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異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第二章 学園の日常
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1

 職員室の光景は、これといって新鮮味がない。――きっと、故郷で見た光景なんだろう。薄っすらと情報は残っている。


 机が無数に並んだ部屋の中で、忙しそうに動く先生達。こっちに構っていられる余裕はなさそうで、俺もシビュラも部屋の片隅で待機させられている。


「……アキレウス先生って、どういう人?」


「意外と真面目な方ですよ。昔は一匹狼って感じだったらしいんですけど、娘さんが生まれてからですかね? 大人になったって聞きました」


「娘?」


 どういうことだ? ギリシャ神話だと、アキレウスには息子がいた筈だが……。

 もしやこの世界、神話の登場人物が出てきても完全に同じではないのかも。アテナの方が同一人物に思えるが、彼女は神。普通に暮らしている人間と一緒にするのは難しい。


「ヘルミオネさん、っていうんですけどね? 結構綺麗な方なんですよ。神子様と同じく、ゼウス様の刻印を持っていらっしゃるんです」


「刻印って、同じものを複数の人が持ってるの?」


「出来栄えは違いますけどね。刻印には神級と英雄級、無銘級の階級に分かれてまして。ゼウス様の刻印と言っても、神級か英雄級の二つがあります。ちなみに神子様はオリジナルの神級、ヘルミオネさんは英雄級の刻印になりますね」


「……神級の刻印って、俺の他には?」


「持っている生徒はいない思いますよ? アキレウス先生も英雄級ですし」


 アテナの説明通り、突出した力というわけか。

 シビュラの説明に納得していると、肝心の先生がやってきた。気だるそうに大欠伸をして、出席簿らしき物を小脇に挟んでいる。手には運動着らしき服を持っていた。


「うっし、んじゃ行くか。あ、自己紹介の内容だが、多少は気ぃつけてくれよ?」


「具体的には?」


「挑発っぽいことだけ言わなけりゃあいいさ。うちのクラスには無銘級が多くてな、アイツら無駄にプライドだけ高いから扱いに困るんだよ。頭下げろとは言わんから、少しだけ控えめにな?」


「了解しました」


 俺達は教室を出ると、左手にある階段へと向かう。既に予鈴はなっており、生徒達の姿はほとんどない。いたとしても、急ぎ足で教室に入ろうとする者だけだ。


 ……にしても、校舎の中は本気で広い。宮殿とか城を改築したんじゃないか、と思えるぐらいだ。廊下にしたって調度品が置かれていたりと、注がれた資金の規模を匂わせる。


「今さらだけどシビュラ、俺以外の神子ってどういう立ち位置なの?」


「階級にもよりますけど、基本的に国の代表ですね。無銘級の神子とかは、スパイとして送り込まれている場合もありますけど」


「じゃあこの町って、政治的には中立だったり?」


「ふふ、さすが神子様ですね。この都市国家、オンファロスは中立です。だから各地の神子を育てる学校が作られましたし、今も大勢の神子がやってくるわけです」


「だから、適度な圧力をかける必要があると」


「そうなりますね。……本当にすみません、ご迷惑をおかけして」


「いいって。困った時はお互い様、でさ」


「神子様……」


 なんだか、また羨望の眼差しを向けられている。別に大したことじゃなかろうに。

 階段を上り終えると、一階と同じ廊下が続いていた。駆け込み登校している生徒の姿も変わらず、それを追うように教師達が入っていく。


 アキレウスが任せられている教室は一番手前にあった。俺だけが廊下での待機を指示され、彼とシビュラは先行して中に入っていく。


 転校? なんて始めてのことだから、柄にもなく緊張してきた。

 ドア越しに聞こえるアキレウスの声に耳をそばだてる。リラックスに使える時間はごく僅かで、三十秒も立たないうちに入って来いと呼び出された。


「ほい、自己紹介」


「はい。えっと――」


 教壇に立って、自己紹介を終えるまでは短い時間。


 終わってしまえば、緊張は簡単に解けてくれる。用意された席もシビュラの横。クラス中の好奇心が注がれる中、少女の存在だけが心を落ち着かせてくれた。

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