事件前日
「ようこそ、本田くん。まあ、とりあえず座りなさい。」
少女が案内してくれた部屋には恐らく190cmはあるであろう大柄な『金髪』の男がいた。大柄な上に金髪という二重の威圧感が初めてのアルバイトの面接で緊張している僕にのしかかる。
さっき逃げてしまっていればよかった。そんな後悔をしながら再び凍りついてしまった僕を少女が変なものでも見るような目で見つめる。
「あ、あの、こ、これ履歴書、です。」
震えながら声を絞り出し、履歴書を店長に差し出す。
店長が履歴書に目を通す。履歴書の上から下まで視線が動き、最後に僕の目を見ながら
「よし!!採用!!!」
と、低い声で僕を採用することを決定した。
「明日から来れる?あと時間があるなら今日のうちに少し仕事内容について説明したいんだけど。あ、その前に何か質問ある?」
あまりの進展の早さに僕は採用が決まった喜びを感じる間もなく返事をした。
「いえ、別に。」
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採用が決まったことは嬉しいが、不安は大きかった。面接はただ履歴書を見せただけだし、なにより店長の体格と金髪が恐ろしかった。
一通り仕事の内容を教わり、店長と少女の名前も教えてもらった。
店長は神崎 剛という名前らしい、そして少女は店長の娘で名前は神崎 美崎。高校2年生で僕より一つだけ年上だ。休みの日は店の手伝いをしているらしい。ちなみに「ぺけぺけ」という店名も美崎さんが考えたらしい。
店長は意外と優しかった、仕事は丁寧に教えてくれるし、質問にもしっかりと答えてくれる。
すっかり安心した僕は1時間くらい仕事の内容を確認したあと、家に帰り。明日から始まる仕事に備えてゆっくりと休むことにした。
「ぺけぺけ」が本当はどんな店なのか知らずに...