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一人UMA動物園「多分世界を救うことになるわ」

「迎えってお前のことだったのか!」

 胴の長ーい竜の背にしがみついて、大和は叫んだ。

 風圧がひどくて、吹き飛ばされないようにするので精一杯である。

 このまま、大西洋上に出てアフリカからニューヨークまで空の旅を強行するらしい。

 いくら急ぐとは言え、これはあんまりだろ!  

《喋ると舌噛むわよ! あーもう! アメリアさんのご命令がなければ、今頃アメリアさんの麗しい首筋に、私の甘い牙をつきたてt》

「おま、これ全年齢向けやぞ!」

 脳内に響く声に大和は突っ込んだ。R-18はアカン!  

 このバイオレンスレズドラゴンのコードネームは、ルーマ・ニーア。

 名のごとく、ルーマニア出身だ。安直である。これは酷い。

 この名もアメリアの名付けだが、ルー本人は敬愛するアメリアさんにつけてもらったと狂喜乱舞していた。もう好きにしてくれ……。

「それよりルー、怪我はないのか?!」

《あんたと一緒にしないで。モケーレ・ムベンベは所詮水竜、空中からフルボッコにすれば楽勝よ》

 えげつない……。大和は先ほどの怪獣大戦を思い出して、背筋を震わせた。

 哀れモケーレ・ムベンベは、巨大竜ルーの大顎に噛みつかれたり、巻き付かれギリギリと締めあげられたり、散々な目にあっていた。反撃しようとしたら、ルーはするりと空に逃げる。一方的なワンサイドゲームだった。

《それより、あなた、ちゃんとモケーレ・ムベンベの血採った?》

 おう、と応じて大和はモケーレ・ムベンベの血が入った輸血パックを持ち上げた。哀れなモケーレ・ムベンベは恨めしげにぶすくれていたが。

「勿論、……なぁ、これ俺にくれない?」

《冗談。私のご飯を横取りなんて、いい根性してるわね》

「お願いします! 何でもしますから!」

《ん? 今何でもするって……?》

「いや、言ってない! 姐さんがUFOに会わせてくれるっていうんでいいです、はい!」

《なんでそんなに焦ってんのよ……》

 フラグ立てるだけ立てて放置する女! スパーダーウーm……ルーマ・ニーア!  

 それはともかく……ルーは、化物の血専門のブラッディ・イーターである。

 今でこそ、東洋の長い竜の姿をしているが、正体は人間の女の子だ。

 ルーの一族は、人間ながらも、化物の血を輸血するとその化物に変身することができた。

 一人UMA動物園というアダ名の由来である。

 それも必要に迫られてのことだ。ルー達は化物に変じて化物と闘いながら、負けた化物の血を捕食する――といった方法で細々と命脈を繋いできた。

 一族の始祖が吸血鬼に血――じゃなくて、血の中のナニカを奪われて以来、一族はそれを補う様に他種の血からナニカを補給しないと、冬眠してしまうらしい。

(まぁ、姐さんの血まで欲しがるのは、どちらかと言うと愛情表現なんだろうけど……)

《? ん? 今なんでもするって……?》

「いや、言ってない! 姐さんがUFOに会わせてくれるっていうんでいいです、はい! ……って俺、マジで言ってなかった! あぶねー、はめられるところだった!」

「さっきから、何を過剰反応してんのよ……」

 無意識かよ! 普段からそれっぽいから、これも意味深なアレかと思ったじゃねぇか!  

 大和は、内心ツッコミを入れた。声に出したら藪蛇になりそうだったからだ!  

 ……まぁ、姐さんは人間だ。だから、ルーが姐さんの血を欲しがるのは、そういう嗜好なんだろう。別にさっきからしている意味深な会話と関係はないはず! ルーの一族の愛情表現は、血を交わすことだと聞いたことがある。まぁ同性相手はどうなんだと思うが。

《……まぁいいけど。それより、ニューヨークに着くまで、アメリアさんからの依頼を説明するわ。作戦の決行は明日だから》

「な……!」

《どうせ、五輪選考会場がジャックされて各国首脳が人質に取られたなんて知らないでしょうし》

「ん……!」

《あと、アトランティス人って実在したのね。アトランティス大陸が北大西洋に浮上したわ。上空通過するからよく見てなさいよ》

「だ、と……!」

《器用な相槌の仕方ね……》

 大和は、情報の鈍器でぶん殴られた気分だった。

(アトランティス? いや、それは所詮御伽話のはずで……えええ?!)

 大和の頭上にはぴよぴよとひよこが回っているが、マイペースなルーは淡々と説明を続けた。

《多分、世界を救うことになるわ》

(世界を救うって一体……!?)


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