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第二十八話 「追われる身」

 アルフレッドの書斎で、カインがルナたちに、彼の本当の狙いが村であることを告げた、

「まさか、貴様……ルナたちと通じていたのか!?裏切り者め!」

 カインは、アルフレッドの追及に、冷たい視線を送る。

「アルフレッド。俺の名はカイン。王都の冒険者だ。そして、俺は銀翼団の団長の命で、お前の裏工作を探っていた。お前は、この娘たちを利用しようとして、自らの正体を明かしてしまったのだ」

 カインはルナに微笑みかけ、静かに言った。

「ルナ、話は後だ。ここは、俺が食い止める!その間に、王都から脱出するんだ!」


 カインの言葉に、ルナは頷き、レオニードと共に窓から飛び降りた。警備兵たちが二人に迫ろうとする。

「ルナ様!ここは、私が食い止めます!その間に、逃げてください!」

 レオニードは剣を構え、ルナたちを庇うように前に出た。

「レオニード!あなたも!」

「私はもう二度と、過ちを繰り返さない!」

 レオニードの言葉に、ルナは彼の覚悟を感じ、涙をこらえて走り出した。


 ルナとレオニードは、警備兵たちの追跡をかわしながら、王都の裏路地を駆け抜けた。その間にも、カインはアルフレッドと警備兵たちを相手に奮闘していた。

「くそっ!数が多すぎる……!」

 カインが膝をついた、その瞬間、アルフレッドが警備兵たちに命じた。

「カインは放置しておけ!あの娘たちを捕らえろ!王宮に報告すれば、我が屋敷に無断で侵入した罪で、あの娘たちを捕らえることができる!」

 アルフレッドは、ルナたちが彼の罠を見抜いたことなど、意に介していなかった。彼はルナたちが自分の屋敷に侵入した、という事実を逆手に取り、ルナたちを犯罪者として捕らえようとしていたのだ。


 ルナとレオニードは、王都の城門へと向かっていた。しかし、城門の警備は厳重で、ここから脱出することは不可能に思えた。

 その時、城門の近くで、見覚えのある一人の男が、馬車の準備をしていた。

「ルナ様!こちらです!」

 その男は、銀翼団の団長だった。

 団長は、ルナたちに、素早く馬車に乗り込むように促した。

「団長様!なぜここに……!」

 ルナが団長に尋ねる。

「アルフレッドの悪事は、私も知っている。だが、今は、君たちが追われる身だ。すぐに、王都を離れるんだ!」

 団長の言葉に、ルナは頷き、馬車に乗り込んだ。

「私はここに残り、団長と共にアルフレッドを追い詰めるための証拠を探します。ルナ様は急いで村に向かってください」

 レオニードの言葉に何かを言いかけたルナだったが、頷いて馬車を走らせた。

 ルナたちは、王都での地位も、名誉も、すべて失い、王国から追われる身となってしまったのだ。


 ルナが王都を脱出した後、レオニードと団長は、銀翼団の隠れ家に身を隠した。カインはアルフレッドの警備兵たちをなんとか振り切り、隠れ家にたどり着いた。

「カインさん……大丈夫ですか?」

 レオニードがカインに尋ねる。

「ああ。レオニード、君も無事でよかった」

 カインは、レオニードに微笑んだ。

 団長が口を開く。

「団員が王都で聞いた話だが……アルフレッドが国王に、君たちが彼の邸宅に侵入した、と訴え出た。そして、国王は、君たちを捕らえるように、命令を出したらしい」

 団長の言葉に、カインとレオニードは、絶句した。

 アルフレッドは、ルナたちが彼の罠を見抜くことも、王都へ報告に行くことも、すべてお見通しだったのだ。そして、ルナたちが彼を罠にかける前に、先手を打ってきた。


「団長様!確かに私たちはアルフレッドの屋敷に侵入しましたが、それは罪を暴くためで……」

 レオニードが団長に詰め寄る。

「わかっている。だが、今はアルフレッドが優位に立っている。国王様も、貴族たちの圧力に抗えない状況だ」

 団長は、悔しそうに拳を握りしめた。

「カイン。君はルナたちの村へ向かえ。レオニード。君は、私と王都に残り、アルフレッドの悪事を暴くための、新たな証拠を探すんだ」

 団長の言葉に、カインとレオニードは頷いた。

 カインは、ルナたちの村へと急ぎ足で向かった。ルナたちの故郷は、すでに、アルフレッドの私設軍隊によって、襲撃されているかもしれない。カインは、ルナたちを、そして、彼女たちの大切な故郷を、守るために、走り続けた。

 一方、レオニードは団長と共に、アルフレッドの悪事を暴くための、新たな証拠を探し始めた。それは、彼らの名誉と、ルナたちの村の未来をかけた、命がけの戦いだった。


 ルナの乗った馬車は、王都を離れ、夜の街道を走り続けていた。

「……どうして、こうなってしまったんだろう」

 ルナが、震える声で呟く。

「すべて、私のせいよ。……私が、アルフレッドの罠を見抜けなかったから……」

「私たちが、平民だから……?」

 ルナは、窓の外の暗闇を見つめた。彼女たちの故郷は、今、どうなっているのだろうか。村人たちは、無事なのだろうか。ルナは、不安と、恐怖に襲われた。

 しかし、ルナは、拳を握りしめた。ここで、絶望している場合ではない。彼女たちには、守るべき故郷と、大切な村人たちがいる。

「……私たちには、まだ、やることがたくさんあるわ。……村に戻って、アルフレッドの悪事を、暴くための、新たな証拠を探さなければ!……そして、村を誰にも奪わせない、王国で一番の楽園にするわ!」

 

 三姉妹の新たな物語は、ここから、さらに複雑な展開を迎えることになる。彼女たちは、王国全体を敵に回し、自分たちの正義を貫くための、壮絶な戦いに、挑んでいく。

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