表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第二章 学園の日常
18/99

8

「まあヘルミオネさんだったら、ユキテル様に近付いても問題ないですよ。とっても綺麗なんですから、気に入ってくれると思います」


「ふ、ふん、冗談で褒められても嬉しくないわよ」


「ええっ、お世辞じゃないですよ? 私、ヘルミオネさんは学園一番の美少女だと思ってます!」


「そ、そう?」


 満面の笑みで頷くシビュラを見て、ヘルミオネの方も満更ではない様子。篭絡されている現実には気付いていないらしい。


 ふんっ、腕章の美少女は胸を反らしながらも、頬に浮かんだ喜びを隠せていない。なるほどなるほど、褒めてしまえば簡単に攻略できるのか。

 絡まれた時は実行しよう。美しい女性が喜んでいる姿は、見るだけで幸福にしてくれるものだし。


「――って、話題が脱線してるわよ! アタシは転入生の方にも用があるんだから!」


「つまり愛の告白ですね。ああ、先を越されてしまうなんて……」


「いい加減にしなさいよアンタ!?」


 でもやっぱり、シビュラは余裕たっぷりだった。

 これ以上は敵わないと結論したのか、ヘルミオネは俺の方に身体を向ける。父親のアキレウスと同じように、他者を威圧する眼差しを。


 しかしよく観察すると、彼女の方は趣きが異なっている。

 見る者を勇気づけるような優しさ。シビュラが包容力を感じさせる女性だとすれば、ヘルミオネからは情熱的な活力が伝わってくる。


 その容姿も相まって、男性陣の人気は高そうだ。朝の雑談でも、確かに彼女の名前は出ていたし。


「貴方がユキテルね。神級の神子であり、ゼウス様の加護を持っていると」


「あ、うん。まあ借りものだけどね」


「加護なんてみんな借りものよ。……試しに見せてもらってもいい?」


「どうぞどうぞ」


 減るものじゃないし。あとシビュラの言によると、ヘルミオネもゼウスの加護を持っている。仲間意識のようなものは、ちょっぴりと感じていた。


 俺が袖を動かすのに合わせて、彼女の細い指が手首を掴んでくる。急ぐことを強いる乱暴な扱いだけど――白磁のような肌に見入って、非難することを忘れてしまう。


「やっぱり私と少し違うわね……英雄級と神級の壁ってところかしら」


「ヘルミオネさんのは、どんな?」


「これよ」


 言って、こちらと同じ部位が露出する。


 鷹……ではなく、白鳥らしき鳥があしらわれている紋様だった。他に目立つ差異といえば、俺の方にあった雷。ヘルミオネの場合は本当に白鳥だけで、シンプルな構成となっている。


「なんで白鳥?」


「うちの祖母がゼウス様の子を身籠ってね。祖母は祖父にぞっこんだったんだけど、まあゼウス様も変身したりするもんだから、気付かないうちに、ね」


「ああ、聞いたことある。お祖母さんの名前、レダって人でしょ?」


「あら、やっぱり有名なのかしら?」


「――うん、まあ」


 こっちの世界で聞いたわけじゃないんだけど。


 白鳥のレダ――ゼウスが手を出した人妻の一人だ。もともと彼女は貞淑な妻だったとされるが、どうしても手に入れたいゼウスがある方法を使って籠絡する。


 それが変身。レダは沐浴の際に白鳥と触れ合っていることが多く、ゼウスはその白鳥に混じったらしい。

 お陰で彼女、人間でありながら卵を産むというトンデモ体験をしていたり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ