「フルーツ売りと金貨と少年」
お久しぶりです。
今月も3作品ほど執筆していたのですが、気づけば投稿しないまま時間が過ぎていました…
書くだけ書いて投稿しない作品も多々あるので気を付けないとですね(汗)
フルーツを売っている露店がありました。どうやら遠くから、この町まで売りに来ているみたいです。新鮮でとても美味しそうなのですが、驚く程安い値段で売られていました。
なぜここまで安いのかと言うとフルーツが一つも売れないのです。
露店の主人はどうしたものかと考え、まずは人に買ってもらい良さを知って欲しいと思いました。なので、子供のおこづかいでも買えるほど安くしたのですが、売れません。
「はぁ…安くしても売れない。やっぱり、親しみのない果物じゃダメなのか……」
がっくりと肩を落としてシュンと落ち込んでしまいます。しかし、ここまで来たからには売れないと故郷で待っている家族や町の人に申し訳ないと思うのでした。
道行く人に声をかけて売ろうとするのですが、誰も彼も興味がなさそうにしています。時折立ち止まって果物を見る人がいますが、やっぱり買ってくれません。
日が暮れ帰ろうとした時、一人の少年が店に来ました。
「おじさん、まだ買っても大丈夫?」
「あ、ああ! 大丈夫だ」
少年は果物を手に取って言いました。
「これは見たことがない珍しい果物だね。おじさん、一つもらっていくよ」
「ここら辺では珍しいよな。これは寒い場所でしか育たない果物なんだ。まいどあり!」
コインを一枚置き、果物を一つ手に持って、少年は帰っていきました。誰でも買える程安い値段にしたおかげでやっと一つだけ売れましたが、それでも沢山の売れていない果物が並んでいます。
「売れたのはいいけど、これだけ……は? なんで金貨?」
少年が置いていったのは金貨でした。銅貨で買えるぐらいに設定したのに、それの何倍もの値段で買ってくれたのです。
まさか村の果物にこんな値段が付くなんて夢にも思っていませんでした。
やっと売れた果物というだけでも嬉しいのに大金まで手に入れて沈んでいた気分はまるで空を舞うと感じるほど嬉しかったのです。
しかし、男は思いました。
「いくらなんでも申し訳ない。今度少年を見かけたら、返さないといけないな」
どれほど有り難くとも男はどこまでも善良な人間だったのです。
あたりが暗くなってくると店を閉め、宿に行きました。安くあまり寝心地のいい場所ではありませんでしたが、男は気持ちよさそうに眠るのです。
次の日も露店を広げて果物を売り始めました。今日も一つ売れればいいな、あの少年が来てくれると返せると心の中でぼんやり考えているとふいに声をかけられ、意識が戻ります。
一人の身なりのいい男が果物を手に取り、お金を渡そうとしています。
「店主これを一つくれ」
「あ、ああ! まいどありー」
慌てながらもお金を受け取りますが、手渡されたのはまた金貨でした。店を開けてすぐに売れるのはありがたいと思いましたが、なにが起こっているのか理解できません。
また大金を稼いでしまい、嬉しくも申し訳なく思っているとまた一人のお客さんが来ました。
これまた身なりの良い女性です。
「店主さん、これをお一つくださいな」
「はいよ! まいどあり」
女性は果物を持って帰りました。手渡されたのは金貨が2つ。
一枚でも多いのに二枚なんてと思いましたが、先ほどの女性の姿はもうなくなっていました。売れてくれるのは嬉しいのですが、なにが起きているのか男にはわかりません。
まだ店を開いて時間は経ってませんが、一度休憩をすることにしたのです。片づけているとまた一人訪ねる人がいました。走ってきたのか、はぁはぁと肩で息をしています。
「はぁ…はぁ…まだ売っているかな?」
「ああ、売っているが……。そんなに慌ててどうしたんだ?」
急いできた理由を尋ねるとこれまた身なりのいい男は言いました。
「ここの果物が珍しく、なんでも金貨一枚の価値があるとか小耳に挟んだんだ! どうか、私にこれを全て売ってくれ」
「いや、そんな値段……」
全部売って欲しいと手に持った布袋を押しつけてくるのです。手に取るとずっしりと重く感じました。中には沢山の金色に輝く金貨が入っていて、男は驚いて落としそうになりました。
「全部売るのはいいけど、こんなに貰えないよ」
「な~に、それだけ素晴らしいと聞いている! この数を買うには少し足りないと思うが、まけてくれ!」
袋いっぱいの金貨を渡され、さらに少ないと言われても男は困ってしまいます。男はよく分かっていないので「わかった」と頷くことしかできませんでした。
一緒にきていた人たちに果物を持たせ、去っていきました。身なりの良い男は大層喜んでいる様で、ゆっくりした足取りですがどこか来た時よりも軽やかに見えました。
たった二日で持ってきた果物はなくなってしまい、男は店を片づけ始めます。
「おじさん、全部売れてよかったね」
「ん? おぉ~あのときの子か! ああ、なぜか君が買ってから、どんどん売れてなぁ。…それとこれ、貰いすぎたから返すよ」
「ううん、それは受け取って欲しいな。だって、それだけおじさんが売っていた果物はおいしかったからね」
最初に買ってくれた少年がまた来てくれたのです。全部売れたことを一緒に喜んでくれている様でした。
「しかしなぁ、全然売れなかったのに売れだしたのが不思議でしかたないよ」
男が空になった袋を見つめて言うと、少年は答えるのです。
「ぼくがみんなに自慢して回ったからかな」
「それでか、だけど……なんで売れたのかまだ分からない。それに値段がどんどんつり上がっていったのも……」
どうやら少年が美味しい果物が売っていると周りの人に教えたみたいです。ですが、男は果物が売れた理由は分かりましたが、高値で買っていく人たちがわからなかったのです。
すると少年は言いました。
「ぼくの家はお店をやっているんだけど、お金を持っている人がよくくるの。それで、お金がある人は価値があるって思うものに人より多く使いたくなるの」
「それはまたなんで? 安く買えた方がいいじゃないか?」
なんとも不思議な話だと男は少年の話を聞いて思いました。貧しくも裕福でもない町で育った男にはその考えが分からなかったのです。
「だって、お金っていうのはただあるだけじゃダメだよ。持っているものを人がイイって思うモノに交換するんだってお父さんが言っていたんだ」
「そうか、確かにそうかもしれない」
男は少年の言葉にただ頷くことしかできませんでした。そうしてまた空の袋を見つめます。
故郷の果物が受け入れられて嬉しい気持ちと、それを買った人たちの顔を思い浮かべ、つい笑ってしまいました。
またここに来ようと。そしてまたあの笑顔がみたいと思うのでした。
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今年中にレベッカシリーズの新作も投稿させていただきますので、
そちらも見ていただけると嬉しいです。
締めの作品ではありませんが、念のため……皆さま、よいお年を!




