アルバイト
アレもダメ、コレもダメ、今のもダメ。そうやって嫌いなものに×をつけるたびに僕が歩ける道はなくなっていった。今ではもう何が悪かったのかすら分からない×を避けながら辛うじて生きてるだけの日々。
×を○に変えられなかった自分の弱さから目を背けるためにパソコンの画面を凝視する。更新ボタンを連打しながら僕が今日を生き延びるための餌を待つ。
ネットは僕のように何にでもすぐに×をつける人間にはありがたいものだ。ネットでなら嫌なことがあってもすぐに今の自分との関係を断ち切れるからだ。
そうしてネットにハマる日々のなかでも×を増やし続け生きるために新しい何かを求めて更にネットにハマっていく。
しかし、いつまでもこんなことを繰り返していては×は増えるばかりだ。そして、いつの日か忘れることすらできなくなった×の山が僕に牙を剥くだろう。
そうなる前になんとしてもこの状況から脱しなければ、そう思い、僕は一つのアルバイトに応募した。
アルバイトの応募先は喫茶店「ぺけぺけ」。
店主には悪いが×だらけの僕にピッタリな名前だと思いアルバイトの応募を決意した。
面接のために店まで来た僕は扉の前で一つ大きな深呼吸をして心を落ち着けてからドアノブに手をかける