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第1話〔ロケットショット〕



……………


勇気


……………


勇気が欲しい


……………


勇気があれば僕は


……………


___


……………


















「む………ここは?」


ヒンヤリと冷えた床に起こされた僕は状況を理解出来ずに居た。立ち上がり周囲を見渡す。周りは白一色の空間が広がっており特に何も無い。だが、目の前にはリスポーン地点みたいなサークルがある。


………


まぁサークルがあった所で何も理解は出来ないけどね…そういえば学生である僕は死んだはずだ…上手く思い出せないけど…確か大学受験前に...何かと衝突して死んだ気がする…


その何かは大体予測はつくだろう。


そうトラックだ。多分。


ここで僕は自分に置かれた状況を推測する。


おそらく僕は漫画や小説で言う所の『異世界転生』をしたのだろう。僕は異世界転生物は良く読む方だ。


となると…ここは…なんか……女神とかと会話して………なんか…こう…特別なスキルとか…貰って……異世界に転生する…為の…場所だと思う…知らんけど…


でも肝心の女神が居ない。どうなってんだ?女神がいなければ話になら無い。


………


あのサークルに行けばいいのか。


と、僕の感が囁いている為歩き出した。


その瞬間。


「おめでとうございます!貴方は異世界転生をする事になりました。」


瞬きしたと同時にやたらとツラの良い女神様が現れた。女神様はメチャメチャに嬉しい事でもあったのか、とても口角が上がっている。なんかこっちも笑顔になっちゃう。そんな事を考えている内にも女神様は話を続ける。


「サクマさん。貴方には異世界に行き、世界を救って貰います。」


サクマとは僕の事だ。本名『千田 咲真』これが僕の名前。良い名前だと自分でも思う。そして異世界転生の件だが大体予想はついてる。だが詳しくは理解してない僕はいつの間にか眉をひそめていた。


「あっ…申し遅れました。私は女神…『ノレシファー』と言います。では本題に戻りましょう……何故死んだはずの貴方がここに居るのかと言うと異世界を救って貰うためです。」


………むぅ…さっきと同じだよ………


「ですが貴方の行く異世界は常に同種族同士や異種族同士での争いが耐えない世界。難易度で表すとSSSクラス。とても普通の人間では攻略する事は出来ない。でも安心してください。」


「貴方には特別処置として『特典』を付与致します。」


特典…か。何か特別なステータスが突出していたりチートスキルなどと言った物か。

それはありがたい。難易度SSSクラスだもんな。


どんな特典が貰えるんだろうか…


コピー能力とかだと嬉しいな。某ピンクの悪魔みたいな事やってみたいし。他には………


………


はぁ………思いつかない…


こーゆー時に限って頭が回らないんだよなぁ………


これから貰える特典に期待の胸を膨らませてる僕に告げた女神の言葉は衝撃だった。


「貴方に授ける特典は固有スキルの強化です…固有スキルとはその人の魂に刻まれた切っても切り離せない存在。」


「そして貴方の固有スキルは…」


「『オーバーカム』…です!」


『オーバーカム』…?オーバーは確か超えた。だとか、溢れた。みたいな意味でしょ……カム…ってなんだ……?


………


ああ……勉強したはずなのにな……


「ふふっ…そう不思議そうな顔をしないでください。具体的に教えてほしいのでしょう…しっかり教えますから。」


………


「貴方の固有スキル『オーバーカム』は簡単に言いますと………常時発動する事によりどんな状況でも成長をし続ける事が可能です。」


「そして特典としてそのスキルを強化する事によってもたらされる効果は絶大です。」


「呼吸をする度数多のチートスキルを即座に獲得しLvも上限の99Lvを突破した100Lvまでジワジワと上がります。それに加え筋力や魔力も上限を超え上がり、属性耐性も同じく上がり続けます。」


「つまり…貴方が生きてる限りずうっと成長をする。………というわけでございます。」


………え


強すぎね………てかステータスやLvがある………ゲームの世界なのか…?


………まぁでも難易度SSSクラスだしな…この位じゃあないと攻略出来ないって事も加味すると案外…普通なのかもしれない。


「……ふむ……理解出来た様子なので早速異世界に転生をしても宜しいでしょうか?」


転生に拒否する理由なんか無い。


「はい。準備完了です。」


「ではそのサークルに入ってください。」


言われるがままにサークルの中央に立つ。


「では………」


「いってらしゃいませ♡」


女神様の嬉々とした声と同時に僕の体は光に包まれた。













チュンッ…チュンッ…


鳥のさえずりが聴こえる。繁殖期かな?


目を覚ますと一面に緑が生い茂った森だった。リスが木を登り、鹿が草食ってる。森だ。森だね。


僕は………いや………せっかく新たな自分に生まれ変わったんだ………今日から一人称は『俺』と行こうか!


俺は起き上がり周囲を見渡しながら歩き出す。


さて…特典付きの異世界転生したのなら、まず!


ステータス確認だよな!


………


ええと……確か漫画や小説によるとステータスを見るには何か言った方がいいんだったよな…


「ステータスオープン!」


すると自身の目の前にゲームのようなスクリーンが表示された。


―――

千田(チダ) 咲真(サクマ)

Lv:1


HP:75

MP:46


___

___

___


固有スキル

オーバーカム:自動的に成長する事ができる。

―――


あれ…?なんでLv1なの…?


あっそうかスキル発動してなかった………俺ったらおっちょこちょこちょいなんだから。俺は握った拳を前に突き出しスキル名を叫ぶ。


「オーバーカム!」


~スキル『オーバーカム』が発動されました。~


どこからともなく聞こえた声と同時に身体の芯から暖かくなるのを感じる。これは能力が発動している証拠なのだろうか。ひとまずはこの森を探索してステータスが上がるのを待とう。


俺は草木が少ない道を通り先へと進み出す。道中に必死こいてメスにアピールをしてるオス鳥が居た。


………


俺は足を止めちょっとの間眺めていたのだがどうやらオスは振られたらしい。なんかこっちまで悲しくなってくるよ…


しばらく進んでいると草の茂みからモンスターが現れた。


これは…スライムだ!


良し!俺の初勝利を見せてやろう!


何をしたらいいのか分からない俺はボクシングのような構えをとってしまう。


「くッ…来るならかかって来い…!」


さっきまであんなに気張っていたのにいざ

本番となるとひよってしまう。俺の悪い所だ。


だが今の俺には少なからず…


『勇気』


がある!


だから………


なんとでもなるはずだ!!


「ウオオオ!!」


雄叫びを上げスライムへと猪突猛進をカマし蹴り飛ばした。


するとスライムはなんと蒸発しだした!


「ぁえッ!?」


思わず変な声が出てしまう。俺ってこんなに強かったけぇ?そんな疑問が脳内を巡るが直ぐに謎は解けた。


そう『オーバーカム』の力だ


俺は直ぐさまステータスを表示させ下へとスクロールする。


―――

千田(チダ) 咲真(サクマ)

Lv:64

___

___


___

___

___


通常スキル

フレイムストライク:拳や足に熱を付与する。(肉が焦げる位)

ファイアーボム:炎属性の炎弾を放てる。

ストーンパス:近くの石を操れる。

___:___

___:__


特殊スキル

洗脳:相手の意思をコントロールできる。

契約:自身よりも弱い生命を下僕にできる

召喚:自身の下僕を無条件で召喚できる。

生贄:生命を生贄に捧げ自身を強化できる

浮遊:空中を自在に動ける。

テレポート:テレポートできる。

___:

___:


固有スキル

オーバーカム:自動的に成長する事が出来る。

―――


さっきの攻撃はフレイムストライクかな…?なんか下の方に物騒な物があったけど…まぁ今はいいや。


俺の固有スキル『オーバーカム』。特典のおかげがあってかメチャメチャハチャメチャに強いな。ちょっと歩いただけでLvが上がるし色んなスキルを覚えてる…これは…念願の…


俺TUEEEEが出来る!


て事は!て事はだよ!



おい!そこの女!いい身体してんじゃん!ちょっと来いよ!


きゃーー誰か助けてー!


そこまでにしとけ!いい加減にしないと、この俺サクマがお前を殺しちゃう…ぜ!


なっなんだお前!ひえぇぇぇ!


ありがとうございます!お礼として私と付き合ってください!


ハッ!悪いな俺は誰ともつるまねぇんだ。


キャァァーー!!かっこいいぃぃーーー!!濡れちゃうぅぅぅ!!



的な事が起きちゃうかもぉ!


そーゆー妄想をしている俺の顔はとても人には見せられない表情をしていた。


その時だった。


「やっやめてくださいぃっ!誰かっ助けてっ!」


どこかで助けを求める女の子の声が聞こえた。


これは絶好のチャンスッ!そう思った俺は声のする場所へと走り出した。





「追い詰めたぞぉ!」


「おい!こいつに目隠しを付けろ」


「分かりやした!兄貴!」


俺は木の影から一部始終を覗いていた。

状況を説明すると男二人は少女を攫おうと押さえつけている。良くないなぁ。こーゆーの。


………


許せんッ!この俺!サクマが絶対に救ってみせる!


まずは目隠しを少女につけた舎弟から倒そう。そうだな…試しにもう1つのスキル、『ストーンパス』を使ってみるか。


俺はバレないように木から体を出しスキル名を呟く。


「ストーンパス…」


すると周囲の石が一斉に舎弟の男目掛け飛び出した。


「ぅぐわっ!」


全身に石の猛凸をくらった男は気絶しぶっ倒れる。


「だっ、誰だ!」


ズサッ


音を立てて身を乗り出す。


「俺は貴様を倒す者だッ!」


そう言葉を伝え指を指した。


………これ、


とても恥ずかしい……前世でこんな事した事なかったからなぁ………


いかんいかん。今はあの女の子を助けないと。俺は唾を飲み込み拳を握る。


「男1人倒したからって調子に乗りやがってぇ!」


生き残っているもう1人の男は背中の剣を取り出し突撃してきた。俺の態度に怒っているのか、仲間がやられた事に怒っているのかは分からないが。かなり無鉄砲な動きだ。


今度のスキルは先程の一連の流れのうちに習得した新たなスキル、


『ストーンブレイカー』を使用した。


この技は拳を岩で固める事ができる。つまり攻撃力がアップするってわけだ。良いね。


「お前も切り刻んで沈めてやるぁぁ!」


何故そんなに怒ってるのかは分からないが声を荒らげた男の顔にはどこか焦燥感を感じた。だが俺の事を殺そうとしてる事には変わりない。ここでヤラなければヤラれる。


そう思った俺は1歩足を踏み出した。走ってくる男に対して簡単に対処されるような大振りのフックを放つ。


だが運良く顔面にクリーンヒット。モロに食らった男は悲鳴あげる間もなく地に倒れた。


「ふぅ…」


戦闘を終えた俺は1呼吸した後ストーンブレイカーを解除しダークエルフの少女へ近付く。


「終わったよ…今目隠しとるからね。」


「どなたかは存じ上げませんが助けていただき、ありがとうございます!」


「いいってもんよ!」


そんな会話をしながら目隠しが取れた少女は俺に感謝の意を伝えどこかへ走っていた。


うーん…大丈夫だろうか。


少女はまた変なやつらに捕まってしまわないかと心配だ。まぁ、その時はまた俺が助ければいいか!


あっさりと疑問が払拭された俺は色々考え事をしながら再び歩き出す。


街に行きたいなぁ。だとか、ギルドに入りたいなぁ。だとか。


そういえばギルドってどんなもんだったけぇ?確か俺の見た漫画だと...


なんか…こう、パーティー…とか、組んで…クエスト受注して、仲間と一緒にモンスターとかと戦って……ランク上げたり報酬貰ったりする。ヤツだった気がする。多分。


………


ひとまず。


俺は街に向かう事を決めた。





そして歩く事数十分。道中に何体ものモンスターが襲ってきたが難なく突破し街の入口まで着いた。


「でっけぇー」


見上げるほどの巨大な…外郭?城壁?正式名称は分からないが巨大な壁がそびえ立っていた。普通に考えて円状に街を囲んでいるのだろう。視線を下ろして正面を見ると2人の門番がいた。しっかりとした鎧に形の整った槍を持っている。


俺は街に入る為に歩き出す。すると。


「待て。ハンドセルに入るには身体検査をさせてもらう。」


右にいる門番がそう言い、2人の槍で入口を塞がれてしまった。


「はい。わかりました。」


俺は返事をし、上着を脱ぐ。その見慣れない格好に右側の門番は怪訝な表情をする。左の門番が俺の身体を検査しながら口を開く。


「見たところこの付近…どころか、この大陸の者でも無さそうですが、どこから来たのですか?」


唐突な質問に少しつっかえながらも答える。


「あっえーと…向こうのとぉぉぉい所から海を渡ってきたんです…」


「おお。そんなに遠くから?旅かなにかで?」


「はっ…はい。自分探し…と言うヤツです。」


「ああ。なるほど…私もこの職に着く前にはよく旅をしてましたよ。その道中で出会った女性と結婚し…妻と娘を養う為にこの国で事務員として働いてたんですけどある日、魔物の軍団が攻め込んできて娘が殺されてしまったんです。ですから2度とそんな事が起きないように門番をやってるんです。」


「へぇぇ。」


「あ。すみません重い自語りしてしまって………そうだ。この国の名物でもおしえましょうか。この国はテンカン餅ってのがおすすめですね。特徴として店主が炎や氷を模したエネルギーを入れてるんです。そのおかげで食感や味、風味が変わって面白いんですよ。」


「それは美味しそうですね。楽しみになって来ましたよ。」


「ははは。それは良かったです。………それじゃあ最後の検査に入りますね。これを見てください…」


そう言いながら後ろポケットに手を入れたと思ったら、右の門番が俺に顔の前でパン!と両手を叩いた。いきなりの事に俺は声を出して驚く。


「うわ!え?」


「すみません。これには事情がありまして。近頃、人間等に変装するフェイカンっていう凶暴魔物が居まして、その対策をとってるんですよ。そのフェイカンは驚くと目が赤黒く光るんです。」


「なので今みたいに検査の時に驚かせるんですよ。本当にすみません。決まりですので。」


「よし。あなたの目には何も問題が有りませんでした。それではハンドセルにお入りください。」


「ありがとうございます。」


俺は一応お礼をしてハンドセルと呼ばれた国に入ろうとすると再び門番に呼び止められた。


「何かの縁です。名前を聞いても?」


「いいですよ。俺は、サクマ チダです。」


「私はベルン。ベルン ルーフです。」


「何かいい事が起きそうですね。」


「はい。」


「それではまた今度。」


そして門をくぐり抜けるとそこは活気のある市場があった。人間やエルフ、獣人(広義)にドワーフと様々な種族がいた。


そういえばと思い出し、ステータスを出すのと同じ容量でアイテム欄を表示させるとここに着くまでに倒した魔物の角や牙の他にもお金も持っていた。おそらく倒した時に手に入れたのだろうが何故魔物が使わないはずのお金を持っていたのかは分からない。とは言えこれがあれば色んな物が買えるだろう。


アイテム欄から数枚の銀貨を取り出しポケットに入れ、周りを見渡しながら歩く。


あれはなんだろう?肉?なんの肉だろうか?。こっちは野菜かな?凄くでかい葉っぱだ。


段々と奥の道なりに進んでると何やら人集りが見えてきた。すると近くの2人組からこんな会話が聞こえてくる。


「そういえば今日は王様の演説の日だったな。」


「それに加え、今日は予言の日だぜ?現れるんかなぁ勇者とやらは。」


勇者?もしかして…俺?………全然有り得るな。そんな事を考えながら演説が行われてる方へと向かう。









「__。さて。国民の皆。今日は予言の日。異世界からこの国に勇者が現れる日だ!」


壇上の上には王様らしき人が演説を行っていた。王様は以外もシンプルな格好をしていた。周りには銀色の鎧を纏った護衛が数人。そして王様を囲うように、魔法のバリア的な物もあった。俺は人の少ない隅っこで演説を聞く。


「その勇者の特徴は今まで伏せていたが…今!それを言おう。勇者は黒がベースに赤い縦線が入った羽織ものをまとっているそうだ!」


ん?


「その…勇者の名は…サクマ!」


え?俺じゃん?


「そして!その勇者は今!この場にいる!」


”え!?ホントに!?” ”まじかよ!”

などと言った声が響き渡る。数秒もしないうちにみんなの視線が俺に集まる。


「勇者サクマよ。この壇上に上がってくれ。」


王様の言葉と周りの圧に耐えきれず俺はオドオドと壇上へと向かう。


「初めまして、私はハンドセル第八国王、『ゼブンノ・ハンドセル・リリシー』だ。よろしく頼む。」


風格のある。国王は俺に手を差し伸べ握手を求めてきた。


「あ、俺はサクマ チダ です。よろしくお願いします。」


”ワァァァーーーー!!!”


自己紹介をしただけなのに周りから歓声があがる。それにいつの間にかさっきよりも人が増えている。


「我が王国は争いが蔓延るこの世界で数少ない、戦争を起こさない中立国であり、争いあっている国同士の橋渡りとしての役割も担っている。」


「そこで其方には……あぁ……その前に…この世界の出来事について説明しよう。今から60年程前、大魔王が世界を牛耳っていたが各国の精鋭達が協力して何とか討伐する事に成功したのだ。しかし共通の敵が無くなると我々のような人間はお互いに争うようになった。その状態が続いてはや数十年……今に至るという訳だ。」


へぇぇ……確か女神様が争いが耐えない世界とか言ってたような気がする。


「わかったようなら話を戻そう。其方には我が国の代表として世界平和への架け橋になって欲しいのだ。だがそのためには色々な戦果や実績が必要だ。そこの所は追々話す。」


王様が話を続けている最中、何かが起こる。


「そして、国民のため__」


音を立て空にヒビが入りできたヒビの隙間からは白色の光が差し込む。


「あれは…!女神様だ!」


女神?ノレシファーのことか?


空のヒビは完全に割れ、なんとも神々しい光と共に見たことある顔がゆっくりと降りてくる。


”女神様ぁ!” ”この世界に平穏をぉ!”

と。国民も叫んでいる。


俺の目の前まで降りてくると、静かに左手を差し伸べてくる。


「め…女神様!天からご覧になってくださったのですね。この勇者サクマの誕生を!」


王様は興奮気味に話す。


「さぁ!サクマ。女神様の手をとって!」


「は、はい。」


あぁ……


ここら俺の人生が始まるんだな。


前世の事はほとんど覚えていないけれど……あんまり良い人生では無かった事はわかる。


この世界では、無双したりモテモテハーレム生活……とまではいかないけど、強くなりたいし、彼女だって欲しい。


うん。頑張ろう。



そう…心に決め…



女神様の手を…



とろうとした時…



女神様は……



拳を握った。



「穢らわしい…」


え?


唐突な女神様の言葉にその場に居た全員は静まり返る。後ろを振り向き女神様は国民に声を上げる。


「皆さん…騙されてはいけません。この男は異世界から呼び寄せられた…」


「『大魔王の魂』を持つバケモノです!私も最初は気づきませんでした…巧妙に自身の素性を隠し…私を…皆さんを騙していたんです!」


「この世界を再び、支配する為に!」


「なんだって!?それは…女神様…本当ですか?」


「はい。その通りです。」


「じゃ…じゃあ本当の勇者は?」


「それは……この男が……殺しました。」


!?


「なに!」


気付けば称賛の嵐だった国民の声が打って変わって、非難の声に変わっていた。


”バケモノめぇ!” ”殺せぇ!”


”本当の勇者様は…アイツに!”


”酷い!” ”女神様ぁ!”


「違う!俺は大魔王なんかじゃ無い!」


「この期に及んでまだ嘘を!なんと醜い!」


王様や国民の蔑んだ目が俺に刺さる。


違う!本当に違うんだ!


「皆さん。安心してください。この私、ノレシファーが制裁を与えましょうぉぉ!」


”うおおおお!!” ”女神様!やってくださいぃ!”


女神は満面の笑みでコチラを睨む。左手を高くあげると杖が現れそれを握る。


「…んぅでは。制裁を。」


杖の先を俺に向け、言葉を囁く


「手始めにぃぃぃ……デリート。」


身体の力がどんどん抜けていくだけでは無い。


俺に目せびらかすようにステータス欄が開かれ、次々とスキルが消されていく。いつの間にか100を超えていたレベルも下がっていく。


「さてさて次はぁぁぁ……んぅぅ……どうしましょうかねぇ?……。そうだ皆さん!この男の制裁。どうしたらいいですか?」


国民から様々な声があがる。


”痛めつけろぉ!” ”火あぶりだぁ!燃やせ!” ”引きちぎれぇ!”


「ん?あれは?」


女神が見た先にはこの国の門番、ベルンがいた。


「え?……あれ、サクマだよな…」


「サクマが……大魔王?」


ベルンは状況を理解できずにいた。


「そんな訳ない。アイツが大魔王だったら私の娘を殺した魔物もアイツの仕業?」


「だって全ての魔物は大魔王の下僕だもんな……じゃっ…じゃあ…アイツが!アイツが!」


「私の娘を…?」


「はい。そうですよ。」


その女神の言葉にベルンは、


「おまえ!おまえぇ…!」


「………。」


「女神様……タダでは殺さないでください」


「一生!後悔させるように……絶望を与え、半殺しにしてください…」


「はぁぁい!」


嫌だ…嫌だいやだ!


「パージ・フレア」


そう言葉にするとサクマの足元から炎が燃え上がる。


「ああああ!!熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!」


「あら…少し火を強めすぎたみたいですね。…水をぶっかけてあげます。」


水をかけられたサクマは膝から崩れ落ちる。


「次はぁぁ……雷系にしましょうか!」


「嫌だ!やめてくれ…」


「やめませんよ。ディバイン・ボルト」


サクマの周りに雷が漂い、ひとつひとつ丁寧にぶつけていく。


「痛い………痛い…!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」


「つぎはぁ……グラビティ・プレッジ!」


ドォォン。と、おもい重力により、サクマは倒れ、押し潰される。


「ぁっ……かっ…………ぁっ!」


肺が押しつぶされて息がまともに出来ない。それにバキ…バキと骨も折れ始める。


「ああ……このままだと死んじゃいますね。それは困るので……ヒール。」


女神はサクマに回復魔法をかける。


するとサクマの身体は元に戻り始める。燃えた皮膚、焼けた髪。潰れた骨。全てが元に戻る。


しかし


「もう1周しましょうか。」


精神…心は完全に折れていた。













あれから数時間、サクマの肉体は回復されてる。だが動く気力などどこにもない。そんなサクマに女神が囁く。


「アナタには力も頭脳も才能も!なにも無い…!前世でもそうだったでしょう?…どれだけ努力しても…結果は実らず…周りからはサボってるだとか怠けてるだとか散々言われていた…他人からしたら努力なんて知ったこっちゃない。内面までは見てくれない…」


「アナタは真の意味でゴミカスなんです…」


「可哀想に。異世界転生したら無双できると思っていました?女の子達にモテると思っていましたかぁ?」


「残念。残念。全く有り得ません。アナタ見たいな人間には。」


「そういえば、捕まっていたダークエルフの少女助けましたよね?」


「あれ、少女に変化したフェイカンなんです。せっかくあと少しで凶暴な魔物を捕まえる所だったのにぃ。もったいないですね。ちなみにあの後、近くの村襲っちゃいましたよ。」


「アナタのせいでね。」


「さてさて、アナタのスキルは全部消しましたし、レベルもゼロ。そろそろ痛めつけるのにも飽きてきた頃です。適当に森の中に捨てる事にします。殺すのはもったいない。生き地獄を味わないといけませんからね。」


「あっ。ちなみにその森ってのはフェイカンの生息地ですよ!アナタが助けたフェ イ カ ン !きっと歓迎してくれると思います。」


「では………地獄に」


「いってらしゃいませ♡」





















「………」


ヒンヤリと冷えた空気で目を覚ました僕は思考を放棄していた。


だが、嫌な事だけは自然と脳内に溢れてくる。


前世の僕の死因だ。大学受験前トラックと衝突した。そう思っていた。


けど違う。


実際は、


アスファルトだ。


つまり地面。飛び降り自殺したんだ。


色々な事に耐えきれなかった。


いくら勉強しても身につかない。だから勉強方法を変えてみた。けど、変わらなかった。


その事を友達や親に相談したら色々な対策方法を考えてくれた。皆…しっかり、丁寧に僕の事を思って。


けど、だけども、僕はそんな皆の期待に答えられない。だから、わざわざ僕なんかに構わないで欲しい。どうせ失敗するんだから。


でもそんな事は言えない。


僕はいつも皆の後ろを行く。先陣切って行くなんてできないし、皆がやったのを見て僕はやる。その方が安全だからだ。


ああああ………なんで僕は生きてるんだろう…なんの為に生きてるのかな?


このまま…


ゆっくり……


死にたいなぁ………


………


……



ガサ……ガサ……ガサ……ガサ…


ん?何か近付く音が聞こえる。


顔をあげるとそこには僕が助けたダークエルフの少女がいた。


「………」


その少女はジッとコチラを見つめていた。


良かった。無事だったんだ。


「………」


はは…僕が助けたんだからね。


「………」


でもなんで喋らないんだろう?


「……」


あっ……あっ思い出した


「…」


こいつダークエルフじゃあなくて


「グヴァガッ!」


フェイカンだ!


少女の身体が裂け中からグロテクスな魔物が出てくる。


くっ食われる!


フェイカンが襲いかかってきた時僕は咄嗟に避けるが、ヤツの爪が左腕の皮膚を抉る。


痛い!


嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!


死にたくない!


生きたい…


生きたい……


い゛き゛た゛い゛!


僕にはまだ………!


〔その意気だ。サクマ。〕


!?


僕の脳内に謎の声が響き渡る。男らしい様な…枯れたような声が。


〔サクマ。勇気を持て。勇気だ。〕


〔勇気とは己の行いに絶対的な自信がある時の事を指す。〕


無理だ!僕には何も出来ない!期待なんかしないでくれ!


〔ならいくつかのレッスンに分けよう。〕


〔レッスン1。強欲になれ。〕


〔いいか強欲だぞ。傲慢や、がめついとワ違う!強欲だ!力を欲せ!金を欲せ!なんでも良い!とにかく何かを欲せ!欲しい物があるなら必ずこの手に入れるという強い意志を持て!〕


〔オマエは何を欲する?〕


僕は………


………


力が欲しい!!!


〔まさしくグッド!それゆえパーフェクト!〕


その刹那。


~レベルが1にアップしました。~


!?……何故レベルが!?


~ニュースキル。『ロケットショット』~


スキルまで!いったいこれは?


〔考えてる暇は無いぞサクマ!〕


ハっ!


目の前をみるとすぐそこまでフェイカンが迫っており、僕は全身の力を振り絞って横に跳んだ。


ゴロリと転がるも何とかフェイカンの攻撃を避けることに成功した。


〔サクマ。オマエが勝つには強欲さと今、獲得したスキルのみ。〕


ロケットショット……


〔あぁ、そいつは全身のエネルギーを拳に溜めパンチと同時にエネルギーをぶっぱなし爆発させる技らしい。〕


〔この技は溜めが必要だ。MPの都合もある。冷静さと間合いをミスらなければ勝てる。〕


わ…わかった。やれるだけやってみる…


再びフェイカンは爪を立てコチラに飛んでくる。


右へステップで回避した後、右拳を握り、エネルギーを溜める。


フェイカンが振り向いたその瞬間、僕は拳を放つ。


「ロケットショット…!」


ズゥゾォンと音が鳴るがエネルギーの溜めが甘かったのか、対して食らっていないようだ。


〔何をビビっている!〕


やっぱ無理だよ!僕には!


〔違う!今のは踏み込みが甘かった!しっかりとした姿勢をとるんだ!右足を引き、腰を落とせ!〕


あああ!わかったよ!


フェイカンは痺れを切らしたのか、雄叫びをあげ、両手を広げ突進してくる。


〔サクマ!あれは両手の爪で囲うように切りつけくるぞ!〕


わかった!


「グヴァガッ!」


謎の声が言ったようにヤツは動く。跳んだフェイカンは両手の爪を内側に動かし切りつけてきた。


僕は後ろにさがり、直ぐさま右足を引き、拳を握り、エネルギーを溜め、腰を落とす。


「ロケットショット!!」


ズヴゥゾォン!


!?


〔外したか!〕


フェイカンも学習したのか高くジャンプして避けられてしまった。そしてそのまま空中でサクマを切りつける。


「うぐあぁ!」


痛い…!


再びフェイカンの攻撃。左の爪、右の爪、左の爪と交互に切りつけてくる。何回かは躱すが数回は皮膚を抉られてしまう。


「あ゛がぁ!」


〔サクマ…落ち着くんだ!〕


痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!


〔思いだせ!サクマ!〕


〔オマエは何故死にたくない?〕


痛いのが嫌だからだよ!


〔じゃあ…痛みも無く死ねるのならお前は生きるのを辞めるのか?〕


………


〔違うだろ。お前は命を欲している。チカラも金も名誉も。まだこの世に未練があるから死にたくないんだろ!〕


〔思い出すんだ!お前の今までを!〕


……!


僕の………


僕の夢は……!


宇宙飛行士ッ!


その為に沢山勉強してきたッ!何がなんでも宇宙飛行士になるためにィ!


〔あぁ。その夢を叶える為に第1に何が必要だ?〕


…命!


………


この戦いは……僕の物!そして!


この戦いの勝利は……


僕の物だ!


〔ロケットのように翔んでゆけ!サクマ!〕


「ロケットォォ……」


右足を引き、拳を握り、エネルギーを溜め、腰を落とす。


「ショッットオォォ!!」


ズヴヴゥゥゾォォン!!


フェイカンはジャンプして避けようとする。


しかし。


そんなものは関係無い。


サクマの放ったエネルギーはフェイカンの腹に当たりぶっ飛ぶ。


そして、爆発。




「はぁ……はぁ……」


勝った……勝ったぞっ………僕は!


〔サクマ酔いしれてる時間は無い。この森は危ないさっさと出るぞ〕















森から脱出した僕はとりあえず道なりに歩く。



「ところであんたは……ナニ?」


〔俺か?俺の名前は………む……思い出せないな……まぁ名付けるならそうだな…〕


〔…オマエはサクマだろ?〕


〔咲く……って意味があるから…〕


〔枯れる……枯れない……カレナ……。〕


〔よし!俺の名は『カレン』だ。〕


………


「カレン…か…いくつか聞きたい事があるけどまずはなんで僕の頭の中?に居るの?」


〔あぁ……そうだなぁ……その辺は曖昧だが、確か……俺は多分…死んで魂の状態となってあの辺を浮遊してたんだが丁度死にそうなオマエを見つけたんだ。〕


〔興味本位で近づいてみたらオマエの肉体へと勝手に吸い込まれてね。〕


〔こうなったって訳だ〕


色々あやふやだね。


〔あぁ……いかんせん俺自身の記憶が殆ど無くてな…ただ、すげぇヤツだったてのワわかる。〕


勇気のある英雄みたいな?


〔そう!まさしくそれだ!多分〕


………ところでこれからどこに向かえば良いの?


〔オマエの肉体は見ての通りボロボロだ。まずはそれを治療する為近くの村に行こう。〕


あ…人に会うのは少しまずいと思う…


〔どうして?〕


僕は女神のせいで大魔王って事になってるんだ。だから気軽に村なんて行ったら大騒ぎどころじゃあないよ。


〔いや。それはない。オマエが魔王だと言われた場所はハンドセルの中だろ。〕


〔まだ外の国や地方の村にオマエが魔王だって知れ渡ってる可能性は低い。〕


……もし、知ってたらどうする?


〔逃げるのみだ。〕








そこから数分後とある小さな村に着いた。名前は『カセロ』。看板にそう書いてあった。


周りを見渡しながら村に近付くサクマに誰が声をあげた。


「あ…アナタ!」



続く―






更新頻度は激遅です。

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