第三十八話 「王都の策士」
アルフレッドの大軍勢は、古代竜アウルムの圧倒的な力によって、完全に打ち破られた。敗走した兵士たちは、王都へ戻り、アルフレッドに、村の様子を報告した。
「アルフレッド様!村には、伝説の古代竜がおりました!我々の魔導兵器は、まるで歯が立ちません!」
兵士たちの言葉に、アルフレッドは、怒りに顔を歪ませた。
「馬鹿な!この世に、伝説など、存在しない!あの竜は、ルナ・カーヴィルという女が操る、ただの魔物に過ぎん!」
アルフレッドは、そう言って、敗走してきた兵士たちを、容赦なく処刑した。
その様子を見ていた、一人の男が、アルフレッドに進み出た。
「アルフレッド様。……あの村を、力ずくで攻め落とすのは、不可能かと」
男は、アルフレッドの軍師を務める、ゼウスだった。
「ゼウス!貴様も、あの村娘どもに、怯えているのか!」
アルフレッドは、ゼウスに、怒りの声をぶつけた。
「いえ、アルフレッド様。……私は、戦略を立てているだけです。……あの村には、力で勝つことはできません。……ならば、別の方法で、あの村を、滅ぼすのです」
ゼウスの言葉に、アルフレッドは、興味をそそられた。
「別の方法だと?……話してみよ」
アルフレッドは、ゼウスに、そう促した。
ゼウスは、アルフレッドに、一つの策を提案した。
「アルフレッド様。……ルナ・カーヴィルは、村人たちの信頼を、何よりも大切にしております。……ならば、村人たちの、心を、私たちに向けさせるのです」
「……どういうことだ?」
アルフレッドは、ゼウスの言葉の意味が分からず、首を傾げた。
「王国の民に、ルナ・カーヴィルの村が、疫病を広めている、と触れ回るのです」
ゼウスの言葉に、アルフレッドは、驚きを隠せない。
「……疫病だと?……そんなデマ、誰が信じるのだ?」
「アルフレッド様。……民は、恐怖に弱いものです。……疫病という、目に見えない脅威を、ルナ・カーヴィルの村に、結びつけるのです。……そうすれば、民は、ルナ・カーヴィルを、疫病を広める、悪の村として、憎むようになるでしょう」
ゼウスは、そう言って、邪悪な笑みを浮かべた。
アルフレッドは、ゼウスの言葉に、満足そうに頷いた。
「ははははは!……ゼウスよ。貴様は、本当に、恐ろしい男だな。……よし、その策、実行に移せ!」
アルフレッドは、ゼウスに、そう命じた。
その頃、ルナたちの村では、アルフレッドの軍勢を撃退したことで、村人たちが、歓喜に沸いていた。
「やった!ルナ様たちが、村を守ってくれた!」
「これで、もう、アルフレッドの軍隊も、怖くないぞ!」
村人たちは、口々に、ルナたちを称えた。
ルナは、国王に、今後の作戦について話した。
「陛下。アルフレッドは、このままでは、諦めないでしょう。……今度は、どんな手で、私たちを攻撃してくるか、わかりません。……私たちは、アルフレッドの動きを、警戒しなければなりません」
国王は、ルナの言葉に、深く頷いた。
「……ルナ・カーヴィル。……お前は、本当に、聡明な娘だ。……この国の未来は、お前たちにかかっておる」
国王は、ルナに、心からの信頼を寄せているようだった。
その夜、カインが、村の入り口に、一人の男を連れてきた。
「ルナ様!この男は、王都から来た、銀翼団の団員です!」
男は、ルナに、深々と頭を下げた。
「ルナ様!王都では、アルフレッド卿が、陛下が死んだと触れ回り、王国の実権を握ろうとしております!そして、王国の民に、ルナ様たちが、疫病を広めている、と、触れ回っております!」
男の言葉に、ルナたちは、驚きを隠せない。
「疫病……!?そんなデマを……!」
ルナは、怒りに顔を歪ませた。
ゼウスの策は、着実に、王国の民に広まっていった。
王都の街角では、アルフレッドの私設軍隊が、ルナたちの村が、疫病の元凶であると、触れ回っていた。
「王都を襲った、恐ろしい疫病は、ルナ・カーヴィルという、魔物と通じる女が、広めている!」
「あの女を、一刻も早く、捕らえなければ、王国の民は、全員、死んでしまうぞ!」
民たちは、アルフレッドの言葉に、恐怖と憎悪を募らせていった。




