表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/50

第三十八話 「王都の策士」

 アルフレッドの大軍勢は、古代竜アウルムの圧倒的な力によって、完全に打ち破られた。敗走した兵士たちは、王都へ戻り、アルフレッドに、村の様子を報告した。


「アルフレッド様!村には、伝説の古代竜がおりました!我々の魔導兵器は、まるで歯が立ちません!」

 兵士たちの言葉に、アルフレッドは、怒りに顔を歪ませた。

「馬鹿な!この世に、伝説など、存在しない!あの竜は、ルナ・カーヴィルという女が操る、ただの魔物に過ぎん!」

 アルフレッドは、そう言って、敗走してきた兵士たちを、容赦なく処刑した。


 その様子を見ていた、一人の男が、アルフレッドに進み出た。

「アルフレッド様。……あの村を、力ずくで攻め落とすのは、不可能かと」

 男は、アルフレッドの軍師を務める、ゼウスだった。

「ゼウス!貴様も、あの村娘どもに、怯えているのか!」

 アルフレッドは、ゼウスに、怒りの声をぶつけた。

「いえ、アルフレッド様。……私は、戦略を立てているだけです。……あの村には、力で勝つことはできません。……ならば、別の方法で、あの村を、滅ぼすのです」

 ゼウスの言葉に、アルフレッドは、興味をそそられた。

「別の方法だと?……話してみよ」

 アルフレッドは、ゼウスに、そう促した。


 ゼウスは、アルフレッドに、一つの策を提案した。

「アルフレッド様。……ルナ・カーヴィルは、村人たちの信頼を、何よりも大切にしております。……ならば、村人たちの、心を、私たちに向けさせるのです」

「……どういうことだ?」

 アルフレッドは、ゼウスの言葉の意味が分からず、首を傾げた。

「王国の民に、ルナ・カーヴィルの村が、疫病を広めている、と触れ回るのです」

 ゼウスの言葉に、アルフレッドは、驚きを隠せない。

「……疫病だと?……そんなデマ、誰が信じるのだ?」

「アルフレッド様。……民は、恐怖に弱いものです。……疫病という、目に見えない脅威を、ルナ・カーヴィルの村に、結びつけるのです。……そうすれば、民は、ルナ・カーヴィルを、疫病を広める、悪の村として、憎むようになるでしょう」

 ゼウスは、そう言って、邪悪な笑みを浮かべた。

 アルフレッドは、ゼウスの言葉に、満足そうに頷いた。

「ははははは!……ゼウスよ。貴様は、本当に、恐ろしい男だな。……よし、その策、実行に移せ!」

 アルフレッドは、ゼウスに、そう命じた。


 その頃、ルナたちの村では、アルフレッドの軍勢を撃退したことで、村人たちが、歓喜に沸いていた。

「やった!ルナ様たちが、村を守ってくれた!」

「これで、もう、アルフレッドの軍隊も、怖くないぞ!」

 村人たちは、口々に、ルナたちを称えた。


 ルナは、国王に、今後の作戦について話した。

「陛下。アルフレッドは、このままでは、諦めないでしょう。……今度は、どんな手で、私たちを攻撃してくるか、わかりません。……私たちは、アルフレッドの動きを、警戒しなければなりません」

 国王は、ルナの言葉に、深く頷いた。

「……ルナ・カーヴィル。……お前は、本当に、聡明な娘だ。……この国の未来は、お前たちにかかっておる」

 国王は、ルナに、心からの信頼を寄せているようだった。


 その夜、カインが、村の入り口に、一人の男を連れてきた。

「ルナ様!この男は、王都から来た、銀翼団の団員です!」

 男は、ルナに、深々と頭を下げた。

「ルナ様!王都では、アルフレッド卿が、陛下が死んだと触れ回り、王国の実権を握ろうとしております!そして、王国の民に、ルナ様たちが、疫病を広めている、と、触れ回っております!」

 男の言葉に、ルナたちは、驚きを隠せない。

「疫病……!?そんなデマを……!」

 ルナは、怒りに顔を歪ませた。


 ゼウスの策は、着実に、王国の民に広まっていった。

 王都の街角では、アルフレッドの私設軍隊が、ルナたちの村が、疫病の元凶であると、触れ回っていた。

「王都を襲った、恐ろしい疫病は、ルナ・カーヴィルという、魔物と通じる女が、広めている!」

「あの女を、一刻も早く、捕らえなければ、王国の民は、全員、死んでしまうぞ!」

 民たちは、アルフレッドの言葉に、恐怖と憎悪を募らせていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ