど、手掛かりなんて全然なくって」


「だから、俺に手伝ってほしいと?」


「概ねその通りよ。アタシがこれ以上かかわると、神殿の方から怒られそうでね。預言官の個人情報って、部外者は探っちゃ駄目だから」


「その点、俺だったら多少の無茶でも目を瞑ってくれる?」


「そういうこと。神殿に住むんだったら、彼女の父親とも会えるでしょうし。……悪い意味でまともな人じゃないから、注意してね?」


「――」


 前傾姿勢で確認を求めるヘルミオネ。俺の視線は彼女の目から、自然とその胸元へ落ちていく。

 シビュラほど大きくないとは思っていたが、机との間に挟まれた果実は強烈な存在感を放っていた。もっとも本人は無意識にやっているようで、こちらが沈黙したのを訝しむだけ。


 第一印象は大切だと言うし、俺は全力で頷いて平常を装う。……過剰なリアクションをしている段階で、罪を告白している気もするが。


「ま、任せてくれて問題ないよ。シビュラの本名、きっと明らかにしてみせる」


「期待させてもらうわ。――じゃあもう一つ、これは別件なんだけど」


「うん?」


「生徒会長、やってみない?」


 目が点になった。

 時間を置いて首を横に振る。学園の全体像すら把握できていないのに、生徒の代表なんて務まるもんじゃない、と。


「何も実務までしろとは言わないわ。名前を貸してくれるだけでいいの」


「ど、どういうこと?」


「アリストテレス学園の生徒会長はね、神級の神子じゃないと務まらないのよ。でも在籍中の生徒で、神級は貴方のみ。だから今、会長席は空いててね」


「不都合とかは、やっぱり?」


「もちろんよ。生徒会が発足できる学生ギルドも、ここ数年潰れたまんまだし。ちなみに私達がいるここが、生徒会ギルドの拠点」


「……掃除ぐらいはしなよ」


「あはは、面倒くさくってねえ。シビュラ辺りなら、喜んでやってくれそうな気がするんだけど」


 確かに。彼女、他人の世話をするのが好きそうだし。


 しかし生徒会長か。名前を貸すぐらいだったら問題ないけど、それで終わらせるのも無責任な気がする。関わるなら、きちんと自分にやれることをしたい。


「時間を貰ってもいいかな? 数日中には返事を聞かせられると思うから」


「いいわよ。あ、じゃあせっかくだし、大迷宮の方でも見学する? アンタなら自分の身は守れるでしょうし、ここ最近は強力な魔獣が出たって噂もないし」


「い、いやでも、シビュラと神殿の方で勉強を――」


「あの子にはアタシから言っておくから! ギルドで活躍したりしたら、喜んでくれるでしょうしね」


「……完全に行く前提だね」


「観念なさい」


 差し伸べられる、ヘルミオネの手。

 仕方ない、何事も経験だ。アテナが今朝向かっていた理由も、本音の部分では気掛かりだし。昼間の人狼の件だってある。


 握り返すと、彼女は満足げに頷いてくれて。

 浅ましい本能は簡単に見惚れてくれた。……ああ、初日でこんなにも美女と知り合うなんて、なんだかこの先が心配である。


 ゼウスの加護、恐るべし。

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