第三十五話 「王国の秘められた真実」
国王、第一王女エリザベス、そしてレオニードの乗った馬車は、夜の森をひたすら南下していた。馬車の中は、わずかなランプの灯りに照らされ、静かな時間が流れている。レオニードは御者の席で手綱を握り、国王とエリザベスは、向かい合って座っていた。
「父上……本当に、ご無事でよかった」
エリザベスは、再び涙をこぼしながら、国王の手を握った。
「ああ、エリザベス。お前もだ。まさか、王都で、お前と再会できるとは……」
国王は、娘の無事に、安堵の息をついた。
国王は、エリザベスに、レオニードのことを話した。
「エリザベス。このレオニードという男に、私は命を救われた。彼がいなければ、私は今頃、王宮の炎の中にいたであろう」
エリザベスは、レオニードに深々と頭を下げた。
「レオニード様。父上を、本当にありがとうございます」
レオニードは、恐縮し、頭を下げた。
国王は、レオニードに尋ねた。
「レオニード。お前は、アルフレッドが、なぜこのような悪行を働くようになったか、知っているのか?」
レオニードは、静かに言った。
「……陛下。私が、銀翼団にいた頃、アルフレッド卿が、陛下に内緒で、私設軍隊を組織しているという噂を耳にしました。その時、団長は、アルフレッド卿が、何かを企んでいる、と、私に、アルフレッド卿の動向を探るように、命じました」
国王は、レオニードの言葉に、眉をひそめた。
「……知らなかった。……しかし、アルフレッドが、そこまでして、私を……」
国王は、深い悲しみに包まれた。
その時、エリザベスが、静かに口を開いた。
「……父上。……私は、アルフレッド卿が、母上と兄上を、殺したのだと、疑っているのです」
エリザベスの言葉に、国王は、驚きを隠せない。
「エリザベス!何を言っているのだ!」
国王は、エリザベスを強く叱責した。
「父上!覚えていらっしゃいますか!母上と兄上が、病で倒れた時、アルフレッド卿は、医者を呼ぼうとする私たちを、何度も、止めようとしたのです!」
エリザベスの言葉に、国王は、ハッとした。
国王は、王妃と王太子のことを思い出した。
数年前、王妃と王太子は、突然の病に倒れ、帰らぬ人となった。その時、アルフレッドは、国王に、外国の医師を呼ぶように進言し、王妃と王太子の治療に当たらせた。しかし、その医師は、王妃と王太子の病を治すことができず、二人は、帰らぬ人となった。
当時、国王は、アルフレッドを深く信頼しており、彼が王妃と王太子の治療のために、最善を尽くしてくれた、と信じていた。
しかし、今、エリザベスの言葉を聞き、国王は、アルフレッドの言葉を思い出した。
「……アルフレッドは、私に、こう言った。……『陛下。王妃様と王太子様は、もう、助かりません。……外国の医師に、見せるのは、王家の恥となります』と……」
国王は、その時のアルフレッドの言葉を思い出し、愕然とした。
「……まさか……! アルフレッドめ! 私と、王国の実権を、手に入れるために……!」
国王は、アルフレッドの恐ろしい陰謀に、震え上がった。
エリザベスは、国王に寄り添い、言った。
「父上。……私は、絶対に、アルフレッド卿の悪事を、暴いてみせます。……そして、父上を、王国の正当な王として、民の前にお戻しします」
国王は、エリザベスの言葉に、深く頷いた。
数日後、国王とエリザベス、そしてレオニードの乗った馬車は、ルナたちの村に到着した。
村の入り口では、ルナとフィオナ、ミリア、そしてカインが、彼らを待っていた。
「……ようこそ、我が村へ。陛下」
ルナが、国王に頭を下げた。
国王は、ルナの聡明さと、凛とした雰囲気に、感銘を受けた。
ルナは、国王に、村の結界と、アウルムの存在を話した。
「陛下。この村は、古代竜アウルム様が、聖域として、お守りくださっております。どうぞ、ご安心ください」
国王は、ルナの言葉に、安堵のため息をついた。
「……ありがとう。ルナ・カーヴィル。……お前は、この国の希望だ」
国王は、ルナに、心からの感謝を述べた。
国王は、ルナたちに、王都で起こったこと、そして、アルフレッドが、王妃と王太子を、殺した可能性があることを話した。
ルナたちは、国王の言葉に、驚きを隠せない。
「……アルフレッドは、そこまで……!」
ルナが、震える声で呟いた。
フィオナとミリアも、怒りに顔を歪ませた。
国王は、ルナたちに、言った。
「ルナ・カーヴィル。私は、今、この国を、アルフレッドから、救いたい。……君たちの村が、この国を救うための、最後の希望だ」
国王の言葉に、ルナは、力強く頷いた。
「陛下。……お任せください。……私たちは、必ず、アルフレッドの悪事を、暴いてみせます。……そして、陛下を、王国の正当な王として、民の前にお戻しします!」
ルナの言葉に、国王は、安堵の表情を浮かべた。
ルナたちの村は、王国を救うための、最後の砦となった。




