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第三十話 「王国の判断」

 王都の玉座の間は、張り詰めた空気に満ちていた。国王を筆頭に、王国の主要な貴族たちが集まり、アルフレッドが差し出した水晶玉の映像に、言葉を失っていた。水晶玉の中には、青銅色の巨大な竜が、村の入り口にそびえ立つ姿が鮮明に映し出されている。


「……信じられん。伝説の古代竜が、実在していたとは……」

 国王は、震える声で呟いた。

 アルフレッドは、その様子を見て、満足そうに口角を上げた。

「陛下!ご覧の通りでございます!ルナ・カーヴィルは、このような危険な魔物と通じているのです!平民の分際で、魔物の力を借りて領地を拡大するとは、言語道断!王国の秩序を乱す、反逆行為に他なりません!」

 アルフレッドは、ここぞとばかりにルナたちを糾弾した。


 アルフレッドに同調する貴族たちが、次々と声を上げた。

「そうだ!このような者たちを放置しておけば、いずれ王国を乗っ取ろうとするに違いありません!」

「ただちに、ルナ・カーヴィルを捕らえ、厳罰に処すべきです!」

 貴族たちの怒号が、玉座の間に響き渡る。


 その時、一人の男が、国王に進み出た。

「お待ちください、陛下!」

 銀翼団の団長だった。

「団長、これは、銀翼団が口を挟むべき問題ではないぞ」

 アルフレッドが、団長を制止しようとする。

「いえ、アルフレッド卿。これは、銀翼団の誉れに関わる問題です!我が団は、陛下から、王国の安寧を任されております。ルナ様たちが、魔物と通じている、などという根も葉もない噂は、看過できません!」

 団長は、アルフレッドの言葉を一蹴した。


 団長は、国王に深々と頭を下げ、言った。

「陛下。ルナ様たちは、魔物と通じているわけではありません。彼らが、ただ故郷を豊かにしたいと願った結果、古代竜アウルム様が、その心に打たれ、彼らを助けたのです。アウルム様は、悪しき心を持つ者には決して力を貸しません。それは、私自身が、幾度もその目で見てきた真実です!」

 団長は、アウルムが、かつて王都を襲った魔物を退治したことや、人々に安寧をもたらしてきたことを、国王に熱弁した。


 国王は、団長の言葉に、深く考え込んだ。

 そして、しばらくの沈黙の後、国王は、口を開いた。

「……わかった。アルフレッド卿。ルナ・カーヴィルの件は、追って沙汰する。」

 国王の言葉に、アルフレッドは、不満そうな表情を浮かべた。

「陛下!しかし……!」

「静まれ、アルフレッド卿!これは、国王としての、私の命令だ!」

 国王の言葉に、アルフレッドは、黙って玉座の間を後にした。


 玉座の間には、団長と、国王、そしてごく一部の親衛隊だけが残された。

 国王は、団長に、真実を尋ねた。

「団長。……ルナ・カーヴィルの村に、本当に、伝説の古代竜が、いるのか?」

 団長は、国王に、王都を襲った魔物が、実はアルフレッドの私設軍隊であったこと、そして、その魔物が、アウルムによって撃退されたことを話した。

「……アルフレッド卿は、自らの権益のために、ルナ様たちを陥れようとしております。……私たちは、アルフレッド卿の悪事を、国王陛下に、証明しなければなりません!」

 団長は、国王に、そう告げた。

「わかった。……君に、その任務を任せる。……だが、くれぐれも、アルフレッド卿に、気づかれることのないように」

 国王は、団長に、密命を下した。


 その夜。

 アルフレッドは、自らの邸宅で、新たな陰謀を企てていた。

「……国王は、ルナ・カーヴィルのことを、まだ信用しているようだな。……ならば、国王の目を覚まさせてやる」

 アルフレッドは、そう言って、一人の男に命じた。

「……お前たち、国王の住む城に火を放て。そして、ルナ・カーヴィルの仕業だと、触れ回れ」

 男は、アルフレッドの言葉に、驚きの表情を浮かべた。

「しかし、アルフレッド様!それでは、国王陛下に、ご迷惑が……」

「黙れ!このままでは、王国の秩序が乱れる!国王を救うためだと思えば、安いものだろう!」

 アルフレッドは、そう言って、男を脅した。


 アルフレッドの悪行は、さらにエスカレートしていく。

 彼は、国王を操り、王国を巻き込む、新たな陰謀を企てる。

 それは、ルナたちの村だけでなく、王国全体を滅亡に導く、恐ろしい計画だった。

 ルナたちの物語は、ここから、さらに複雑な展開を迎えることになる。

 彼女たちは、自分たちの故郷と、王国の未来を、守ることができるのだろうか。

 そして、レオニードと団長は、アルフレッドの悪事を、暴くことができるのだろうか。

 三姉妹の冒険は、まだ、終わらない。

 彼女たちの物語は、伝説となっていく。


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