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第三十四話 「王国の異変」

 王都は、不穏な静寂に包まれていた。王宮の焼け跡から立ち上る煙が、空を暗く染め上げ、人々は恐怖に怯え、息をひそめていた。アルフレッドは、国王の死を偽り、摂政として王都の治安を名目に、私設軍隊を王都中に展開させていた。


「国王陛下は、魔物と通じる者に暗殺された。我々が、王国の秩序を回復せねばならぬ!」

 アルフレッドの言葉に、貴族たちは、表面上は恭順の意を示したが、その内心は動揺していた。アルフレッドの私設軍隊は、王都の各地で、市民の不審尋問を行い、反抗的な者は容赦なく捕らえ、投獄していった。


 一方、王都を離れた国王とレオニードは、森の中を馬車で進んでいた。

「アルフレッドめ……。私が死んだと偽り、好き勝手しているに違いない」

 国王は、悔しそうに歯噛みした。

「陛下。今は、ご自身の身の安全を優先してください。ルナ様たちの村へ行けば、安全です」

 レオニードは、国王を落ち着かせようとした。

「……レオニード。お前には、感謝してもしきれぬ。あの時、お前がいなければ、私は……」

「いえ、陛下。これは、私の使命です」

 レオニードは、国王に頭を下げた。


 その時、馬車の前方に、一人の少女が立っているのが見えた。

「……あれは、まさか……」

 レオニードが、馬車を止める。

 少女は、国王の娘である、第一王女のエリザベスだった。

「父上!」

 エリザベスは、国王に駆け寄り、その姿を見て、安堵の涙を流した。

「エリザベス!なぜ、お前がここに……!」

「父上をお救いするために、王都を抜け出してきました!アルフレッド卿が、父上を裏切ったのだと、私は知っていたのです!」

 エリザベスは、国王に抱きつき、泣きじゃくった。


 国王は、娘の無事な姿を見て、安堵の息をついた。

「……よくぞ、無事でいてくれた。……お前は、この王国にとって、希望だ」

 国王は、エリザベスを抱きしめ、レオニードに、エリザベスのことを話した。

「レオニード。この娘は、幼い頃から、聡明で、民のことを第一に考えていた。……いずれ、この国の王となるべき娘だ」

 国王は、エリザベスに、ルナたちの村へ向かうことを話した。

「エリザベス。私は、これから、ルナ・カーヴィルという、一人の村娘に、助けを求める。……彼女は、この国の希望となるだろう」

 エリザベスは、国王の言葉に、力強く頷いた。


 ルナたちの村では、村の防衛が着々と進められていた。

「ルナ姉!この結界、本当にすごいね!触っても何も感じないのに、魔物が近づくと、弾き返されるんだ!」

 ミリアが、魔法の結界に触れながら、興奮した様子で言う。

「ええ。アウルムの力が、村の土地と一体化しているから、目には見えないけれど、強固な壁として、村を守ってくれているわ」

 ルナは、ミリアに微笑んだ。


 フィオナは、大剣の手入れをしながら、真剣な表情で言った。

「……でも、アルフレッドが、この結界を破る方法を、見つけ出すかもしれない。……私たちは、いつ、アルフレッドが攻めてきてもいいように、準備をしなければ」

 ルナは、フィオナの言葉に、頷いた。

「ええ。カインと、アウルムの力を借りて、村の周りに、罠を仕掛けましょう。……アルフレッドの私設軍隊が、この村に近づくことさえ、できないように」

 ルナは、そう言って、村人たちに、指示を出した。


 カインは、ルナたちの指示に従い、村の周囲に、魔法の罠を仕掛けていた。

「……ルナ様は、本当に、すごいな。……ここまで、的確に指示を出せるなんて」

 カインは、ルナの聡明さに、改めて感心した。

 ルナは、カインに、感謝の言葉を述べた。

「カインさん。本当に、ありがとう。……あなたがいなければ、私たちは、ここまで来ることができなかった」

 ルナの言葉に、カインは、照れくさそうに笑った。


 その夜、ルナは、アウルムの住処へと向かい、アウルムに、王都の火事のこと、そして、アルフレッドの陰謀を話した。

「……アウルム様。……アルフレッドは、この村を、奪おうとしています。……どうか、私たちの村を、お守りください!」

 ルナは、アウルムに頭を下げた。

 アウルムは、ルナの言葉に、静かに頷いた。

「……よかろう。……愚かな人間どもが、愚かな争いを続けるのならば、私が、この地を、聖域として、守り抜こう」

 アウルムの言葉に、ルナは、安堵のため息をついた。

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