第四十七話 「王都の英雄」
ディートリッヒの敗北の報せを聞いたアルフレッドは、ゼウスの新たな策を実行に移した。それは、ルナたちの村の内側から、希望を絶望に変える、恐るべき計画だった。
その頃、ルナたちの村では、ディートリッヒを撃退したことで、安堵に包まれていた。
「これで、もう、アルフレッドの軍隊も、怖くないぞ!」
村人たちは、口々に、ルナたちを称えた。
その日の夜、国王は、ルナに、静かに言った。
「……ルナ・カーヴィル。……お前たちのおかげで、私は、再び、王国の王として、立つことができる。……この恩は、一生、忘れない」
国王は、ルナに、心からの感謝を述べた。
「陛下。……私たちの村は、陛下が、お戻りになる場所です」
ルナは、国王に、そう告げた。
その夜、カインが、村の入り口に、一人の男を連れてきた。
「ルナ様!この男は、王都から来た、銀翼団の団員です!」
男は、ルナに、深々と頭を下げた。
「ルナ様!王都では、アルフレッド卿が、新たな策を、実行に移しております!」
男の言葉に、ルナたちは、顔色を変えた。
男は、ルナたちに、アルフレッドが、王都の民に、あるデマを流していることを話した。
「……アルフレッド卿は、ルナ様たちが、国王陛下を、人質に取っている、と触れ回っております!」
男の言葉に、ルナたちは、驚きを隠せない。
「……人質……!?そんな、ひどい……!」
ミリアが、震える声で呟く。
「……アルフレッドは、私たちの、国王陛下への忠誠心を、利用しようとしているのね」
ルナは、アルフレッドの底知れぬ悪意に、再び、背筋が寒くなった。
その頃、王都では、アルフレッドが、自らの邸宅で、民衆に、演説をしていた。
「聞け、王国の民よ!ルナ・カーヴィルという、卑劣な女が、国王陛下を、人質に取っている!国王陛下を救い出すために、我々が、立ち上がるのだ!」
アルフレッドの言葉に、民衆は、動揺し、恐怖に震えた。
しかし、その中には、アルフレッドの言葉を、信じない者たちもいた。
「……おかしいぞ。国王陛下は、ルナ・カーヴィルの村で、無事だと、聞いたばかりだ……」
「……アルフレッド卿は、私たちを、騙そうとしているのではないか……?」
民衆の間には、疑念が広がり始めていた。
その時、王都の広場に、一人の男が、姿を現した。
銀翼団の団長だった。
「皆の者!アルフレッドの言葉に、耳を貸すな!」
団長の声に、民衆は、一斉に、団長に、視線を向けた。
「アルフレッドは、国王陛下を、殺そうとした裏切り者だ!国王陛下は、ルナ・カーヴィルの村で、無事に、おられる!」
団長は、そう言って、アルフレッドの悪事を、すべて、民衆に話した。
そして、団長は、自らが、銀翼団の団長であることを証明するために、銀翼団の紋章を見せた。
民衆は、団長の言葉に、驚きを隠せない。
「……銀翼団の団長様……!」
「……本当に、アルフレッド卿が、裏切り者だったのか……!」
民衆は、口々に、そう呟いた。
その頃、ルナたちの村では、銀翼団の団員からの報告を聞いた国王が、ルナに、言った。
「……ルナ・カーヴィル。……団長は、命をかけて、私と、この国を、守ろうとしてくれている。……私も、もう、これ以上、彼に、任せておくわけにはいかない」
国王の言葉に、ルナは、深く頷いた。
「陛下。……私たちは、いつでも、王都へ、向かう準備ができています」
ルナは、国王に、そう告げた。




