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暗殺者の森でバーベキュー(暗喩)

「太陽の森? ――生ぬるい! 今日からここは暗殺者の森と名付けよう」

「気持ちはわかるけど~、この前哨戦を突破しないと~。開催式にもたどりつけないわ~」

 船を降りて、鬱々とした森に入った大和一行……。

 青白い火球が飛んできて、大和の前髪がちょっと焦げた。避けたのになんでやねん!  

 軽口叩く先から、雄叫びを上げてスリランカ人がアゾット剣で切りかかってきた。

 森のなかは、すでに乱戦の様相を呈していた。怒号が満ちて、呪文がこだまする。

 全員、準大陸人(五大陸代表でもアトランティス人でもない者)だろう。

 せっかく潰し合いをしてくれるのに、わざわざアトランティス人は嘴挟んだりしないはずだ。

 五大陸プレート持ちが誰かもわからないので、手当たり次第に襲撃しているらしい。

 準大陸はプレートを壊しても沈みはしないのだから、気楽なものである。

「ほんま、つっかれるな~」

「数は異常に多いし、ね!」

 シドニーはナックルで襲ってくる不埒な暗殺者にカウンターを食らわせ、ルーは点滴スタンドを槍のように操って術師の鳩尾をぶっ刺した。大和のフォトンソードも唸る。

 圧倒的、物理攻撃! 魔法オリンピックとはなんだったのか……。

「ほんまめんどくさいなぁ。姐御! 一気にヤッちまってええ?」

「うふふ~、オッケー☆」

 鎌のように弔旗を硬質化させて、バッサバッサと敵を切り捨てていたアメリアが、にっこり笑って許可した。

 ほっぺに返り血がついてる。  

「はは、ローラ☆の許可も出たし、いっちょ派手にいくか!」

 シドも笑って、腰に下げていたガスボンベを引き抜いた。

 両手で放り投げてナックルで打ち抜く!  

「さぁ、マット、ジェフ! 出番やで!」

 ナックルから散った火花が、ガスボンベに引火する!   

 派手な爆発音がして、ボンベだったものから巨大な火球が二つ飛び出した。

 二つの火球は、スピンするように跳ねてシドに飛びかかり、

 ――背後からシドを狙っていたアイスランド人に体当りして弾き飛ばした。

 着地した火球の輪郭が徐々に明確になり、――二つの火球は二匹の牧羊犬に変わった。

 マット&ジェフ……魔力で作られた炎の牧羊犬である。


 シドニーの家系は代々二匹の使い魔を受け継ぎ、牧羊のパートナーとして活用してきた。

 ちなみに、本人の資質によって使い魔の属性が変わる。先代は、水属性であり、使い魔は二匹の空飛ぶイルカだった。

 シドニーも同じく使い魔を発現できるようになった歳に、牧草地で初めて発現したのだが……シドニーは一族で数百年ぶりに誕生した火属性だったのだ。

 制御がうまくいかず、二匹の炎狗がはしゃいで牧草地を駆けまわったため、牧草地が丸焼けになった。

 シドニーはものすごい借金まみれになったのだ……。

 これだけ聞くと悲劇だが、まぁ傭兵の才能があったので程なく完済した。

 問題は、その後も借金を積み重ねたことにある。

 この時の経験で、『ツケがあっても後で払えばええんやろ』という借金じゃぶじゃぶ精神をが宿ったらしい――コレはアカン。


「うっし、オージーの必殺バーベキューを見せたるで~! ヒャッハー!」

 シドは二匹の炎狗に口笛で合図し、遠くに走らせると、自らはナックルに魔力を込め始め中腰になった。

 シドニーは、この二匹を操って中継火点にし、三点を結んだ面による範囲攻撃を得意としている。

 って、あのわんこ相当遠くまで走っていったんだけど、この範囲って森がすっぽり……。

 シドニーの顔を見やって、大和は青ざめた。

 表情がイッてらっしゃる……。

 大和は叫んだ。

「総員退避ーーーーー!」

 弾かれるように、アメリアとルー、それに大和が森を駆け抜ける。巻き込まれたらヤバイ!  

 懸命に走り、森を抜けた! 転がるように飛び出て、息も荒く喘ぐ面々。

 大和が詰めてた息を吐き出し、忙しない呼吸をした途端、

 ――背後の森が派手に爆発した。

 息を呑むチームメンバー。

 爆散し、バラバラと降ってくる木くずを頭に積もらせつつ、大和はつぶやいた。

「無茶しやがって……」

 ゆっくりと首を振る様は、まるでシドニーの死を確信しているような――。


「そんなへにゃへにゃなフラグで俺を殺せると思ったか! 大間違いやでー!」

「!?」

 ヒャッハーっと、シドニーが炎狗に乗って爆発を続ける森から飛び出してきた!  

 特撮の爆発シーンだーー!?

 バイクで飛んだら、背後でどかーーんって、まさしくあれである!  

 なんだその派手なアクションは――! クライマックスにはまだ早いぞ!  

 大和からブーイングが上がる。

 相次ぐ茶番に、ルーは今度こそ呆れたように首を振った。

「そうそう。あいつが、そう簡単に死ぬわけないわよ。シドニー明日誕生日だし、この仕事終わったら可愛い女の子に会いに行くって言ってたし。大丈夫よ、ちょっと休めばすぐ元気になるわ」

「ぐわーーーーーーー!」

「シドニーが死んだ!」

「この人でなしー(棒)」

「え? えッ?!」

 畳みかけるような、ルーのフラグラッシュで、シドニーは死んだ。

 特撮のGoodEndフラグも関係なかった。だったら何だったんだよあれ……。

 いや、無自覚フラグ建てるウーマンが強すぎただけのこと。シドニーに罪はない。

 ムチャシヤガッテ……。

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