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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第二章 学園の日常
13/99

3

 歩いている間、ついついシビュラに横目を向ける。

 彼女も当然ながら運動着だ。故郷の感覚で言ってしまえばジャージ。こちらは制服と異なり白一色で、汚れが目立たないか心配になってくる。


 もっとも、個人的に気掛かりなのは別だった。


 気を抜いたら自然と、シビュラの胸元へ視線が吸い込まれてしまう。……やっぱり登校時に実感した通り、大きい。クラスでも一番じゃないだろうか? 人気が出るのも納得である。


 歩くたびに主張を繰り返す文句なしのスタイル。肩まで伸びる青みがかった黒髪も、木漏れ日を受けて光沢を放っている。


「……ふふ」


 視線に気付いたらしく、彼女はまた抱き付いてきた。教師がそこにいるんですけども?

 タイミングよくアキレウスが視線を向けるものの、特に注意はしてこない。シビュラはそれを好機と見て、腕の力を強くしてくる。


「――積極的だね」


「そうですか? 貴方の預言官として当然の義務かと思いますけど」


「ならいいけどさ……」


 いや駄目だろ。そりゃあ美味しいのは認めるけど、最低限のメリハリは必要だ。

 抜け出そうと試みるが、意外にシビュラの力が強い。諦めて幸せを味わった方が、手短な解決策になりそうだ。


 お陰で彼女は満足そう。クラスメイトに見られたら嫉妬が飛び交いそうだけど。


「――っと、ストップだお二人さん」


「先生?」


「面倒な客人がいるぜ。四、五、六……全部で八体の人狼だな。ボウズに仲間がやられたから仕返しかね?」


「あの、ここ学園の敷地では……」


「気にすんな。森の外には結界が張ってあっから、他の生徒に危害が及ぶことはねえよ」


「つまりここは危険だと」


 警戒心ゼロで歩いていた自分を叱りたい。

 しかし人狼の姿は一匹も確認できなかった。どれだけ視線を凝らしても、隅々まで緑で覆われている。


「失礼ですけど、本当にいるんですか? 人狼」


「ああ。加護の使い方が分かりゃ、ボウズも掴めるようになるだろうぜ。――じゃ、さっそくその使い方だが」


「あ、はい」


「一回発動させてるみてぇだし、そんとき出てきたモノを想像しろ。ヘカトンケイル、って叫べばより確実に出てくるぞ」


「さ、叫ぶんですか」


 冗談なのかと思いきや、アキレウスは真顔で頷いていた。


 叫ぶなんて恥ずかしい。神子達が全般的に行っているんだとしても、自分の価値観はちょっとやそっとじゃ分からないものだ。くそ、もっと記憶を消しといてくれれば良かったのに。


「――うん?」


 悩んでいると、知らないうちにアキレウスが消えている。シビュラの姿も同様で、完全に取り残されてしまった。


『神子様、聞こえますか?』


「し、シビュラ?」


『はい、貴方のシビュラです。いま私が持つ加護を使って念話しているのですが、違和感はありませんか?』


「テレパシーってやつ? うん、大丈夫」


『では戦闘を開始してください。既に一頭、全速力で近付いています』


「え」


 忠告は意味をなさない。

 聞いた直後には、頭上を巨大な影が覆っていたのだから。


「っ……!」


 言葉にする暇もない。

 頭の中で描くのは純然な力。闘争本能に近い何かが、身体の芯を熱くする。


 一撃だった。


 空中から襲い掛かる人狼を、無数の腕が容赦なく殴りつける。アキレウスさえ超える巨体の持ち主は、小石同然に吹っ飛ぶだけだ。


 森がおののく。巨人の一撃をぶち込まれた人狼が、攻撃するリスクをその身に刻まれた。

 それでも、囲んでくる敵意は撤退を選ばない。静寂の中に溶け込んで、徐々に包囲を狭めてくる。


「――なるほど」


 アキレウスの言った通りだ。人狼達がどこに潜んでいるか、手に取るように理解できる。

 研ぎ澄まされた第六感。加護の使用方法についても、同じ感覚で理解した。

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