表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界生活は全能神の加護で!  作者: 軌跡
第一章 全能神の加護
10/99

10

「ほらシビュラ、もう終わりにして。危ないよ」


「へ? ――あ、ああ、御免なさい。つい神子様のことで夢中に」


「……それは有り難いし嬉しいけど、周りへの注意が散漫になるのはどうかと思う」


「で、ですよね」


 じゃあ、と一言挟んで、シビュラは大胆にも密着してきた。腕と腕を絡める形で。

 傍から見れば完全に恋人同士である。女性の象徴でもある胸の感触まで伝わってきて、頭の中が完全にフリーズした。


 うむ、柔らかい。あと大きい。

 異世界女性の平均サイズがどれぐらいかは知らないけど、個人的には間違いなく巨乳の部類。腕に押しつけられて変形していることも含め、とてつもなく色っぽかった。


「神子様、もしかしてこういうの始めてですか?」


「――うん、まあ、これまで女性経験はないよ」


「ほほう、それは朗報です! 神子様に私の魅力を刷り込み放題、ってわけですね! 勝ったも同然です!」


「もう色々な方向性で勝ってる気がする……」


「本当ですか!? アテナ様がライバルになりそうな気はしてたんですけど、神子様がそう仰るなら私の勝利は揺るぎませんね!」


「言っていいのかな、それ……」


 知っている限り、彼女は非常にプライドの高い一面がある。

 例えば、自慢の金髪をけなされた時。相手もこれまた美女だったのだが、アテナは彼女を蛇の怪物に変えてしまった。後に討伐する話が出た際も、積極的に協力したとか。


 今のところ、シビュラの周りに変化はない。

 聞き逃してくれたのか、あるいは普通に聞こえていないのか。……頼りがいのありそうな女神だったし、神話で語られているほど短絡的ではないのかもしれない。


「お」


 ようやく見えてくる校門。教員らしき人物が、やってくる生徒達と挨拶を交わしている。


 やけに目立つ男性教師だった。燃えるような赤い髪と、二メートルはありそうな長身。肩幅も広く、短い袖の下からは鍛え抜かれた筋肉が覗いている。


「よう、やっと来たか」


「?」


 彼は俺達を見定めると、生徒の波を掻き分けて近付いてきた。

 改めて、見下ろされることに威圧感を覚える。眼光は野獣のように鋭く、一瞬でも気は抜けない。


「おはようございます、先生」


「おうシビュラ、おはようさん。んで、こっちのボウズが新しい神子か。――ふむ」


「……」


 シビュラは平然としているが、こっちは気が気じゃいられなかった。右の手首も熱を放っており、いつでも戦闘を開始できると張り切っている。


 周囲の生徒達が視線を寄せるぐらいの切迫感。どちらが根を上げるか、根競べにも近い睨み合いが続く。

 肩の力を抜いたのは、赤髪の男からだった。


「悪くなさそうな男だな。俺はアキレウス、お前さんの担任教師ってやつだ。よろしくな、ボウズ」


 大きな手が、清々しい笑みと一緒に差し出される。

 拒む理由もなく握り返すと、アキレウスは嬉しそうに残った手を重ねてきた。差し迫った雰囲気は跡形もなく消え、しっくりと来る陽気な顔付きに上書きされている。


「んじゃあ、さっそく案内させてもらうぜ。シビュラ、ついでだからお前も来い」


「元からそのつもりです。神子様のお世話は私がするので」


「はは、気合入ってんじゃねえか」


 踵を返すアキレウス。シビュラに背中を押されて、俺は彼の背中を追い掛けていく。

 ……しかし、また随分と大御所の名前が出てきたもんだ。彼、ギリシャ神話じゃ最強を争う大英雄だぞ。まあこっちでも同じ扱いかどうかは不明だが、ただ者じゃないのは十分わかる。


 そんな人が、クラスの担任。

 異世界に来てしまったんだと、改めて実感した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ