序章 2
「おかえりなさい、千鶴」
「た、ただいまです・・、奏志さん、また誰か人助けですか・・?」
さっき私の横を走っていった少女は紛れもなく、奏志さんの家から出ていた。
そうでなくとも、ここ等へんにいるってことは、間違いなく奏志さんが招いた客だ。
「そんな悲しそうな顔をしなくとも、わたしが愛しているのは貴女だけですよ」
いつも言ってくれる言葉。それは本当ですか?
◆
「今日はいつもより遅く感じましたが、何かやっていたのですか?」
いつも通り縁側でお茶を飲みながら話をする。
「はい、今日は日直だったもので・・」
「日直? それは、千鶴がやらなければいけないものなんですか?」
以前、奏志さんは高校には行ったことがなかったと言っていた。
小学校や中学校は一応、義務教育なので行っていたらしいが、大半は休んでいたという。
多分、まともに学校生活を送ってきていないのだろう。
「日直は、その学校によってさまざまですけど、私のところは日替わりでやっているんです」
「ほぉ・・、何をするのですか?」
一回お茶を啜って話始める。
「黒板を消したりだとか、日誌をつけたり・・・、まぁクラスの雑用係みたいなものですね」
「・・・なんか気に食わないですね、雑用を押し付けられる仕事とは」
もうすでにお茶を飲み終わっている奏志さんは、縁側に横になって私と話をする。
「それでも、やるのは皆同じですからね」