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第1章 出逢い
ここからは千鶴が奏志さんと出逢ったときのことです。
はぁ・・・はぁ・・・
「お母さん・・・」
これは、二年前の夏の出来事。
まだ、中学生だった私は突然いなくなってしまった母を探していた。
父は私が生まれてすぐに、借金に追われいなくなってしまった。
だから、今日の今日まで母と二人きりで生活を送っていた。
いつも通り学校から帰ると、玄関まで母が来てくれるのに、今日はそれがなかった。
その時から何かが変だということに気が付いていた。
リビングに行くと電気は付けっ放しだった。
何が何だか分からずにいると、どこからか水の音。
これはバスルームからだ・・・
嫌な予感がして、恐怖を抱えたまま急いで向かった。
でも、そこにはお母さんの姿は全然なくて、ただ、出続けた湯が溢れ出しているだけ。
一旦、湯を止めて今度は部屋中を探す。
どこにもいない。
母がいないこと以外は恐ろしいほどまでに普通のいつもの家。
最終的にまたリビングに戻ってきてしまった。
すると、今まで気づかなかったが、机の上に置手紙が一枚。
『行ってきます 母より』
何処へ・・・?