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エリジウム  作者: 阿川佳代志
第1-1章 創世記
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[1-1] 私が救われた夢

狼の遠吠えが聞こえる。彼らは野原のどこか前方へと走っている。イオフォール Zone の農地が見える。巨大で、太陽に照らされ、透明なエネルギードームに覆われたその場所では、人類の執念が星に生命を育んでいた。空気は冷たく湿っており、生臭い土とオゾンの匂いがした。循環システムが生み出す微風が、遺伝子組み換えされた穀物の葉をそよがせる。下では、ネズミほどの大きさのアリがせわしなく走り回っている。崖からは小川が流れ落ち、根を潤していた。傍らには、大きなプラスチックのコンテナに、収穫物が丁寧に並べられている:オレンジ色の束になったニンジン、茶色いジャガイモの塊、濃緑色のブロッコリーの花蕾。草地では、頭の下にジャケットを敷いて、一人の少年――テオ・ノイマンが眠っていた。顔は穏やかで、換気の風のささやきに合わせて呼吸は整然としていた。


平穏は、突然の動きで破られた。彼は揺さぶられ、肩を掴まれてガシガシと晃られた。

「テ、テオ、起きて、テオ!テオ!」――通常はあんなに温かなレナ・ドヴジャンコの声が、今はナイフのように空気を切り裂いた。


その名前は、悪夢の引き金となる鍵のようだった。世界全体が、地獄の炎のように閃いた。色彩は歪み、濁った暗紅色に変わった。傍らにレナが立っている。だが、いつものレナではない。彼女の首は切断され、傷口からは真紅の血が噴き出し、彼女のドレスも、足元の草も濡らしている。愛したあの顔があるべき場所には、虚無が広がっている。魂を凍りつかせる恐怖が、テオの喉を締め付けた。周囲は全て燃え上がり、変異生物が歩き回り、どこかの男が自分の腕を切りつけ、そして今は丘の上に立つ奇妙な家。血まみれの鍵。誰かの顔のように、その手で人々を引き裂き、その後、奇怪な人型の怪物が全速力で前方へ走り抜け、そして突然、短い黒髪の少女が主人公の名前を叫ぶ。


「テオ!」


彼は窒息しそうになり、叫び声を上げようとしたが、声は痙攣した喉に詰まった。


「はあああっ!」――喘ぎ声と共に、ようやく声が漏れ、テオは目を覚ました。


彼は咄嗟に起き上がった。心臓はチェンソーのように肋骨を打ち鳴らす。瞳孔は限界まで開き、周囲の現実を動物的な恐怖で吸収しようとする。冷や汗がこめかみを、背中を伝い、Tシャツを染み込ませていた。


「テオ、どうしたの?またあの夢?」黙らないで!――レナが傍らに座っていた。彼女の目は恐怖で見開かれ、手はまだ彼の肩の上にあったが、今やそれは生きている人間の触れ合いだった。


テオは前かがみに座り、肺から飛び出した空気を必死に押し戻そうとする。周囲の世界はゆっくりと鮮明さを取り戻していく:コンテナ、小川、洞窟の見慣れた輪郭。カメラが引き、岩の間から孤高に、執拗に生え出た一輪の花を映し出す。その花弁に二匹の蝿が止まり、無邪気に肢をこすり合わせている。影。稲妻のように素早く。手のひらサイズの変異ハエトリグモが疾走し、一匹の蝿に毒を注入し、キチン質の顎で捕らえた。もう一匹の蝿は、かすかに翅を震わせただけで、飛び立つことに成功し、恐ろしい運命を回避した。カメラはテオとレナに戻る。彼はまだ微細な震えが止まない。


「レ、レナ…」彼の声は裏切り、嗄れていた。「こ、これは…本当にお前か?本当に…?」彼は、その姿が崩れ去ることを恐れるように彼女を見つめた。


「もちろん私よ、他に誰がいるっていうの、おバカさん」彼女は笑顔を作ろうとしたが、不安は消えなかった。


「あ、あれは…幻か…俺の前にイヴが立っていた…」彼は沈黙し、逃げていく夢のイメージを掴まえようとする。「でも…あの時、彼女がどんなだったか…全然覚えていない…髪が…短かった…」


「え?」――レナは眉をひそめ、理解不能が不安と混ざり合った。彼女は咄嗟に手のひらを彼の額に当てた。汗の粒が浮かんでいるその場所で、体温を確かめるように。肌は冷たく、ねっとりとしていた。


「テ、あなた熱があるよ…」――彼女は囁き、一粒の汗が彼のこめかみから彼女の指へと転がり落ちた。


二人の顔は、理解しきれない思いを込めて見つめ合う。テオの顔――恐怖と冷や汗の仮面。レナの顔――不安と、指先の一滴の湿り気。レナは気を取り直し、二つのコンテナの浮遊モジュールを起動させた。微かなブーンという音と共に、それらは地面から離れ、わずかな高さで浮遊した。テオの手を取ると、レナは彼を都市へと連れ戻した。コンテナは従順に彼らの後を浮遊してついてくる。テオは、まだ緊張しながらも歩いた。しかし、彼女の手が自分の手の中にある、確かで生きているその感触が、悪夢の残骸を追い払い始めていた。彼は絡み合った二人の指を見つめ、かすかな、確信のない微笑みが彼の唇をわずかに動かした。彼女はここにいた。彼とともに。今のところ、それで十分だった。


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