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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第二章 学園の日常
14/99

4

 天啓に従って、大地を穿つ巨神の拳。

 十メートルほど先にぶち込んだ一撃は、確かな手応えを感じさせてくれる。どうもこっちの感覚と繋がっているようだ。


 再び仲間がやられた所為か、人狼達は狼狽している。退くべきか否か、示し合せているようにも感じた。


 逃げてくれるなら結構。こちらから追い打ちする必要はあるまい。

 だが、仕掛けるなら――


「左!」


 ミサイルよろしく射出された拳は、木々の断裂音を響かせるだけ。


 外した。身代わりになった木の幹は根本から折れ、肝心な標的はどこにもいない。

 だが分かる。一体が囮となり、他の戦力をすべて投じて挟撃しようとしていると。他に伝わってくるのは決死の二文字だ。


 何が人狼達を狩り立てているのか、部外者の俺にはてんで分からない。ゼウスの加護を危険視しているのかもしれないし、別の何かに追われている可能性だってある。


 もちろん。

 どっちにしたって、関わりのないことだが。


「っ――!」


 左右から飛び掛かる、合計四体の人狼。

 視界の中に現れた時点で、こちらの勝利は確定したも同然だった。


 ねじ伏せる。

 彼らよりも早く、百腕巨神・ヘカトンケイルの一撃を滑り込ませる。


 聞こえるのは獣の嗚咽と、地面が太鼓のように打ち鳴らされる轟音。百腕の名に相応しく、雨に似た勢いで力を振るう。


 残るのは静謐な空気だけ。


『はい、お疲れ様です』


 それと、まるで他人事みたいに念話を送ってくるシビュラだった。

 身体に残っていた緊張感を解いて、彼女の声に耳を傾ける。……勝手に去ったことへ、文句も一つでも言いたくなったりはするけど。まあ、我慢我慢。


「これで授業は終わり……かな?」


『ですね。いやー、避難しておいて正解でした。私と先生が残ってたら、ここまで神子様も暴れられなかったでしょう?』


「かもね。でもアキレウス先生とか、大丈夫そうじゃない?」


『そりゃあ先生は大英雄ですからね。でも、私は不得意なのです。――いいですか、神子様? 貴方が守ってくれないと駄目なんですよ?』


「分かりました、お姫様」


 お返しに黄色い声が飛んでくるが、黙って聞き流すことにした。

 そういえば動かない人狼達はどうすればいいんだろう? 結界がどうとかアキレウスは話していたが、だからって放置するのも無責任な気がする。


「お、片付いたか」


「うわっ」


 背後から、ひょっこりと現れる担任教師。


「んじゃあ戻るぞ。人狼の始末は神殿騎士がすることになってるからな。……でも、コイツらが現れたことは他言無用だぜ?」


「構いませんけど、理由を聞いてもいいですか?」


「外野から余計な茶々を入れられたくねえからだよ。結界で学園近郊の森が覆われてから、人狼なんて魔獣が出てくるのは珍しいからな。上も驚いてるだろ」


「……あの、そもそも魔獣って何なんですか? 俺は、その、東から来たもので」


「ああ、知らねえのか。んー、そうだな、かつての神と悪魔が争った時の名残っつーか。魔王の肉片から生まれた、って噂の化け物だ」


「魔王?」


 ギリシャ神話にそんな称号あったっけか? と怪訝な顔付きを教師に向ける。

 当の本人は意外そうな顔をしていた。どうやら魔王とやらは、この世界でかなりメジャーな存在らしい。

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