プロローグ
ここは何処だろう……。
砂、樹木、水。
全てが揃っている場所を俺は知らない。
ここはいつもと違う世界なのだろうか。
それにこの体小さいし……。
俺、高校生だったはずなんだけど……。
今前に現れた物も犬に羽生えてて、大きいし……。
こんなの見たことないんだよね。
――ガルル
犬の口に光が集まり始めた。
光は集まり、球体を作っている。
ヤバい気がするな……。
犬は口に溜めた光の球体を発射した。
球体は俺の横を通り過ぎ、背後の木々を薙ぎ倒した。
逃げよう……うん逃げよう。
1秒で決断し、1秒で振り返り、1歩で絶望した。
さっきので逃げる場所壊されちゃってんじゃん。
犬は再度光を集め始めた。
ヤバい。どうする……。
戦う?無理無理。まず武器がない。
逃げる?ダメだ……。道がない。
絶対絶命大ピンチ……。
これ絶対死ぬ。…………死ぬ?
嫌だ。それだけは嫌だ。
もしここが違う世界だとしたら、俺にも能力があってもいいはずだ!
「出でよ!じゅう」
出てきた……。マジで出てきた。
ならこれで犬を……って弾がないし!
――とりあえず撃つ
「止まれぇぇぇぇ!!」
狙いをつける。
トリガーを引く。
――それで殺せる
銃から出た紫色の弾丸は犬の身体を貫いた。
犬の身体に小さな穴が空いた。
血はでない。
で……た?弾は出た。
犬も止まった。
けれど、血も出てない。
――グ……グルル
おかしいことだらけだが、今はこの犬をどうするか考えなきゃいけない。
「こっちです」
後ろから声が聞こえるので振り返ってみると女の子が手を振っていた。
「早くしないと死んじゃいますよ」
「えっ……でも……いやわかった。ついていくよ」
一瞬さっきの実験のことが頭に浮かんだが、犬を倒す方法もわかんないのでとりあえずついていこうと思った。
「こっちです」
少女に導かれ、森の中を走りに走った。
少女は足が速いらしく、何回もおいていかれそうになったが、そのたびに少女はスピードを緩めてくれた。
森を抜けた頃には犬の影も形も見えないところまで逃げていた。
だけど、なんで助けてくれたのだろうか。
わからない。俺に声をかけてきたということは何らかの目的があるってことだと思うんだけど……。
「撒けましたね。では……あなたが知りたいことを教えてあげましょう」
「知りたいこと?」
「ここが何処なのかと私があなたを助けた理由です」変だ……。
俺を助けた理由が知りたい点については察しが良ければわかるかもしれないけど、俺が今この地に来たらしいことについてはどんなに察しが良くてもわかるはずがない。
「――なぜ、私があなたがここにさっき来たことがわかる。と考えていますね」「…………!」
「それには理由があります。順を追って説明しましょう。まず、ここはある特定の人の死後の世界であり、さまざまな神が国を治めています。次に、今のところ死者は私とあなただけです。そして、このことは私とあなたしか知りません。統治しているのが神ということもです」
「つまり、この世界には3種類の人間のようなものがいるわけだ。1つは俺たち死者。1つは神。1つは今、住んでいる所謂原住民というわけだ」
「察しが良くて助かります。ここからが本題です。私があなたを助けた理由です。」
少女は話している俺の目から一度として目を離さなかった。
これだけで、この話が事実で重要なことがわかる。
「私はあなたと協力したいと思っています。まだ、話してはいませんでしたが、新しく人生をやり直す、つまり転生する方法はあります」
「転生……。神に頼み込むとかか?」
「いえ、この世界の浄化です。今、この世界はさまざまな災いに包まれています。これらを止めるのです」「協力したいというのは……」
「はい。一緒に世界を浄化しましょう。」
「嫌だと言ったら?」
「…………ッ」
少女は刀を一瞬でだし構えた。
断れば命はないということらしい。
俺も転生したい。
その気持ちはある。
「じゃあ、仕方ない……。よろしく――」
「お願いしますね?」
少女の表情とその口調は俺を信じていなかった。